第4話 キース・シャーウッド公爵との婚礼
文字数 1,727文字
ずっと戦争をしている国なので、仕方が無いのかもしれないけど。
神官を王宮に招いて、形だけの誓いをし、王族だけでの簡単な披露宴をしただけで婚礼の儀は終わってしまった。所要時間、2時間弱。
これ、ガチの16歳の女の子だったら、泣いてしまうわ。
夫になるキースはこちらをチラッとも見ないし。
私はその日の内に、馬車で移動して公爵邸に連れて行かれた。
使用人たちが、総出でお出迎えをしている。
キースは馬車を降りてすぐに、執事に何か指示を出しているようだった。
私が、従僕に手伝ってもらい馬車を降りてしまうのを待たず、屋敷の奥に入って行こうとしている。
「あの。旦那様」
私は、キースに追いつこうと少し走って行く。
だってこれではあんまりだ。
いくら政略結婚だと言っても……。
ようやく追い付いて、再度声を掛ける。
「旦那様。私……」
そう言った瞬間、喉元に剣先を突き付けられた。
「無駄口を叩くな」
殺気の籠った目。
なん……で?
動かなくなった私を見てキースは、何事も無かったかのように、剣を鞘に収め、屋敷の中に奥に消えて行った。
キースは悠人では無い。
私は衝撃を受けたように、しばらくその場から動けなくなっていた。
執事によって、案内された部屋はシンプルだけど、日当たりの良い場所にあった。
続きの間や、寝室、新品だろう家具。
上位貴族の奥方としての部屋としては、一般的だと思う。
乙女ゲームの知識だけどね。
私は倒れこむように、ソファーに座った。
扉には護衛兵が立っているけど、部屋付きの侍女たちは「湯あみの用意をしてきます」と言って、退出してしまった。
違った……。悠人じゃ無かった。
だって、悠人は優しい。私の事に気付いていなくても、女性……しかも、16歳の子どもに、あんな冷たい態度はとらない。
キースが悠人だったらと思って頑張ってきたのに。
悠人に会えるまではって……。
ダメだ。涙が出そうになってる。
もうすぐ、侍女たちも戻って来るのに。
婚礼が済んで、これからの生活をするお屋敷に連れて行かれ湯あみをさせられる。
その意味が分からない程、私は子どもじゃ無い。
自分がいた世界では、私はとうに成人していて、悠人と言う半同棲している恋人もいた。
侍女たちによって、寝間着に着替えさせられる。
なんだかレースが幾重にも重なった……。とても、このままでは眠れそうにないようなものだ。
寝室で、私はキースを待っていた。
なんだか、本当に泣いてしまいたい。
泣いてしまったら、殺されてしまうだろうか。
それでも良いような気さえしている。だって……。
だって、キースが悠人だと信じていたから『この世界になぜ来たのか』とか、『元の世界に戻れるのだろうか』とか、考えずにいられたのに。
侍女が、キースが来たことを告げ。
そのまま部屋を出て行ってしまった。
キースも、サラッとした寝間着の上にガウンを羽織ったような感じだ。
機嫌悪そう……。
「幾久しく、お可愛がり下さいませ」
私は、こういう時の定番のセリフだと教えて貰ったセリフを言う。
お辞儀をした時に、床にぽとぽとと涙が落ちた。
キースが近寄ってくる気配に、体が震える。
「ああ。そういえば、子どもだったな」
そう言って、軽く抱きしめられた。すぐに体が離され抱き上げられたけど。
「だが、あきらめろ。子を生すのは王族や貴族の仕事のうちだ」
キースから、お互いの義務だと言われる。優しさの欠片も無い。
さきほど、軽くでも抱きしめてくれただけ、マシだという事なのだろうか。
私は、小さな声でボソッと呟いた。
「ごめん。悠人」
聞こえていないと思ったのに、私のつぶやきを拾ってしまったのだろうか。キースが、ピクッと反応した。
そのまま、ベッドに放り出され、ランプの灯りも消される。
目をギュッとつぶっていても、キースが覆いかぶさってきたのが分かった。
抵抗するわけにはいかないけど、私は思わず身を固くしてしまった。
「力を抜いていろ。大丈夫だから」
耳元でキースの声が聞こえた。
そして優しく。
本当に、意外な事に優しく私の体に触れてきた。
ゆっくり、私の気持ちがほぐれるように、しばらくは優しく撫でていてくれていた。
神官を王宮に招いて、形だけの誓いをし、王族だけでの簡単な披露宴をしただけで婚礼の儀は終わってしまった。所要時間、2時間弱。
これ、ガチの16歳の女の子だったら、泣いてしまうわ。
夫になるキースはこちらをチラッとも見ないし。
私はその日の内に、馬車で移動して公爵邸に連れて行かれた。
使用人たちが、総出でお出迎えをしている。
キースは馬車を降りてすぐに、執事に何か指示を出しているようだった。
私が、従僕に手伝ってもらい馬車を降りてしまうのを待たず、屋敷の奥に入って行こうとしている。
「あの。旦那様」
私は、キースに追いつこうと少し走って行く。
だってこれではあんまりだ。
いくら政略結婚だと言っても……。
ようやく追い付いて、再度声を掛ける。
「旦那様。私……」
そう言った瞬間、喉元に剣先を突き付けられた。
「無駄口を叩くな」
殺気の籠った目。
なん……で?
動かなくなった私を見てキースは、何事も無かったかのように、剣を鞘に収め、屋敷の中に奥に消えて行った。
キースは悠人では無い。
私は衝撃を受けたように、しばらくその場から動けなくなっていた。
執事によって、案内された部屋はシンプルだけど、日当たりの良い場所にあった。
続きの間や、寝室、新品だろう家具。
上位貴族の奥方としての部屋としては、一般的だと思う。
乙女ゲームの知識だけどね。
私は倒れこむように、ソファーに座った。
扉には護衛兵が立っているけど、部屋付きの侍女たちは「湯あみの用意をしてきます」と言って、退出してしまった。
違った……。悠人じゃ無かった。
だって、悠人は優しい。私の事に気付いていなくても、女性……しかも、16歳の子どもに、あんな冷たい態度はとらない。
キースが悠人だったらと思って頑張ってきたのに。
悠人に会えるまではって……。
ダメだ。涙が出そうになってる。
もうすぐ、侍女たちも戻って来るのに。
婚礼が済んで、これからの生活をするお屋敷に連れて行かれ湯あみをさせられる。
その意味が分からない程、私は子どもじゃ無い。
自分がいた世界では、私はとうに成人していて、悠人と言う半同棲している恋人もいた。
侍女たちによって、寝間着に着替えさせられる。
なんだかレースが幾重にも重なった……。とても、このままでは眠れそうにないようなものだ。
寝室で、私はキースを待っていた。
なんだか、本当に泣いてしまいたい。
泣いてしまったら、殺されてしまうだろうか。
それでも良いような気さえしている。だって……。
だって、キースが悠人だと信じていたから『この世界になぜ来たのか』とか、『元の世界に戻れるのだろうか』とか、考えずにいられたのに。
侍女が、キースが来たことを告げ。
そのまま部屋を出て行ってしまった。
キースも、サラッとした寝間着の上にガウンを羽織ったような感じだ。
機嫌悪そう……。
「幾久しく、お可愛がり下さいませ」
私は、こういう時の定番のセリフだと教えて貰ったセリフを言う。
お辞儀をした時に、床にぽとぽとと涙が落ちた。
キースが近寄ってくる気配に、体が震える。
「ああ。そういえば、子どもだったな」
そう言って、軽く抱きしめられた。すぐに体が離され抱き上げられたけど。
「だが、あきらめろ。子を生すのは王族や貴族の仕事のうちだ」
キースから、お互いの義務だと言われる。優しさの欠片も無い。
さきほど、軽くでも抱きしめてくれただけ、マシだという事なのだろうか。
私は、小さな声でボソッと呟いた。
「ごめん。悠人」
聞こえていないと思ったのに、私のつぶやきを拾ってしまったのだろうか。キースが、ピクッと反応した。
そのまま、ベッドに放り出され、ランプの灯りも消される。
目をギュッとつぶっていても、キースが覆いかぶさってきたのが分かった。
抵抗するわけにはいかないけど、私は思わず身を固くしてしまった。
「力を抜いていろ。大丈夫だから」
耳元でキースの声が聞こえた。
そして優しく。
本当に、意外な事に優しく私の体に触れてきた。
ゆっくり、私の気持ちがほぐれるように、しばらくは優しく撫でていてくれていた。