第30話 リネハン伯爵邸の夜会 王太子殿下とセドリック
文字数 1,092文字
キーンと、剣をはじく音が私の頭のすぐ上でした。
「王族に剣を向けるとは、何事か」
「申し訳ございません。罰はいかようにも」
怒鳴るジークフリートとは対照的に、冷静な声で言うのが聞こえる。
顔を上げると目の前に、片膝突いて剣を下に置き、礼を尽くす騎士団の制服を着たセドリックがいた。
「ただ、この者はご容赦下さい。私の命令に従っただけの小娘にございます」
「セドリック」
「王太子殿下が、エイリーン様に近付かないように命じたのは知っております。ですが、私の命令を優先させました」
な……に……? なにを言ってるの?
「貴様の所為か」
私の所為だよ…私が頼んだから動いてくれて……。
「違っ……もご、うぐ……」
ジークフリートに反論しようとしたら、後ろから抱きしめられ口をふさがれた。
「リナ……黙って」
耳元で言われる。兄の声だ。
どうして……? セドリックもエイリーンに近付くな、って言った。
なのに、言うこと聞かなかったのは私で……。
ジタバタ暴れても、兄の力の方が強い。
「覚悟は出来てるんだろうな」
兄が私を抱き込んだまま、背に庇う。
さっきから口をふさいだ手の指を噛んで、口の中に血の味がしてるのに全く緩まない。
このままじゃ、セドリックが。
私が願い出た3つの条件 も現場処刑じゃ意味が無い。
「一時 の感情で優秀な臣下を失うおつもりですか、殿下」
エイリーンの凜とした声が響いた。
斬りかかろうとしたジークフリートの動きが止まる。
「どうしても、誰かをお斬りになりたいのなら、わたくしをお斬り下さいませ。わたくしは、わたくしの意思でこの度の騒動を引き起こしました。リナ様はわたくし思惑にのってくれたのです。この騒動の責任者はわたくしです」
ジークフリートは呆然としている。エイリーンはジークフリートの元に近付いた。
「ご覧下さいませ。わたくしに傷一つ付いてませんでしょ? リナ様がわたくしを助けながらここまで連れてきてくれたのです」
ジークフリートが私たちの方を向く。
兄が私の拘束を緩めてくれていたので、擦り傷だらけの私が目に入ったようだ。
ようやく剣を納めてくれた。
「追って沙汰する」
とだけ言って、ジークフリートは近衛騎士団の方へ行ってしまった。
エイリーン様もそれに従うように歩き出す。
全身から力が抜けた。
「大丈夫か? すまなかったな遅くなって」
セドリックが気遣ってくれる。
その先は、何と受け答えしたのか覚えてない。
ただ、私は腰を抜かしたようにへたり込んでいた。
「王族に剣を向けるとは、何事か」
「申し訳ございません。罰はいかようにも」
怒鳴るジークフリートとは対照的に、冷静な声で言うのが聞こえる。
顔を上げると目の前に、片膝突いて剣を下に置き、礼を尽くす騎士団の制服を着たセドリックがいた。
「ただ、この者はご容赦下さい。私の命令に従っただけの小娘にございます」
「セドリック」
「王太子殿下が、エイリーン様に近付かないように命じたのは知っております。ですが、私の命令を優先させました」
な……に……? なにを言ってるの?
「貴様の所為か」
私の所為だよ…私が頼んだから動いてくれて……。
「違っ……もご、うぐ……」
ジークフリートに反論しようとしたら、後ろから抱きしめられ口をふさがれた。
「リナ……黙って」
耳元で言われる。兄の声だ。
どうして……? セドリックもエイリーンに近付くな、って言った。
なのに、言うこと聞かなかったのは私で……。
ジタバタ暴れても、兄の力の方が強い。
「覚悟は出来てるんだろうな」
兄が私を抱き込んだまま、背に庇う。
さっきから口をふさいだ手の指を噛んで、口の中に血の味がしてるのに全く緩まない。
このままじゃ、セドリックが。
私が願い出た3つの
「
エイリーンの凜とした声が響いた。
斬りかかろうとしたジークフリートの動きが止まる。
「どうしても、誰かをお斬りになりたいのなら、わたくしをお斬り下さいませ。わたくしは、わたくしの意思でこの度の騒動を引き起こしました。リナ様はわたくし思惑にのってくれたのです。この騒動の責任者はわたくしです」
ジークフリートは呆然としている。エイリーンはジークフリートの元に近付いた。
「ご覧下さいませ。わたくしに傷一つ付いてませんでしょ? リナ様がわたくしを助けながらここまで連れてきてくれたのです」
ジークフリートが私たちの方を向く。
兄が私の拘束を緩めてくれていたので、擦り傷だらけの私が目に入ったようだ。
ようやく剣を納めてくれた。
「追って沙汰する」
とだけ言って、ジークフリートは近衛騎士団の方へ行ってしまった。
エイリーン様もそれに従うように歩き出す。
全身から力が抜けた。
「大丈夫か? すまなかったな遅くなって」
セドリックが気遣ってくれる。
その先は、何と受け答えしたのか覚えてない。
ただ、私は腰を抜かしたようにへたり込んでいた。