第58話 ジークフリートの執務室からの帰り

文字数 1,143文字

 セドリックの謹慎問題が取りあえず解決して、クランベリー公は近衛騎士団の仕事に戻って行った。宰相も自分の執務室に戻る。
 ジークフリートは、公務を中断されてた分を取り戻すために、今日は王宮に残って仕事をするらしい。

 結局、学園に戻るのはセドリックと私だけという事になった。
 元々、馬車乗り場への案内を頼まれていたクリフォードと3人で連れだって歩いていた。
 セドリックは、いらないって言ったんだけどね。

「リナ様は、クランベリー公が怖くないのですか?」
 クリフォードが唐突に訊いてきた。
 うん、情報無さ過ぎてわかんない。
「怖い人なんですか?」
 私はセドリックに訊いた。

「あ~、どうだろう。やたら怖がられてはいるな。権力あるし、怒らせたら近衛騎士団どころか騎士団全体敵に回すことになるし」
「ふ~ん。そうなんですね。怖いかどうかよく分からないです」
 それって、味方に付けたら騎士団全て手に入るって事じゃない。でも、さすがに交渉材料持ってないや。

「そういえば、さっきクリフォード様が言ってた、クランベリー公に対して、ジークフリート様がいずれ向き合わねばならないことって、何ですか?」
「あんた、リナちゃんの前でそんなこと言ったのかよ」
 セドリックがちょっと怒ってる。
「私は宰相と話していたのですが……。以前、王太子殿下の所為でセドリックと騎士団が処刑されかけたと言う事件(※)があって。それ以降クランベリー公から敵視されているのですよ。それをそのままには、できないでしょう?」
 多分、内容を思いっきり端折(はしょ)って教えてくれた。
 何やらかした、ジークフリートよ。

「だから、言うなって言ってるだろ」
「私が言わなくても、調べるまでも無く誰かからか聞いてしまいますよ。あの調子では、本人に聞いても言うでしょうしね」
「ったく。リナちゃん。何とかしてやろうとか思うなよ」
「え? 思いませんよ。これ、他人が手伝ったらダメなことじゃないですか」
 余計に相手を怒らせちゃうよ。
「リナちゃんでも、そう思うか……」
「でもって、何ですか。でもって。だいたい、ジークフリート様も私に甘やかされたら困るでしょう」
「殿下の評判が地に落ちますね。それで、私は宰相様から睨まれたのですか」
 なるほど……と、クリフォードが言う。

 いや、私の認識がカオスになっていってるんですが……。
 さっき、宰相に言いに行ったのが、助けに入った的に見えたのか?
 こっちのツケ、ジークフリートにまわしちゃいけないって思っただけなのだけど……。
 まずいよなぁ。こっちはこっちで、クランベリー公に協力を取り付けないといけないのに。




 ※番外編 エイリーン誘拐事件 参照
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