第15話 国王陛下の執務室 リナの陳情
文字数 1,960文字
国王陛下の執務室。
すでに人払いがなされ、椅子に座る国王陛下の横に立つジークフリート殿下。
私たちは、扉より少し入ったところで跪いて礼を執っていた。
私は、これからの事に必要な許可を取りに来ている。
夫であるセドリックを伴って来たのは、夫が謁見するのに妻を同伴させたという、使節団への目くらましだ。
「国王陛下にお願いがございます」
私は頭を下げたまま言う。
なんだか、警戒されている気配がするけど。
「申してみよ」
「グルタニカ王国の使節団の事ですが。もし、私に害を成す者が現れても、その者のみの罪とし。他の者たちに関しては、私の協力者として無罪とし、帰国させて頂けないでしょうか?」
私は、以前の国王からの依頼を受けた際に、3つの条件を出していた。
だけど、当然のことながら、任務完了と同時に破棄されている。
もし仮に、この条件が有効だったとしても外国の事情での適用は難しいだろうと思う。
「少し良いかな」
ジークフリート殿下が言う。
「知らないのかもしれないから言うけど。他国の使節団が、訪問国の重要な人物を襲った場合。慣例としては、実行犯は取り調べ後、処刑。他の者たちも、共犯として処刑されることが多いのだけど。我が国に限らず」
ジークフリート殿下は、私に配慮して多いと言ったけど。確定で処刑されるだろう。
「だからこその、お願いでございます」
処刑が確定されたら困るからの陳情なのだ。
「どういう事か、説明してもらえるかな? グルタニカ以前にそのリナの態度を」
国王陛下が言ってくる。
そうよね。私の首にはまだリーン・ポートが下がっている。
その気になれば、国王命令を私自身が発効できるのだから。
だけど、これは一方的な命令では無く、納得してもらわないといけないの。
「そうですね。私がこれからいう事を納得して頂かなければならないからです。特にジークフリート殿下には」
「私?」
いきなり話を振られてジークフリート殿下は驚いているけど、私の状態によっては一番感情的に動くだろうこの方に、納得してもらわないと困る。
2年前、感情のまま私とセドリックを斬り殺そうとしたのを忘れてないからね。
「申してみよ」
もうため息交じりに言っている。なんだか国王陛下、うんざりしてませんか?
「今来ている使節団は、いわゆる捨て駒でございます。彼 の国はポステニア王国という軍事国家と戦争中。なのに、使節団の中に軍事参謀長や軍の責任者的人物が混じっております。普通はあり得ないことです。なのに、戦場から外しこちらに来させてます。いずれも、今のアンセルム・グルタニカ王太子殿下に相反するもの達を……」
「つまりは、こちらで問題を起こして処刑されてしまっても、かまわない者たちか」
私が言いたいことが伝わったようだ、国王陛下が真剣な顔になった。
「はい。そして、今来ている者たちがいなくなれば、グルタニカ王国は、王太子派に対抗できる勢力の指導者たちがいなくなります。そうなれば、周辺諸国はもとより我が国にも戦争を仕掛けてくるでしょう」
「あの者たちは確実に王太子派を抑える力があるというわけか」
「今すぐにでは、ございませんが。いずれあちらの王太子派を追い込みましょう」
私は真剣に国王陛下に向かって言った。
国益にかかわる問題だ。
確実に私と使節団をも信用してもらわないとならない。
「相分かった。そのように取り計らう事にしよう。ジークフリートも分かったな」
「かしこまりました」
ジークフリート殿下は、国王陛下の方を向いて礼を執った。
……本当にここの親子は他人行儀だわね。
「ありがとうございます」
私たちは、礼を執り立ち上がって退出しようとしていた。
その後ろ姿に声がかかる。
「リナ・クランベリー。死ぬことは許さんぞ」
私は国王陛下の方を振り返り、
「もちろんでございます」
そう笑顔で言い。
もう一度、礼を執って退出した。
国王の執務室を退出して、セドリックが言ってくる。
まだここは、人払いの範囲内だ。
「リナ……また、お前」
言いかけたセドリックの言葉を止めた。
「今回は仕方無いのよ。私も本当ならグルタニカで戦うはずだったの」
私は、セドリックの方を見ず、前をまっすぐ見据えたまま言う。
前回のデューク・リネハンの時とは違う。
自らの意志で、マリユス・ニコラを処刑台にあげようというのだから。
「そう……か」
セドリックは、私の少し震えている手をしっかり握り、口元に持っていってキスをしてくれる。
「大丈夫。俺がいるから……。リナがどんなふうになっても見捨てない」
だから、俺にも背負わせてくれと、セドリックは言った。
私は、少し驚いてセドリックを見る、そして、笑って言った。
「期待してるよ。セドリック」
うん。セドリックのその言葉だけで頑張れるよ、私は……。
すでに人払いがなされ、椅子に座る国王陛下の横に立つジークフリート殿下。
私たちは、扉より少し入ったところで跪いて礼を執っていた。
私は、これからの事に必要な許可を取りに来ている。
夫であるセドリックを伴って来たのは、夫が謁見するのに妻を同伴させたという、使節団への目くらましだ。
「国王陛下にお願いがございます」
私は頭を下げたまま言う。
なんだか、警戒されている気配がするけど。
「申してみよ」
「グルタニカ王国の使節団の事ですが。もし、私に害を成す者が現れても、その者のみの罪とし。他の者たちに関しては、私の協力者として無罪とし、帰国させて頂けないでしょうか?」
私は、以前の国王からの依頼を受けた際に、3つの条件を出していた。
だけど、当然のことながら、任務完了と同時に破棄されている。
もし仮に、この条件が有効だったとしても外国の事情での適用は難しいだろうと思う。
「少し良いかな」
ジークフリート殿下が言う。
「知らないのかもしれないから言うけど。他国の使節団が、訪問国の重要な人物を襲った場合。慣例としては、実行犯は取り調べ後、処刑。他の者たちも、共犯として処刑されることが多いのだけど。我が国に限らず」
ジークフリート殿下は、私に配慮して多いと言ったけど。確定で処刑されるだろう。
「だからこその、お願いでございます」
処刑が確定されたら困るからの陳情なのだ。
「どういう事か、説明してもらえるかな? グルタニカ以前にそのリナの態度を」
国王陛下が言ってくる。
そうよね。私の首にはまだリーン・ポートが下がっている。
その気になれば、国王命令を私自身が発効できるのだから。
だけど、これは一方的な命令では無く、納得してもらわないといけないの。
「そうですね。私がこれからいう事を納得して頂かなければならないからです。特にジークフリート殿下には」
「私?」
いきなり話を振られてジークフリート殿下は驚いているけど、私の状態によっては一番感情的に動くだろうこの方に、納得してもらわないと困る。
2年前、感情のまま私とセドリックを斬り殺そうとしたのを忘れてないからね。
「申してみよ」
もうため息交じりに言っている。なんだか国王陛下、うんざりしてませんか?
「今来ている使節団は、いわゆる捨て駒でございます。
「つまりは、こちらで問題を起こして処刑されてしまっても、かまわない者たちか」
私が言いたいことが伝わったようだ、国王陛下が真剣な顔になった。
「はい。そして、今来ている者たちがいなくなれば、グルタニカ王国は、王太子派に対抗できる勢力の指導者たちがいなくなります。そうなれば、周辺諸国はもとより我が国にも戦争を仕掛けてくるでしょう」
「あの者たちは確実に王太子派を抑える力があるというわけか」
「今すぐにでは、ございませんが。いずれあちらの王太子派を追い込みましょう」
私は真剣に国王陛下に向かって言った。
国益にかかわる問題だ。
確実に私と使節団をも信用してもらわないとならない。
「相分かった。そのように取り計らう事にしよう。ジークフリートも分かったな」
「かしこまりました」
ジークフリート殿下は、国王陛下の方を向いて礼を執った。
……本当にここの親子は他人行儀だわね。
「ありがとうございます」
私たちは、礼を執り立ち上がって退出しようとしていた。
その後ろ姿に声がかかる。
「リナ・クランベリー。死ぬことは許さんぞ」
私は国王陛下の方を振り返り、
「もちろんでございます」
そう笑顔で言い。
もう一度、礼を執って退出した。
国王の執務室を退出して、セドリックが言ってくる。
まだここは、人払いの範囲内だ。
「リナ……また、お前」
言いかけたセドリックの言葉を止めた。
「今回は仕方無いのよ。私も本当ならグルタニカで戦うはずだったの」
私は、セドリックの方を見ず、前をまっすぐ見据えたまま言う。
前回のデューク・リネハンの時とは違う。
自らの意志で、マリユス・ニコラを処刑台にあげようというのだから。
「そう……か」
セドリックは、私の少し震えている手をしっかり握り、口元に持っていってキスをしてくれる。
「大丈夫。俺がいるから……。リナがどんなふうになっても見捨てない」
だから、俺にも背負わせてくれと、セドリックは言った。
私は、少し驚いてセドリックを見る、そして、笑って言った。
「期待してるよ。セドリック」
うん。セドリックのその言葉だけで頑張れるよ、私は……。