第25話 リネハン伯爵邸の夜会

文字数 842文字

 リネハン伯爵邸に着くと、まずは客室に案内された。
 程なく、リネハン伯爵がやってくる。小太りのおじさんだな。
 デュークに……いや、比べたくない。

「あ~。リナ・ポートフェンだったけか。よく参られた」
「お招き頂きまして、ありがとうございます。クラレンス・ポートフェンが娘、リナにございます」
 伯爵の偉そうな挨拶に対して、礼を尽くす。
 どこにでもいるよね、こんな奴。私の挨拶にふんっ、と鼻を鳴らす。

「父親の名にすがるか」
 いや、これ自分より格上の身分の方に対する、女性の正式な挨拶ですからね。
 独身なら父親の名の後に、結婚してたら夫の名の後に自分の名を名乗るの。
「父さん、今日は無理言って来てもらってるんだから……」
 ジュークから(たしな)められても、態度が改まらない。
 最初(ハナ)から気にくわない小娘認定だろう。

「せいぜい恥を掻かされないようにするんだな。デューク」
 あ……明らかに、デュークがムッとした。
「今日のお役目、精一杯努めさせて頂きます」
 私は、また礼をとった。前世の取引先の社長とかより全然可愛い態度だし。
 今更怒りませんよ、私は。だから、親子げんかは、よそでしてくれ。

 夜会は、リネハン伯爵の挨拶で始まった。
 私は、招かれる側では無く、主催者側の立ち位置らしい。
 本来は婚約者か身内の女性が努めるはずの役だもんね。
 妹たちは、年齢が達してないから、夜会に出れないそうだ。

 今日は使用人も忙しいので、親戚のお屋敷に預かってもらってるとのこと。
 ということで、私はデュークと一緒に挨拶されてる。私との関係を訊かれると
「クラスメイトなんですよ。まだ口説き中なんです」
 なんて、聞き捨てならないことを言ってるが……。

 夜会や舞踏会を主催するときは、屋敷の使用人だけでは、足りないので助っ人を頼むことが多い。
 その助っ人の中に、兄とセドリックが潜り込む算段になっているが、今のところ会場内にはいないようだった。
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