第95話 婚約披露後の婦人たちのお茶会

文字数 1,028文字

 社交シーズンが始まって、学園はまた開店休業状態に入った。
 去年と違ったのは、エイリーンもだけど、私も休学届けを出してお休みしてる。
 婚約者がいる女性は、学園卒業と同時に結婚という方も多いのでその準備という名目でお休みはとれるのだ。
 ただ、私たちの結婚の予定はまだ立ってないけど……。

 婚約披露夜会が終わった後のちは、女性が社交界デビューしてない場合を除き、各家庭から招待されたお茶会の参加が義務となる。
 この場合、どちらから招待されたかで、本人の立場が決まったりするので結構怖い。
 とは言っても、あまりにも嫁ぎ先の家格が違うところから呼ばれたりはしないのだけどね。

 そういう事で、本日は、マーティンソン公爵夫人シェリル様のお茶会に呼ばれているのだけど……。
 シェリル様の希望で司令官の礼服で参加してます。
 しかも以前、近衛をやったときのカツラ被って……。

「だってアランのところに、とても可愛らしい護衛がやってきたって噂されていて。近衛騎士団の方だからというので諦めていたのよ」
「はぁ。そうですか」
 確かに、この姿で男子っていったら、確実に10歳前後にしか認識されないからね。

「それでね。伺っても良いかしら、リナ様」
「何でしょう?」
「その……アランとは」
 ああ、あれ。
「アラン王子殿下の名誉の為に言いますが、何も無かったですよ。普通に考えて下さい。毎日会うクラスメイトに、手は出さないでしょう」
 いくらアランが奔放さを演じていても、そういう信用はあるでしょう?
「そうねぇ~。あの子ああ見えて、そういう事しそうにないものねぇ」
 良かった信用があって。

「あの……リナ様? 今度わたくしのお茶会にもその格好でいらして下さいませんこと」
「まぁ、ずるい。わたくしのところにも……」
 シェリル様の取り巻き……いやいや、ご友人の方々から口々にお願いされてしまった。
「はぁ。私は楽だから良いですけど……」
 そう、この格好だったら、面倒くさい婦女子の礼儀作法から解放されるのだ。
 いや、私の場合、仮装では無く。本当に司令官だからね。

 一応、このお茶会の主催者。シェリル様の顔を見る。
「行って差し上げて。皆様楽しみにしてますのよ」
「では、喜んで皆様方」
 令嬢としてでは無く。もう、身体になじみつつある騎士としての礼を執った。

 キャーと、小さく歓喜の声が上がったのは気のせいだと言うことにしておこう。
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