第71話 リナちゃんは下町に行きたい セドリックと団長

文字数 1,061文字

 そういえば、セドリックとなら下町でも行けるかなぁ。
 せっかくだから、訊いてみるか。
「セドリック様。今度、お休みいつです?」
「何? どっか行くんなら、休みじゃ無くてもいけるぜ。護衛だし」
「ああ。そうか……。町に行きたいんですけど、騎士団の制服以外でも大丈夫ですか」
「買い物? 商人呼んだ方が早くね」
「そうですね。そうします」
 やっぱ、発想が貴族だよねぇ。公爵家の坊ちゃんだから仕方ないけど。

 気になることがあるから、市場調査したいんだけど……セドリックが相棒じゃ無理かな? 能力が無いんじゃなくて、感覚の差。
 行きたいところに連れて行ってもらえないんじゃ意味が無い。
 歴史書や他の資料見る限りだけど、色々おかしいんだよね、この国。
 それに……誰かが隠してるのか。本当に知りたい本は無かったし。
 誰かいないかなぁ。庶民に感覚が近いか、庶民の兵士。




「いない……んですか?」
「ああ。近衛も騎士も全員貴族だぞ。大昔は庶民の兵士もいたんだろうけど、今は騎士が兵士の仕事も兼ねてしまってるからなぁ。今、兵士って言われてる奴らはみんな、私兵だしな」

 誰かいないかと、騎士団長の執務室まで行って訊いてみたけど、意外というかやっぱりと言うかそういう答えが返ってきた。
 下部組織の軍兵隊もないものね。

「まぁ、仮にいたとしても許可出来無いけどな。庶民に近い一般兵と一緒に町に出るなんて」
「…許可って?」
 いるの? 団長の?
 団長は、ふっと、夜会の時のような雰囲気をつくり出す。

「リナ嬢。貴女は自分の魅力がまだ分かられてないようですね。いくら、子どもっぽく振る舞っても、我々にとっては美しい女性に違いないのですよ。憧れを(いだ)かれるだけならまだしも、不埒なことを考える(やから)は山ほどおりますでしょう」
 そっと手を取られ、手の甲では無く。
 手のひらのマメがつぶれて堅くなってるところに口付けられる。

 ゾワッとした。なんか、嫌だ。反射的に手を引こうとしたけど離してくれない。強い力じゃないのに。
「誰かに手折られるくらいなら、私が…と思う(やから)もおりましょうに」
 で~、まずい。逃げらんない。ライラ。
「ああ、貴女の護衛はここには来れませんよ。私を誰だと思ってるのです」
 詰んだ。ダメだ。団長もホールデン家の人間だった。
「団長、私は今、貴方の部下としてここにいるのですが」
 まっすぐ、団長を見る。何かされたら部下に手を出したって宰相通じて、噂流してやる。
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