第25話 使節団の訓練指導 元夫婦の泥仕合?
文字数 1,558文字
マリユス・ニコラが処刑された後 、他の使節団メンバーは全員、無罪放免になった。
当然なのだが友好国としての交渉は決裂し、結界が開いてしまうまで、使節団は騎士団の訓練に付き合う事となった。
「いやー、勝てねぇな」
珍しく息を切らしたサイラスが訓練所の端でへたり込んでいる。
「それでも、この中で一番強いんじゃないかな」
フランシス殿下が涼しい顔で言っているのが、目の端に映る。
私はというと、目の前のキースに向かって剣をぶん回していた。
ったく、デカいずうたいしているのに、ちょこまかと逃げるんじゃないわよ。
「息1つ切らして無いんだもんな」
セドリックったら、まだへたっているわ。
まぁ、私に稽古つけていた時と違って、フランシス殿下もあまり手加減していないものね。
「君らの体力が無さすぎるんだよ。リナと一緒に基礎鍛錬したら良い」
牢から解放された使節団のメンバーに、私は騎士団員の訓練をお願いした。
対象は、近衛騎士、騎士共に、隊長以上。
戦力の差を彼らに実感してもらわないと、部下の育成が甘くなってしまう。
って言うか、いい加減当たりなさいよ。
「だいたい、あんたがこんなゲームしようって言ったから」
「悪かったって」
悪いと思うなら避けるな。
「……で、あれは何なんだ?」
私たちの方を向いて、サイラスが訊いている。
「元夫婦の泥仕合?」
フランシス殿下が言っているけど。
いや、夫婦じゃ無いし。
なんだか、セドリックから不穏な空気が……。
「何で避けるのよ。当たんないじゃない」
「死んじゃう。避けないと死んじゃうって、僕」
もうっ。腹が立つ。
こっちは息切れしているのに、キースは平気な顔をして避けてるんだもの。
もう……息が切れて、体が動かない。
そう思った途端、キースが私の剣を自分の剣にからめるようにして、取り上げられてしまった。
「気が済んだ?」
にこやかにそう言って、私に剣を渡してくる。
本当に、憎たらしい。息1つ上がって無いんだもの。
「こっちにいる間は、付き合ってやるけどさぁ、リナ。旦那がガン見してるぜ」
キースの言葉に、私は思わずセドリックを見る。
なんだか、とても怖い。
私は、ススッとキースの方に近付いてシャツを掴んだ。
「付いてきて」
懇願するように、キースに言う。
「僕は、かまわないけど。逆効果じゃないか? ほら、1人で行ってこい」
ポンっと背中を押されてしまった。
いや、疲れと怖さで足が動かない。
「僕とよりを戻したいわけじゃ、ないんだろ?」
キースからそう言われて、私は歩き出した。
そう、キース……悠人と一緒にこれからの人生を歩きたいわけじゃない。
私の後ろで
「やれやれ」
と言う、キースのため息交じりの声が聞こえた。そして……。
「次は誰が相手だ?」
大きい声で言って、隊長たちの訓練相手をするために戻って行くのが見えた。
「ストレス解消出来た?」
フランシス殿下が、訊いてくる。
「ダメですね。剣当たらないし」
「殺す気かよ」
私が言うと、サイラスが呆れたように言ってきた。
私は、フランシス殿下たちとしばらく雑談をして、セドリックの方に行った。
「ただいま。セドリック」
へたり込んで座っているセドリックに、私は後ろから抱き着いた。
「俺、汗臭いから」
ごきげん斜め?
汗のにおいを理由に、私を引きはがそうとしている。
だけどね。
「確かに汗のにおいはするけど……。今さら?」
セドリックには、私の言いたいことが伝わったみたい。
顔を赤くしている。
「そこっ。いちゃついて訓練しないなら、もう帰れ」
サイラスから、シッシッって追い払われる感じで言われた。
その横で、フランシス殿下が笑っている。
もうすぐ、イングラデシア王国の結界が開く。
グルタニカ使節団のメンバーにとって、多分最後の平和な一時 のお話。
当然なのだが友好国としての交渉は決裂し、結界が開いてしまうまで、使節団は騎士団の訓練に付き合う事となった。
「いやー、勝てねぇな」
珍しく息を切らしたサイラスが訓練所の端でへたり込んでいる。
「それでも、この中で一番強いんじゃないかな」
フランシス殿下が涼しい顔で言っているのが、目の端に映る。
私はというと、目の前のキースに向かって剣をぶん回していた。
ったく、デカいずうたいしているのに、ちょこまかと逃げるんじゃないわよ。
「息1つ切らして無いんだもんな」
セドリックったら、まだへたっているわ。
まぁ、私に稽古つけていた時と違って、フランシス殿下もあまり手加減していないものね。
「君らの体力が無さすぎるんだよ。リナと一緒に基礎鍛錬したら良い」
牢から解放された使節団のメンバーに、私は騎士団員の訓練をお願いした。
対象は、近衛騎士、騎士共に、隊長以上。
戦力の差を彼らに実感してもらわないと、部下の育成が甘くなってしまう。
って言うか、いい加減当たりなさいよ。
「だいたい、あんたがこんなゲームしようって言ったから」
「悪かったって」
悪いと思うなら避けるな。
「……で、あれは何なんだ?」
私たちの方を向いて、サイラスが訊いている。
「元夫婦の泥仕合?」
フランシス殿下が言っているけど。
いや、夫婦じゃ無いし。
なんだか、セドリックから不穏な空気が……。
「何で避けるのよ。当たんないじゃない」
「死んじゃう。避けないと死んじゃうって、僕」
もうっ。腹が立つ。
こっちは息切れしているのに、キースは平気な顔をして避けてるんだもの。
もう……息が切れて、体が動かない。
そう思った途端、キースが私の剣を自分の剣にからめるようにして、取り上げられてしまった。
「気が済んだ?」
にこやかにそう言って、私に剣を渡してくる。
本当に、憎たらしい。息1つ上がって無いんだもの。
「こっちにいる間は、付き合ってやるけどさぁ、リナ。旦那がガン見してるぜ」
キースの言葉に、私は思わずセドリックを見る。
なんだか、とても怖い。
私は、ススッとキースの方に近付いてシャツを掴んだ。
「付いてきて」
懇願するように、キースに言う。
「僕は、かまわないけど。逆効果じゃないか? ほら、1人で行ってこい」
ポンっと背中を押されてしまった。
いや、疲れと怖さで足が動かない。
「僕とよりを戻したいわけじゃ、ないんだろ?」
キースからそう言われて、私は歩き出した。
そう、キース……悠人と一緒にこれからの人生を歩きたいわけじゃない。
私の後ろで
「やれやれ」
と言う、キースのため息交じりの声が聞こえた。そして……。
「次は誰が相手だ?」
大きい声で言って、隊長たちの訓練相手をするために戻って行くのが見えた。
「ストレス解消出来た?」
フランシス殿下が、訊いてくる。
「ダメですね。剣当たらないし」
「殺す気かよ」
私が言うと、サイラスが呆れたように言ってきた。
私は、フランシス殿下たちとしばらく雑談をして、セドリックの方に行った。
「ただいま。セドリック」
へたり込んで座っているセドリックに、私は後ろから抱き着いた。
「俺、汗臭いから」
ごきげん斜め?
汗のにおいを理由に、私を引きはがそうとしている。
だけどね。
「確かに汗のにおいはするけど……。今さら?」
セドリックには、私の言いたいことが伝わったみたい。
顔を赤くしている。
「そこっ。いちゃついて訓練しないなら、もう帰れ」
サイラスから、シッシッって追い払われる感じで言われた。
その横で、フランシス殿下が笑っている。
もうすぐ、イングラデシア王国の結界が開く。
グルタニカ使節団のメンバーにとって、多分最後の平和な