第12話 リナのデビュタント 国王謁見控えの間からのお父様?
文字数 1,643文字
宰相様に促されて入った部屋には、大きな鏡と大勢の侍女の方々。
隅の方に、湯浴みの用意までされていた。
いや、本当にこれ、夜伽だったりしないだろうな。
ガシガシ磨かれた後、王宮でウロウロしてても可笑しくない、豪奢だけど落ち着いたドレスに着替えさせられていた。
サイズ、ぴったりなんですけどね。
謁見用にきっちり上げられてた髪はルーズに上げ直された。
普段着の王女様って感じ……かな? かなり、不敬だけど……。
うちじゃ普段着は、ワンピースみたいな感じだけど。
大人っぽい人なら、色気も感じさせるかもしれないけど……所詮は、子どもだ。
背伸びした子どもがいます、鏡の中に。
誰かが呼びに行ったのか、近衛騎士団の制服を着た人が迎えに来た。
王様の執務室に行くそうだ。
執務室の扉の前で、やっぱり近衛騎士団の方に連れられた父と出会う。
父は私を無視して扉に向き直った。
「クラレンス・ポートフェンです。失礼致します」
話を交わす間もなく、扉が開いた。
スッと父が入っていったので、後に続く。
父は貴族の礼を執り。
「国王陛下におかれましては、御健勝のことと心よりお慶び申し上げます」
と、決まり文句のような挨拶を続ける。
部屋の中には、国王と宰相がいた。
国王は、謁見の間では気づかなかったが、若く見えるな。
せいぜい大目に見て40代前半か。アランに似てる。
「人払いは済ましておる。白々しい挨拶より、本題に入りたい」
謁見の間に居るときのように、ゆっくりしゃべる訳でなく、普通にしゃべった。
「なんでございましょう」
本来なら子爵の身分では入れない国王の執務室。なのに、父は恐縮するでも無く堂々としている。
だけど、ものすごく警戒して、ピリピリしてるのが分かる。
こんな父は、初めてだ。
「そなた、王宮に戻る気は無いか?」
「無いですね。王宮での立場など、もう20年も前に捨ててます。それに、戻れる功績も無いでしょう」
「功績など……どうしても、要るというなら、そなたの娘を王太子の正妃に」
「いっそ、私を不敬罪で斬首刑になさいますか」
王様の言葉を遮るように、大きな声で物騒な事を言い出す。
その目は、王様を刺すように睨み付けていた。
その剣幕が怖くて、思わず父の腕にしがみついた。
「すまない。戯れがすぎた」
王様の方が折れた。
「いえ」
しがみついた私の手に父の手が重なる。
「それだけが、ご用件なら失礼します」
私の肩を抱き、連れだって執務室を後にしようとする。
「その娘、リナと言ったか……。ずいぶんと優秀だそうじゃないか。学園での、報告が上がって来ているぞ」
お父様が振り返る。
「数学が得意なのは、そなたの血ゆえにか?」
「努力のたまものでしょう。そもそも、学園の勉強は飾り程度のもの。優秀もなにも、少し勉強すれば出来るようになるでしょう」
「勉強だけならばなぁ」
そう言って王様は苦笑いする。
「歓迎の夜会で、誘われたからと、ホイホイ婚約者のいる王太子をパートナーにする愚か者かと思えば、自分に敵対してきた令嬢たちを懐柔して味方にする手腕。第二王子派の、高官でも手を焼く程切れ者と評判の側近候補と渡り合おうとする度胸」
誰ですか、それは……。
「そして、今日の謁見の間でのやりとり。王の間違いを指摘せず。自分の容姿を充分理解して警戒して見せ。マナーが出来てないのは、全て自己責任ですと言い切った、勇気。あの誰もが緊張する場で、とっさに判断し、最良の言動をとった。そんなの見せられたら、誰だって欲しいと思うではないか」
うっわ~、そこですか。そんな評価ですか。っていうか、学園内の出来事って、王様に報告上がっているんですか。そりゃ、上位貴族のこども、大人しくしてるはずですよ。
上目遣いで父を見上げたら、信じられないって顔で見返されましたよ。何やらかしてんだ、この子って顔で……。
隅の方に、湯浴みの用意までされていた。
いや、本当にこれ、夜伽だったりしないだろうな。
ガシガシ磨かれた後、王宮でウロウロしてても可笑しくない、豪奢だけど落ち着いたドレスに着替えさせられていた。
サイズ、ぴったりなんですけどね。
謁見用にきっちり上げられてた髪はルーズに上げ直された。
普段着の王女様って感じ……かな? かなり、不敬だけど……。
うちじゃ普段着は、ワンピースみたいな感じだけど。
大人っぽい人なら、色気も感じさせるかもしれないけど……所詮は、子どもだ。
背伸びした子どもがいます、鏡の中に。
誰かが呼びに行ったのか、近衛騎士団の制服を着た人が迎えに来た。
王様の執務室に行くそうだ。
執務室の扉の前で、やっぱり近衛騎士団の方に連れられた父と出会う。
父は私を無視して扉に向き直った。
「クラレンス・ポートフェンです。失礼致します」
話を交わす間もなく、扉が開いた。
スッと父が入っていったので、後に続く。
父は貴族の礼を執り。
「国王陛下におかれましては、御健勝のことと心よりお慶び申し上げます」
と、決まり文句のような挨拶を続ける。
部屋の中には、国王と宰相がいた。
国王は、謁見の間では気づかなかったが、若く見えるな。
せいぜい大目に見て40代前半か。アランに似てる。
「人払いは済ましておる。白々しい挨拶より、本題に入りたい」
謁見の間に居るときのように、ゆっくりしゃべる訳でなく、普通にしゃべった。
「なんでございましょう」
本来なら子爵の身分では入れない国王の執務室。なのに、父は恐縮するでも無く堂々としている。
だけど、ものすごく警戒して、ピリピリしてるのが分かる。
こんな父は、初めてだ。
「そなた、王宮に戻る気は無いか?」
「無いですね。王宮での立場など、もう20年も前に捨ててます。それに、戻れる功績も無いでしょう」
「功績など……どうしても、要るというなら、そなたの娘を王太子の正妃に」
「いっそ、私を不敬罪で斬首刑になさいますか」
王様の言葉を遮るように、大きな声で物騒な事を言い出す。
その目は、王様を刺すように睨み付けていた。
その剣幕が怖くて、思わず父の腕にしがみついた。
「すまない。戯れがすぎた」
王様の方が折れた。
「いえ」
しがみついた私の手に父の手が重なる。
「それだけが、ご用件なら失礼します」
私の肩を抱き、連れだって執務室を後にしようとする。
「その娘、リナと言ったか……。ずいぶんと優秀だそうじゃないか。学園での、報告が上がって来ているぞ」
お父様が振り返る。
「数学が得意なのは、そなたの血ゆえにか?」
「努力のたまものでしょう。そもそも、学園の勉強は飾り程度のもの。優秀もなにも、少し勉強すれば出来るようになるでしょう」
「勉強だけならばなぁ」
そう言って王様は苦笑いする。
「歓迎の夜会で、誘われたからと、ホイホイ婚約者のいる王太子をパートナーにする愚か者かと思えば、自分に敵対してきた令嬢たちを懐柔して味方にする手腕。第二王子派の、高官でも手を焼く程切れ者と評判の側近候補と渡り合おうとする度胸」
誰ですか、それは……。
「そして、今日の謁見の間でのやりとり。王の間違いを指摘せず。自分の容姿を充分理解して警戒して見せ。マナーが出来てないのは、全て自己責任ですと言い切った、勇気。あの誰もが緊張する場で、とっさに判断し、最良の言動をとった。そんなの見せられたら、誰だって欲しいと思うではないか」
うっわ~、そこですか。そんな評価ですか。っていうか、学園内の出来事って、王様に報告上がっているんですか。そりゃ、上位貴族のこども、大人しくしてるはずですよ。
上目遣いで父を見上げたら、信じられないって顔で見返されましたよ。何やらかしてんだ、この子って顔で……。