第63話 クランベリー公爵邸 リナに指揮権をあげよう

文字数 1,027文字

 具体的な交渉に入ったので、セドリックも私の横に座ってきた。
「まずはアボット侯爵家やホールデン侯爵家と私が接触するときに、他の貴族、騎士団が動かないように抑えて頂きたいと思ってます。もし危ないようでしたら協力者の保護もお願いします」
「それだけでよろしいのですかな」
 もっと、無茶ぶりされるのかと思ってたのか訊いてくる。
 いや、私にとっては十分大変なことなのですが……。
 って言うか、実際動かないでくれるだけで有り難いって感じなんですけど。

「私が怖いのは、皆さんが現場で危険な目に遭うことなんです。現場処刑さえ回避できたら、協力者の身の安全は保証されるよう、公文書化した誓約書にしてます」
「今の話だと、リナちゃんの身の安全は保証されてないように聞こえるけど?」
「私まで含めたら自由に動けなくなるでしょう?」
「は? 何だよそれ。それで納得するとでも思ってるの?」
「リナ嬢の身の安全は、できる限りこちらで保証しましょう」
「親父?」

「セドリック。仕事をする気が無いのなら出て行きたまえ」
 クランベリー公に睨まれて、セドリックは溜息をつく。
 そして気持ちを入れ替えたようにしゃきっとなった。
「失礼致しました、近衛騎士団長。この場にいさせて下さい」
 セドリックの言葉にクランベリー公は頷くことで了承した。

「しばらくは……そうですね、アボット侯爵との交渉が終わるくらいまで、私達の婚約の公表はしないでいただきたいのですが……」
 公表しなくとも、すぐに情報は入るだろうけど。わざわざこちらから知らせたくは無い。
「それは、もちろんかまいませんよ」
「ありがとうございます」
「要求はそれだけですかな?」
「今のところは……えっと、後から追加出来ますか?」

「かまいません。以上でしたら、こちらから。騎士団の第5、第7、近衛騎士団第3部隊の指揮権を差し上げましょう」
 はぁ? 
「いやいやいや、無理ですから。私、剣扱えないし。いきなり複数の部隊とか無理です」
「剣を扱う必要はありません。それに、なにも今すぐ使いこなせというわけじゃない。第5部隊はセドリックが隊長だし、後の2隊も私の子飼いの隊長です。何も無いときは、通常業務をしてます。それに貴女が関わることもありません。まぁ練習ですよ、参謀としての」

 参謀……ならなくちゃ、ダメですかね。
 後日、他2名の隊長との引き合わせを約束させられて、クランベリー邸を後にした。
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