第96話 アボット侯爵からの抗議
文字数 1,830文字
しばらくは、セドリックと出なければならない夜会に出て。
お茶会が無ければ、昼間、騎士団の訓練に顔を出して……という、日々が続いてた。
まぁ、夜会以外は男装してるのと同じなので楽である。
油断してたら、ドレス入らなくなるけどね。
「司令官の礼服は子どもの遊び着では、無いと思っていたのですけどね。どういうつもりで、お茶会や園遊会に司令官の礼服で参加されているのですかな」
「申し訳ございません」
請 われるままお茶会に礼服で参加してたら、アボット候から執務室に呼び出されてしまった。
私が女性なので、2人きりにならぬようにという名目で、護衛で本来扉の外にいるはずの近衛騎士たちを、部屋内に待機させたままである。こういう配慮は、徹底してるな。さすがというか、何というか。
「詫びが聞きたいわけではありません。理由をきいているのです」
いや、気持ちはわかるけと説明のしようが無い。それに後、何件この茶番を続けないといけないのか分からないのに。
やれやれ、怒らせるかもしれないけど。っていうか、私が聞く側でも、絶対怒るけど。性別を理由にするなんて。
「アボット候爵閣下。私は女性です。お茶会や園遊会は、出なければならない行事の1つです。しがない子爵令嬢としては、今、必死に社交界での立場を作っている所なのです。今しばらくは、お見逃し願えないでしょうか?」
「今の宰相やクランベリー公は、ずいぶんとお嬢さんを甘やかしてるようですな」
ちょっと待て、怒りの矛先変えないでよ。
「私の一存でしてることなので。申し訳ございません」
「ほ~う?」
アボット候がおもむろに椅子から立ち上がった。
なんか、殴られそう。えっと……奥歯くいしばるんだっけ。
私が殴られる覚悟をしていたら、控えていた近衛騎士達が私の前に庇うように立ちはだかる。
へ? なんで?
あ……マーティンソン隊長だ。って事は、これ近衛第三 部隊 ?
「退きたまえ」
「命令には従えません」
「それがどういう事か分かっているのかね」
「承知の上」
あっちゃ~。まずいわ、これ。
「退きなさい。マーティンソン隊長」
「司令官殿」
「命 令 です。隊員を退かせ、持ち場に戻りなさい」
頼む、言うこと聞いてくれ。
「はい」
各自、元の位置に戻ってくれた。
「失礼致しました」
私は、深々と頭を下げる。
もう、どうしょうもない。一発殴られて、頭下げ続けるしか無いか。
「マーティンソン隊長。命令違反の責任はどう取るつもりかね。それとも、そこの子どもに取らせるつもりかね」
をい。
「いえ。私の責……」
「私の部下を処罰の対象にさせませんよ」
「ほう? お嬢さんは騎士団の司令官だと思っていたが?」
アボット侯はおもむろに私を見た。
「その前に、近衛第三部隊の指揮権をクランベリー公爵様から頂いてます。部下の失態は上官である私の責任です。処罰は私のみに留めて下さい。先程のお茶会の件もです」
私はアボット侯をまっすぐ見据えて言う。これだけは、譲れないから。
「貴方は、王宮に復帰されるときに、国王と私が交わした3つの条件を公文書化した誓約書を見せられませんでしたか? 私の協力者や家族を何人たりとも、それこそ国王ですら処罰の対象にすることは出来ません」
「いささか、協力者の範囲が広すぎだとは思いましたがね」
「アボット侯爵様もご存じの理由で国力をなるべく削ぎたくないので」
「なるほど、そして貴女自身は、その全てから守られているというわけですか。クランべりー公爵閣下からも、身の安全を保証されてますね」
アボット候は、ふ~っと、溜息をついた。
「子どもだと思って油断してましたよ。しかも、権力は仲間を守るためにしか使わない。父親そっくりだ」
「私への処罰はして下さってかまいませんよ。目に余る行動だったのでしょう?」
「ほんとうなら、1ヶ月の謹慎処分と言いたいところですが。貴女を処罰したと分かると、婦人会から抗議文が来そうですね」
やれやれと言いながら、席に戻った。1ヶ月……命令違反は、加算されなかったか。
「いいでしょう。今回はお互いご婦人方の機嫌を損ねたくないという事で、見逃しましょう」
お互い……、ここが落としどころか。
「寛大なご処置、有難うございます」
私は礼を執って、アボット侯の執務室を退出した。
お茶会が無ければ、昼間、騎士団の訓練に顔を出して……という、日々が続いてた。
まぁ、夜会以外は男装してるのと同じなので楽である。
油断してたら、ドレス入らなくなるけどね。
「司令官の礼服は子どもの遊び着では、無いと思っていたのですけどね。どういうつもりで、お茶会や園遊会に司令官の礼服で参加されているのですかな」
「申し訳ございません」
私が女性なので、2人きりにならぬようにという名目で、護衛で本来扉の外にいるはずの近衛騎士たちを、部屋内に待機させたままである。こういう配慮は、徹底してるな。さすがというか、何というか。
「詫びが聞きたいわけではありません。理由をきいているのです」
いや、気持ちはわかるけと説明のしようが無い。それに後、何件この茶番を続けないといけないのか分からないのに。
やれやれ、怒らせるかもしれないけど。っていうか、私が聞く側でも、絶対怒るけど。性別を理由にするなんて。
「アボット候爵閣下。私は女性です。お茶会や園遊会は、出なければならない行事の1つです。しがない子爵令嬢としては、今、必死に社交界での立場を作っている所なのです。今しばらくは、お見逃し願えないでしょうか?」
「今の宰相やクランベリー公は、ずいぶんとお嬢さんを甘やかしてるようですな」
ちょっと待て、怒りの矛先変えないでよ。
「私の一存でしてることなので。申し訳ございません」
「ほ~う?」
アボット候がおもむろに椅子から立ち上がった。
なんか、殴られそう。えっと……奥歯くいしばるんだっけ。
私が殴られる覚悟をしていたら、控えていた近衛騎士達が私の前に庇うように立ちはだかる。
へ? なんで?
あ……マーティンソン隊長だ。って事は、これ
「退きたまえ」
「命令には従えません」
「それがどういう事か分かっているのかね」
「承知の上」
あっちゃ~。まずいわ、これ。
「退きなさい。マーティンソン隊長」
「司令官殿」
「
頼む、言うこと聞いてくれ。
「はい」
各自、元の位置に戻ってくれた。
「失礼致しました」
私は、深々と頭を下げる。
もう、どうしょうもない。一発殴られて、頭下げ続けるしか無いか。
「マーティンソン隊長。命令違反の責任はどう取るつもりかね。それとも、そこの子どもに取らせるつもりかね」
をい。
「いえ。私の責……」
「私の部下を処罰の対象にさせませんよ」
「ほう? お嬢さんは騎士団の司令官だと思っていたが?」
アボット侯はおもむろに私を見た。
「その前に、近衛第三部隊の指揮権をクランベリー公爵様から頂いてます。部下の失態は上官である私の責任です。処罰は私のみに留めて下さい。先程のお茶会の件もです」
私はアボット侯をまっすぐ見据えて言う。これだけは、譲れないから。
「貴方は、王宮に復帰されるときに、国王と私が交わした3つの条件を公文書化した誓約書を見せられませんでしたか? 私の協力者や家族を何人たりとも、それこそ国王ですら処罰の対象にすることは出来ません」
「いささか、協力者の範囲が広すぎだとは思いましたがね」
「アボット侯爵様もご存じの理由で国力をなるべく削ぎたくないので」
「なるほど、そして貴女自身は、その全てから守られているというわけですか。クランべりー公爵閣下からも、身の安全を保証されてますね」
アボット候は、ふ~っと、溜息をついた。
「子どもだと思って油断してましたよ。しかも、権力は仲間を守るためにしか使わない。父親そっくりだ」
「私への処罰はして下さってかまいませんよ。目に余る行動だったのでしょう?」
「ほんとうなら、1ヶ月の謹慎処分と言いたいところですが。貴女を処罰したと分かると、婦人会から抗議文が来そうですね」
やれやれと言いながら、席に戻った。1ヶ月……命令違反は、加算されなかったか。
「いいでしょう。今回はお互いご婦人方の機嫌を損ねたくないという事で、見逃しましょう」
お互い……、ここが落としどころか。
「寛大なご処置、有難うございます」
私は礼を執って、アボット侯の執務室を退出した。