第7話 ……それで、君はお飾りで良いの?
文字数 1,400文字
訓練場に備え付けてある、刃を潰した練習用の剣を借りる。
当たり前だけど、魔道具『リーン・ポート』があるからと言ってチートな能力が使えるわけではない。
だいたいあれは、王子殿下たちの血を媒体に結界を強化する魔道具だ。
私自身、体幹とか筋トレとか、体を鍛える努力はしているけど、訓練ですら他の騎士から手加減されている状態だもの。
今回の相手は、軍事大国の司令官。
しかも実戦経験者だ。
まさか……ねぇ。
今さら、このゲームにぶち当たるとは思わなかったよ。
悠人が好きでやっていたRPGゲームで、私も付きあわされてプレイしていた。
『グランアシティブル』だっけ、ゲーム名。
実際、使節団の国名を聞いてもピンとこなかったくらい忘れていた。
キースがあの手紙通りの悠人だと知らなかったら、思い出すことなく過ごしていただろう。
『グランアシティブル』というゲームは、いわゆる戦闘戦略のVRゲームだ。
なんで、こんなふわふわ設定の乙女ゲームの世界と繋がったのだろうって感じ?
しかも、この世界はゲームでは無い。
「用意は良いかな? リナ」
「はい」
訓練場には、みんな暇なのかな? というくらい人だかりが出来ていた。
やれやれ、覚えているかな。というか、体が動いてくれるだろうか。
私、前の時この人に剣術習っているんだよね。
「いや。かまえて無いけど、本当に良いの?」
さすがにフランシス殿下が怪訝そうな顔をした。
「どうぞ?」
私は、剣を抜いただけの格好でだらんと手を下げていた。
だって、かまえた状態からじゃ速く走れない。
どうせ、勝てないなら一撃だけでも、戦法である。
「始め!」
試合はサイラスの合図で始まった。
私は合図と同時に、地面を蹴ってフランシス殿下の方に走り、いきなり斜め下から持っている剣を弾いた。
思いっきり剣が、空中を舞い地面に突き刺さる。
私は、フランシス殿下の喉元に剣を突き付けた。
相手の油断を突くのは、私の得意とするところである。
ただ、同じ手は2度と使えないけど。
みんなが見守る中、フランシス殿下は両手を上げてあっさり
「降参」
と言った。
周りはホッとしたように、歓声を上げたけど。
「ふ~ん。真面目なんだね」
そんな中、面白そうにフランシス殿下は言う。
「真面目に基礎鍛錬をしている。だから、女性の身でありながら、男性がしっかり持っている剣を弾く力がある。戦闘センスも良い。実にもったいない」
私には、穏やかな顔でそういう評価を言って、サイラスの方に向き直る。
「ちゃんと真面目に訓練している子を甘やかせて、戦場で死なせる気なのかな? ホールデン団長は」
サイラスを睨むようにフランシス殿下は言った。
その様子に、サイラスは固まってしまっている。
「あの。フランシス殿下?」
不穏な雰囲気に、私は思わず声を掛けてしまった。
「だってそうだろう? もう一度戦っても勝てるなら良いけど、そうじゃないだろう? 戦場で僕と会ったら死んじゃうよね」
「そうですね。その通りだと思います」
訓練場でも、フランシス殿下に勝てるのはサイラスかセドリック。王族であればアランくらい。これが命のやり取りをしている戦場であれば、誰も勝てないかもしれない。
今、私が勝てたのはフランシス殿下が待っていてくれたから。
何をするのだろう……と。
「それで? リナはお飾りでいるの?」
フランシス殿下は、再度私に訊いてきた。
当たり前だけど、魔道具『リーン・ポート』があるからと言ってチートな能力が使えるわけではない。
だいたいあれは、王子殿下たちの血を媒体に結界を強化する魔道具だ。
私自身、体幹とか筋トレとか、体を鍛える努力はしているけど、訓練ですら他の騎士から手加減されている状態だもの。
今回の相手は、軍事大国の司令官。
しかも実戦経験者だ。
まさか……ねぇ。
今さら、このゲームにぶち当たるとは思わなかったよ。
悠人が好きでやっていたRPGゲームで、私も付きあわされてプレイしていた。
『グランアシティブル』だっけ、ゲーム名。
実際、使節団の国名を聞いてもピンとこなかったくらい忘れていた。
キースがあの手紙通りの悠人だと知らなかったら、思い出すことなく過ごしていただろう。
『グランアシティブル』というゲームは、いわゆる戦闘戦略のVRゲームだ。
なんで、こんなふわふわ設定の乙女ゲームの世界と繋がったのだろうって感じ?
しかも、この世界はゲームでは無い。
「用意は良いかな? リナ」
「はい」
訓練場には、みんな暇なのかな? というくらい人だかりが出来ていた。
やれやれ、覚えているかな。というか、体が動いてくれるだろうか。
私、前の時この人に剣術習っているんだよね。
「いや。かまえて無いけど、本当に良いの?」
さすがにフランシス殿下が怪訝そうな顔をした。
「どうぞ?」
私は、剣を抜いただけの格好でだらんと手を下げていた。
だって、かまえた状態からじゃ速く走れない。
どうせ、勝てないなら一撃だけでも、戦法である。
「始め!」
試合はサイラスの合図で始まった。
私は合図と同時に、地面を蹴ってフランシス殿下の方に走り、いきなり斜め下から持っている剣を弾いた。
思いっきり剣が、空中を舞い地面に突き刺さる。
私は、フランシス殿下の喉元に剣を突き付けた。
相手の油断を突くのは、私の得意とするところである。
ただ、同じ手は2度と使えないけど。
みんなが見守る中、フランシス殿下は両手を上げてあっさり
「降参」
と言った。
周りはホッとしたように、歓声を上げたけど。
「ふ~ん。真面目なんだね」
そんな中、面白そうにフランシス殿下は言う。
「真面目に基礎鍛錬をしている。だから、女性の身でありながら、男性がしっかり持っている剣を弾く力がある。戦闘センスも良い。実にもったいない」
私には、穏やかな顔でそういう評価を言って、サイラスの方に向き直る。
「ちゃんと真面目に訓練している子を甘やかせて、戦場で死なせる気なのかな? ホールデン団長は」
サイラスを睨むようにフランシス殿下は言った。
その様子に、サイラスは固まってしまっている。
「あの。フランシス殿下?」
不穏な雰囲気に、私は思わず声を掛けてしまった。
「だってそうだろう? もう一度戦っても勝てるなら良いけど、そうじゃないだろう? 戦場で僕と会ったら死んじゃうよね」
「そうですね。その通りだと思います」
訓練場でも、フランシス殿下に勝てるのはサイラスかセドリック。王族であればアランくらい。これが命のやり取りをしている戦場であれば、誰も勝てないかもしれない。
今、私が勝てたのはフランシス殿下が待っていてくれたから。
何をするのだろう……と。
「それで? リナはお飾りでいるの?」
フランシス殿下は、再度私に訊いてきた。