第83話 近衛騎士見習いリナ 婚約者同士のお茶会
文字数 2,509文字
近衛騎士見習いとして、数日間は平和に過ごせてたと思う。
なんか、クランベリー公の抗議とか抗議文とかきて、アランは大変だったみたいだけど。
「ん~もう。これじゃ無いって言ってるでしょう? リボンなんて子どもっぽいもの」
朝の支度が気に入らないみたいで。
フイリッシアが侍女たちに向かってかんしゃくまわしてる。ドレス選びは私たち近衛騎士は、さすがに入れなかったけど、時間がかかってたから、多分こんな感じだったのだろう。
ジークフリートルートのエイリーンが、悪役令嬢どころか人格者だっだので油断してたが、こっちはガチのワガママ王女だったか……。
私は横に立ってる隊長に小声で訊いてみる。
「今日、何かあるんですか?」
「仕事中の私語は厳禁だ」
「すみません」
怒られちゃった。
「今日、婚約者殿がいらっしゃる」
へ?
隊長の方を向いたら、知らん顔で前を向いてた。
ふ~む。どうせ、子どもなんだから、子どもっぽくしてても良いんじゃ無いかと思うけど。
ドレスはちょっと背伸びしちゃってるから……。
私は、スッと前に出て近くにいた侍女に耳打ちをする。
そうしてから、私はフイリッシアの後ろに立った。
「フイリッシア殿下。どうなさいました? せっかくの可愛らしいお顔が台無しですよ」
「ふん。昨夜もお兄様とお楽しみだったんじゃないの?」
意味分かって言ってるのかな? ってか、あれ以来アランとは会えてないからね。
「お姫様が、ずいぶんと下世話な言葉を知っていらっしゃる」
スルーして、先ほど耳打ちした侍女と二人で作業に入る。
リボンを髪に編み込みルーズに上げて仕上げた。おくれ髪も色っぽく見えるように計算済み。
好きな人のために、頑張って背伸びした女の子の完成。
フイリッシアは、鏡の中の自分に驚いてるようだった。
なるほどね。
あっちはどうか知らないが、フイリッシアの方はレイモンドの事好きなんだ。
「とても良くお似合いですよ。これなら、婚約者様にも気に入って頂けるでしょう」
私はにこやかに太鼓判を押した。
「所詮、政略結婚だもの」
ありゃ、うつむいてしまった。相手がサイラスだったら、例え好きで無くても、自分の婚約者にこんな顔させないだろうに。
レイモンドの奴、何やってんだ。
「しゃんと、顔をお上げください。せっかく可愛らしいのにもったいない」
「あなた、生意気だわ」
「気に入らないなら、一言『不快だわ。あなたなんていらない』と言えば良いのですよ。私の家は、子爵家です。あなたの一言で、簡単に吹き飛ぶ命なのですから」
そう、ここの侍女たちも大差ない。
子爵か男爵の娘たちだ。
かんしゃくで済んでるうちは良いけど……うっかり言葉選びを間違えたら、本気で怒ったように周りから見えたら。
王族に対する不敬罪での、処刑が待ってる。
「ごめんなさい」
あれ? 謝った。っていうか、誰もそういうこと教えてなかったんかい。
「あの……付いてきてくれるかしら」
「護衛ですので、フイリッシア殿下が行かれるところでしたら、喜んでお供致しますよ」
うん。なんとなくを分かったよ。フイリッシアは、怖いんだ。
この先、レイモンドと歩いてく未来が。
それで、周りに当たり散らしてるってことだね。
とりあえず隊長の横に戻った。完全に騎士の仕事から逸脱してたので、怒られるかと思ったけど、スルーされてしまった。
王宮の王族専用のサロンで、レイモンドを待つ。
侍女はまだ慌ただしくしてたけど、私たち騎士はすることが無い。
いや、護衛してるけど。
私は、フイリッシアからの願いで、すぐ後ろに立ってた。
程なくして、レイモンドと……サイラスがやってくる。
侍女たちが、慌てて席を作ってるところを見ると、予定外だったようだ。
サイラスも今日は騎士団の制服を着てない。完全プライベートだ。
って言うか、あんた騎士団の采配は? 特別任務中だよね。
レイモンドは、フイリッシアの後ろにいる私に一瞬『え?』って顔したけど、私の方はスルーした。
だって、男装してるし、今は近衛騎士 だし。
「フイリッシア嬢。今日はまた雰囲気が変わって……レイモンドも焦ってるんじゃないか?」
サイラスの方が、取りなしてる。
まぁ、自分が口説き文句言うわけにはいかないものね。
レイモンドの方は、素っ気なくフイリッシアの方を見て。ふっと視線をそらしてしまった。
ちょっと、その態度はないんじゃ無いかね。
チラっとフイリッシアを見たら、泣きそうな顔になっていた。
レイモンドたちからは、見えない位置で背中を撫でてあげる。
かわいそうに、毎回こんな感じなのかな。
内心、めちゃくちゃムカついてたら。私の方に話題が来た。
「君は、見ない顔だが?」
サイラスが、話を振ってくる。
確かにね、騎士団経由で上がってくる近衛をサイラスが知らないって言うのはあり得ない。
部下を下っ端まで知ってるとは、言わないだろうけど。
団長の推薦状いるもんね。って言うのは、建前で。
知ってるよね、あんた。いたもんね、あの話し合いの時。メインで。
ここで、正体ばらす気かそれとも……。
「宰相から預かっている、子どもです。職場体験をしたいというので。こちらでしたら、形ばかりの護衛でかまわないでしょう?」
隊長が引き取って言ってくれた。
「っていうか、リ……ポートフェン殿だよね」
仕事中、男装中って空気読んでくれたか。
「はい。団長、お久しぶりです」
「オールストン隊長。こいつ、まだ戦闘能力皆無なんで、何かあったら庇ってやってくれ」
サイラスからそう言われた途端、オールストン隊長は勢いよく頭を下げた。
「申し訳ありません」
「なにか、あったのか?」
サイラスが怪訝そうな顔になった。
「何でも無いですよ。想定内のことです」
口のところで人差し指一本立てる。
今は、何も訊くな。私の性別を正しく知ったら、オールストン隊長が憤死する。
なんか、クランベリー公の抗議とか抗議文とかきて、アランは大変だったみたいだけど。
「ん~もう。これじゃ無いって言ってるでしょう? リボンなんて子どもっぽいもの」
朝の支度が気に入らないみたいで。
フイリッシアが侍女たちに向かってかんしゃくまわしてる。ドレス選びは私たち近衛騎士は、さすがに入れなかったけど、時間がかかってたから、多分こんな感じだったのだろう。
ジークフリートルートのエイリーンが、悪役令嬢どころか人格者だっだので油断してたが、こっちはガチのワガママ王女だったか……。
私は横に立ってる隊長に小声で訊いてみる。
「今日、何かあるんですか?」
「仕事中の私語は厳禁だ」
「すみません」
怒られちゃった。
「今日、婚約者殿がいらっしゃる」
へ?
隊長の方を向いたら、知らん顔で前を向いてた。
ふ~む。どうせ、子どもなんだから、子どもっぽくしてても良いんじゃ無いかと思うけど。
ドレスはちょっと背伸びしちゃってるから……。
私は、スッと前に出て近くにいた侍女に耳打ちをする。
そうしてから、私はフイリッシアの後ろに立った。
「フイリッシア殿下。どうなさいました? せっかくの可愛らしいお顔が台無しですよ」
「ふん。昨夜もお兄様とお楽しみだったんじゃないの?」
意味分かって言ってるのかな? ってか、あれ以来アランとは会えてないからね。
「お姫様が、ずいぶんと下世話な言葉を知っていらっしゃる」
スルーして、先ほど耳打ちした侍女と二人で作業に入る。
リボンを髪に編み込みルーズに上げて仕上げた。おくれ髪も色っぽく見えるように計算済み。
好きな人のために、頑張って背伸びした女の子の完成。
フイリッシアは、鏡の中の自分に驚いてるようだった。
なるほどね。
あっちはどうか知らないが、フイリッシアの方はレイモンドの事好きなんだ。
「とても良くお似合いですよ。これなら、婚約者様にも気に入って頂けるでしょう」
私はにこやかに太鼓判を押した。
「所詮、政略結婚だもの」
ありゃ、うつむいてしまった。相手がサイラスだったら、例え好きで無くても、自分の婚約者にこんな顔させないだろうに。
レイモンドの奴、何やってんだ。
「しゃんと、顔をお上げください。せっかく可愛らしいのにもったいない」
「あなた、生意気だわ」
「気に入らないなら、一言『不快だわ。あなたなんていらない』と言えば良いのですよ。私の家は、子爵家です。あなたの一言で、簡単に吹き飛ぶ命なのですから」
そう、ここの侍女たちも大差ない。
子爵か男爵の娘たちだ。
かんしゃくで済んでるうちは良いけど……うっかり言葉選びを間違えたら、本気で怒ったように周りから見えたら。
王族に対する不敬罪での、処刑が待ってる。
「ごめんなさい」
あれ? 謝った。っていうか、誰もそういうこと教えてなかったんかい。
「あの……付いてきてくれるかしら」
「護衛ですので、フイリッシア殿下が行かれるところでしたら、喜んでお供致しますよ」
うん。なんとなくを分かったよ。フイリッシアは、怖いんだ。
この先、レイモンドと歩いてく未来が。
それで、周りに当たり散らしてるってことだね。
とりあえず隊長の横に戻った。完全に騎士の仕事から逸脱してたので、怒られるかと思ったけど、スルーされてしまった。
王宮の王族専用のサロンで、レイモンドを待つ。
侍女はまだ慌ただしくしてたけど、私たち騎士はすることが無い。
いや、護衛してるけど。
私は、フイリッシアからの願いで、すぐ後ろに立ってた。
程なくして、レイモンドと……サイラスがやってくる。
侍女たちが、慌てて席を作ってるところを見ると、予定外だったようだ。
サイラスも今日は騎士団の制服を着てない。完全プライベートだ。
って言うか、あんた騎士団の采配は? 特別任務中だよね。
レイモンドは、フイリッシアの後ろにいる私に一瞬『え?』って顔したけど、私の方はスルーした。
だって、男装してるし、今は
「フイリッシア嬢。今日はまた雰囲気が変わって……レイモンドも焦ってるんじゃないか?」
サイラスの方が、取りなしてる。
まぁ、自分が口説き文句言うわけにはいかないものね。
レイモンドの方は、素っ気なくフイリッシアの方を見て。ふっと視線をそらしてしまった。
ちょっと、その態度はないんじゃ無いかね。
チラっとフイリッシアを見たら、泣きそうな顔になっていた。
レイモンドたちからは、見えない位置で背中を撫でてあげる。
かわいそうに、毎回こんな感じなのかな。
内心、めちゃくちゃムカついてたら。私の方に話題が来た。
「君は、見ない顔だが?」
サイラスが、話を振ってくる。
確かにね、騎士団経由で上がってくる近衛をサイラスが知らないって言うのはあり得ない。
部下を下っ端まで知ってるとは、言わないだろうけど。
団長の推薦状いるもんね。って言うのは、建前で。
知ってるよね、あんた。いたもんね、あの話し合いの時。メインで。
ここで、正体ばらす気かそれとも……。
「宰相から預かっている、子どもです。職場体験をしたいというので。こちらでしたら、形ばかりの護衛でかまわないでしょう?」
隊長が引き取って言ってくれた。
「っていうか、リ……ポートフェン殿だよね」
仕事中、男装中って空気読んでくれたか。
「はい。団長、お久しぶりです」
「オールストン隊長。こいつ、まだ戦闘能力皆無なんで、何かあったら庇ってやってくれ」
サイラスからそう言われた途端、オールストン隊長は勢いよく頭を下げた。
「申し訳ありません」
「なにか、あったのか?」
サイラスが怪訝そうな顔になった。
「何でも無いですよ。想定内のことです」
口のところで人差し指一本立てる。
今は、何も訊くな。私の性別を正しく知ったら、オールストン隊長が憤死する。