第52話 アル兄様の説得後、セドリックと廊下で

文字数 1,326文字

 兄の部屋を出て、セドリックと男子寮の廊下を歩く。
 まだ、女性の面会可能時間なのに人気が無い。前回のアラン同様、危ないからと言って、セドリックは女子寮までは護衛してくれるらしい。

「ごめんな」
 セドリックに後ろからそっと抱きしめられた。
「なんです? セドリック様」
「デュークの牢屋まで行って処分を告げた令嬢って、リナちゃんだったんだろ?」
 おや、噂にでもなってましたか。
 まぁ、牢番に口止めしてないし、公文書に私が牢屋まで来たことも残ってるから分かるか。

「そうですよ。それが国王の命令を覆す条件でしたから」
「ごめん。さっき、あんなこと言わせてしまって」
 そう言いながらセドリックは、後ろから私の肩に頭を乗せてくる。
「別に、セドリック様の立場ならそうするでしょう? 最初からアル兄様を自陣営に欲しがっていたのだから。油断した私が悪いんです」

 そう、油断。
 ()()()()意味でも、セドリックを信用してしまっていた。
 ダメだなぁ。ちょっと親しくなって優しくされたら、すぐに勘違いしてしまう。
 我ながら、チョロイというか、お馬鹿というか、何とかならないものかしら。溜息が出る。

「デュークのこと、好きだった?」
 ん? すごい話題転換ですね。壊れたか? セドリック。
「友人だと思ってましたよ、私の方は。向こうにとっては、利用しやすいただの小娘だったかも知れませんが」
 今となっては、確かめるすべも無い。
「ふ~ん。答えてくれるんだ」
 いつもの感じじゃなく、なんか子どもっぽい口調。甘えてる?
 いや、本当にどうした? セドリック。何かあった?
「どうしたの?」
 なるべく優しくお姉さんっぽく聞いて、肩に乗ってる頭をよしよしって感じで、なでてみる。

 その途端、セドリックがガバッと跳ね起きた。
 セドリックが私の両肩持ってなかったら、前に転けてたよ、私。
「お……まっ、なんで、いつもそんな」
「セドリック様?」
 えらくうろたえてる。顔、真っ赤だ。
 熱でもあるのかと、額に手を当てようとしたら、逃げた。

 へ? 護衛は?
「職務怠慢ですね。宰相に報告します」
「ライラ……いたの」
「護衛ですから」
「セドリック様の……今の何?」
 分かるわけないと思いつつ聞いてみる。
「途中までは計算で……後は不意打ち喰らって逃げたってところでしょうか。未熟ですね。彼も警戒対象に入れますか?」
 その問いに、私は首を横に振った。

「もしかしたら、セドリック様のこと嫌い?」
「考えたことありませんね、仕事ですから。好きになれというのなら、なりますが」
 私の問いに、ライラは考えることなく即答した。
「仕事に支障が無いなら良いわよ。どちらでも」
 仕事に私情を挟まないのは好感もてる。

「それより、勝手にこの辺ウロウロしてて大丈夫なの?」
 侍女は、学生じゃ無いのでこの中でも身分に縛られている。
 万が一、ライラが貴族の子女で無ければ、王族の目に触れる場所にいたら不敬に当たるんだけど。
「大丈夫です。私自身、爵位を持ってますから」
 ふ~ん、爵位を……ね。ってか、性別、女だよね?
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