第26話 アラン殿下からの束縛 そして、日常へ
文字数 1,546文字
事件があって、数か月後。安定して結界が開いたことが確認された。
そして、グルタニカ王国からの使節団は無事に帰国の途に就くことが出来た。
結界については、まだまだ調査が必要だという事で、宮廷魔道士たちが調査を始めている。
アボット侯爵が、隠し持っていたもう一冊のリーン・ポートの事が載っている本。
まだ結界が崩れないと信じられていた前世代の王位継承時、この本の存在が分かると、現国王とリナの父、ポートフェン子爵がさっさと実行してしまうだろうと思い隠していたのだという。
結界の維持が関係なくなってしまった今世代。
私は、約束通りリーン・ポートの書き換えを行う。
これで私はアラン殿下に事実上、縛られてしまうけれど、ジークフリート殿下が王位を継承できることが確定する。
「なんか、面白く無いな」
セドリックは、ブツブツと文句を言っているけど。
あなただって、アラン殿下に忠誠を誓っているのだから、良いじゃない。
これで、私はグルタニカ王国に行けなくなるのだから。
「リナ。僕と共にいるって願ってね」
「はい。アラン殿下」
う~ん。確かにね、愛の誓いみたいだわ。
もともと、私はグルタニカ王国に行くつもりは無かった。
先日、ジークフリート殿下には、私がいなくても何とかなりますと言ったけど。
そうなるには、まだまだやり残したことが多すぎる。
アラン殿下も、私がこの国に残る以上の事は望まないだろうし。
アラン殿下が、私の首元にあるリーン・ポートに手で触れる。
すでにアラン殿下に反応して、暖かくなっていた。
アラン殿下は、リーン・ポートに口付けをする。
2人とも、共にあると願いを込めて……。
その瞬間、ぱぁっと光を放ち。リーン・ポートは、また元に戻った。
もう、アラン殿下が触っても何の変化も見られない。
ただ、リーン・ポートに浮かんでいる魔法陣の形が変わっていた。
「せ……成功したのかな?」
アラン殿下が訊いてくる。
私は本を読んで、変化後の魔法陣と自分のリーン・ポートの魔法陣を見比べてみた。
「大丈夫だと思います。本と魔法陣が同じ形ですし。これで交渉成立ですね」
私は、ホッとしてそう言った。
アラン殿下もジークフリート殿下も納得したように返事をしている。
私は、部屋の隅で待機していた夫、セドリックの下へ戻った。
本当はね。気付いていたの。
使節団を暗殺した時点で、私はグルタニカ王国に渡らなければならなかった。
あの国が、暴走を始めたら、近隣諸国はのみならず、イングラデシア王国にも多大な被害が及ぶ。
そうならないようにするには外側からでは無く、内側から止めるしかない。
だから私からの返事がどうであれ、殿下たちは使節団は殺せなかった。
でも、これでジークフリート殿下がリーン・ポートに殺されることは無くなったから、良かったのだと思う。
それに…………。
それにね。誰かに協力に縛ってもらわなかったら、私はこの国が落ち着いた後、グルタニカ王国に渡る決意をしてしまうかもしれない。
そうして、少しずつ厳しい現実を感じながら、イングラデシア王国の日常が始まる。
結界が壊れてしまった今、しなければならない事は山積みだ。
フランシス殿下やキースたちがいても、ポステニア王国を相手にしながら、グルタニカ国内での軍事クーデターを成功させることは出来ないかもしれない。
そうなったら、世界を巻き込む大戦が始まってしまう。
そんな狂った時代に、いつまで我が国は無関係でいられるのだろう。
たわいないことで笑い合える世界が、いつまでも続いてくれたら良いのに……。
おしまい
ここまで、読んで頂いてありがとうございます。
感謝しか、ありません。
そして、グルタニカ王国からの使節団は無事に帰国の途に就くことが出来た。
結界については、まだまだ調査が必要だという事で、宮廷魔道士たちが調査を始めている。
アボット侯爵が、隠し持っていたもう一冊のリーン・ポートの事が載っている本。
まだ結界が崩れないと信じられていた前世代の王位継承時、この本の存在が分かると、現国王とリナの父、ポートフェン子爵がさっさと実行してしまうだろうと思い隠していたのだという。
結界の維持が関係なくなってしまった今世代。
私は、約束通りリーン・ポートの書き換えを行う。
これで私はアラン殿下に事実上、縛られてしまうけれど、ジークフリート殿下が王位を継承できることが確定する。
「なんか、面白く無いな」
セドリックは、ブツブツと文句を言っているけど。
あなただって、アラン殿下に忠誠を誓っているのだから、良いじゃない。
これで、私はグルタニカ王国に行けなくなるのだから。
「リナ。僕と共にいるって願ってね」
「はい。アラン殿下」
う~ん。確かにね、愛の誓いみたいだわ。
もともと、私はグルタニカ王国に行くつもりは無かった。
先日、ジークフリート殿下には、私がいなくても何とかなりますと言ったけど。
そうなるには、まだまだやり残したことが多すぎる。
アラン殿下も、私がこの国に残る以上の事は望まないだろうし。
アラン殿下が、私の首元にあるリーン・ポートに手で触れる。
すでにアラン殿下に反応して、暖かくなっていた。
アラン殿下は、リーン・ポートに口付けをする。
2人とも、共にあると願いを込めて……。
その瞬間、ぱぁっと光を放ち。リーン・ポートは、また元に戻った。
もう、アラン殿下が触っても何の変化も見られない。
ただ、リーン・ポートに浮かんでいる魔法陣の形が変わっていた。
「せ……成功したのかな?」
アラン殿下が訊いてくる。
私は本を読んで、変化後の魔法陣と自分のリーン・ポートの魔法陣を見比べてみた。
「大丈夫だと思います。本と魔法陣が同じ形ですし。これで交渉成立ですね」
私は、ホッとしてそう言った。
アラン殿下もジークフリート殿下も納得したように返事をしている。
私は、部屋の隅で待機していた夫、セドリックの下へ戻った。
本当はね。気付いていたの。
使節団を暗殺した時点で、私はグルタニカ王国に渡らなければならなかった。
あの国が、暴走を始めたら、近隣諸国はのみならず、イングラデシア王国にも多大な被害が及ぶ。
そうならないようにするには外側からでは無く、内側から止めるしかない。
だから私からの返事がどうであれ、殿下たちは使節団は殺せなかった。
でも、これでジークフリート殿下がリーン・ポートに殺されることは無くなったから、良かったのだと思う。
それに…………。
それにね。誰かに協力に縛ってもらわなかったら、私はこの国が落ち着いた後、グルタニカ王国に渡る決意をしてしまうかもしれない。
そうして、少しずつ厳しい現実を感じながら、イングラデシア王国の日常が始まる。
結界が壊れてしまった今、しなければならない事は山積みだ。
フランシス殿下やキースたちがいても、ポステニア王国を相手にしながら、グルタニカ国内での軍事クーデターを成功させることは出来ないかもしれない。
そうなったら、世界を巻き込む大戦が始まってしまう。
そんな狂った時代に、いつまで我が国は無関係でいられるのだろう。
たわいないことで笑い合える世界が、いつまでも続いてくれたら良いのに……。
おしまい
ここまで、読んで頂いてありがとうございます。
感謝しか、ありません。