第1話 過去からの手紙
文字数 1,211文字
親愛なる 吉岡 里奈 様
僕のこと覚えてる?
覚えてるよね、神部 悠人 だよ。
この手紙、日本語で書いてるから、誰かに見られても大丈夫だよ。
安心してくれ。
でもさ、まさかこっちの世界にきてまで、里奈に会えるとは思わなかった。
やっぱり、運命かな。
お前、突然死だったもんな。
会社から、何日も来てないから見に行ってくれって言われて。
最初に見つけたの、僕だったんだよ。
うん、ゲーム機はそっと、手から外してあげたからね。
あの、間抜けな死に様見たの、僕だけだから、安心して。
今は、キース・シャーウッドっていうんだ。
変な感じだろ? 一応、貴族だぜ。
里奈も、連れの感じからすると、貴族の令嬢なんだろ?
っていうか、何、飲食店で働いてるんだよ、こっちまで来てバイトか?
大学時代は、一緒にやったけどさ。
歳は、お前、子どもに見えたけど、いくつだ?
あんま、離れてたらやばいよね。僕、今25歳なんだけどさ。
こっちには、まぁ仕事で来てるんだけどさ。
正式に来れることになったら、使節団には入れるから。
個人的に会おうぜ。
向こうの世界では、お互い忙しくて、すれ違いばっかだったけどさ。
里奈は営業。僕は研究で。お互いゲーマーだったしな。
こっちでは、一緒になれると良いな。
それじゃね。
あ、そうそう。あの翡翠、発信器付いてるから。
この世界、良いよね。電波飛んでないから、本当に遠くまで受信できて。
それじゃ、また。すぐに会えるからね。
神部悠人
王立学園の卒業式も終わり。あと数日で、王太子殿下の婚礼の儀が行われる予定なので、私は、ポートフェン子爵家に戻っていた。
自室で、騎士団の制服のズボンのポッケから、何か紙切れが落ちたな……って思って、拾って読んだのだけど……。
「は?」
何? この手紙。
あの時、翡翠が入った袋とは別に握らされた手紙、とっさにズボンに入れてたんだっけ。
きれいに、忘れてた。色々ありすぎて……。なんで、あいつがこの世界にいるの?
私も、ジークフリート王太子殿下たちの婚礼の儀のあと、結婚が決まっているのだけど。
相変わらず、マイペースだよね、悠人は。
大学生の頃からだから、よく交際が続いたと思う。
大学の研究室だよね、あの『お姫さん』って呼び名が根付いたの……。男所帯だからって言って。
セドリック達の、発想に似てるかもね。
私達は、入社後、同じ会社の同じ部署……研究開発部に所属してた。
その頃は、同棲もしていたけど、数年後の異動で里奈だけ営業部にまわされて、お互い時間が合わなくなって、同棲生活は私が出ていくという形で解消した。
悠人から、結婚しようと言われる頃には、もう里奈の方は会うのが辛くなっていた。
私、悠人に嫉妬してたんだよね。それが無かったら、結婚してたのかなぁ。
って、昔を思い出してる場合じゃない。どうしよう……。
僕のこと覚えてる?
覚えてるよね、
この手紙、日本語で書いてるから、誰かに見られても大丈夫だよ。
安心してくれ。
でもさ、まさかこっちの世界にきてまで、里奈に会えるとは思わなかった。
やっぱり、運命かな。
お前、突然死だったもんな。
会社から、何日も来てないから見に行ってくれって言われて。
最初に見つけたの、僕だったんだよ。
うん、ゲーム機はそっと、手から外してあげたからね。
あの、間抜けな死に様見たの、僕だけだから、安心して。
今は、キース・シャーウッドっていうんだ。
変な感じだろ? 一応、貴族だぜ。
里奈も、連れの感じからすると、貴族の令嬢なんだろ?
っていうか、何、飲食店で働いてるんだよ、こっちまで来てバイトか?
大学時代は、一緒にやったけどさ。
歳は、お前、子どもに見えたけど、いくつだ?
あんま、離れてたらやばいよね。僕、今25歳なんだけどさ。
こっちには、まぁ仕事で来てるんだけどさ。
正式に来れることになったら、使節団には入れるから。
個人的に会おうぜ。
向こうの世界では、お互い忙しくて、すれ違いばっかだったけどさ。
里奈は営業。僕は研究で。お互いゲーマーだったしな。
こっちでは、一緒になれると良いな。
それじゃね。
あ、そうそう。あの翡翠、発信器付いてるから。
この世界、良いよね。電波飛んでないから、本当に遠くまで受信できて。
それじゃ、また。すぐに会えるからね。
神部悠人
王立学園の卒業式も終わり。あと数日で、王太子殿下の婚礼の儀が行われる予定なので、私は、ポートフェン子爵家に戻っていた。
自室で、騎士団の制服のズボンのポッケから、何か紙切れが落ちたな……って思って、拾って読んだのだけど……。
「は?」
何? この手紙。
あの時、翡翠が入った袋とは別に握らされた手紙、とっさにズボンに入れてたんだっけ。
きれいに、忘れてた。色々ありすぎて……。なんで、あいつがこの世界にいるの?
私も、ジークフリート王太子殿下たちの婚礼の儀のあと、結婚が決まっているのだけど。
相変わらず、マイペースだよね、悠人は。
大学生の頃からだから、よく交際が続いたと思う。
大学の研究室だよね、あの『お姫さん』って呼び名が根付いたの……。男所帯だからって言って。
セドリック達の、発想に似てるかもね。
私達は、入社後、同じ会社の同じ部署……研究開発部に所属してた。
その頃は、同棲もしていたけど、数年後の異動で里奈だけ営業部にまわされて、お互い時間が合わなくなって、同棲生活は私が出ていくという形で解消した。
悠人から、結婚しようと言われる頃には、もう里奈の方は会うのが辛くなっていた。
私、悠人に嫉妬してたんだよね。それが無かったら、結婚してたのかなぁ。
って、昔を思い出してる場合じゃない。どうしよう……。