第51話

文字数 2,822文字


源三郎江戸日記51

その頃源三郎は料理屋で七衛門が連れてきた河岸の頭領と酒を飲んでいたのです、頭領が準備は総て整っています、11日に上がる河岸の魚は総て押さえました、上総よりアワビ伊豆より、
伊勢えび、予備に金目タイ、真鯛も用意してありますと言うので、世話になる無駄になっても総て買いあげるぞと言うと、前代見聞の用意で御座いますなと言うので、これは戦なのじあ、
よと言うと、

まさに戦でごいますなあと七衛門が言い、畳変えの材料と職人は集めてあります、一夜のうちに200畳の畳変えをやればこれも前代見聞にございますというので、みんなで一世一代の大、
勝負だ、老中が相手とならば不足はないと杯を重ねたのです、翌日は城中で料理の吟味をするというので長矩が準備して待っていると、吉良が入って来て、まずは伊達殿で御座るなと、
言うと伊達の家臣が膳の紙をどけると、

これは豪華に料理でござるなあ、ここまで豪華にしなくても良かったのじあがと言うと、何を申されますか今回は公方様のご母堂様の従一位任官がかかっておるとの事なればこの位すれ、
ば朝廷の覚えが良いのではと言うと、そうじあなと言って結構で御座るというと、次は浅野殿じあなと言うと、高岡が紙をどけるとなる程宜しいでは御座らんかと言うと、浅野がしかし、
これでは伊達殿と釣り合いが取れませぬと言って、

顔を引きつらせたので、吉良がしかしこれからでは材料は間に合いますまい、文句を言う者には言わせて置けばよろしかろうと言うと、高岡が殿に耳打ちすると何それをこれへと言うと、
新しい料理を並べて披露したのです、吉良がこれは又豪華なこれであれば、伊達殿と遜色ないでござる、しかし、浅野殿は二つも用意されたのかと聞くので、用心するのは我が家の家風、
にござりますと言うと、

勅使一向の材料となれば莫大なもの入りとなろう、裕福な浅野殿なら出来るわけだと皮肉を言って、用心とはそれがしの指南が間違った場合の用心でござるか、それなら指南など受けず、
勝手にやればよかろうと言うので、浅野がそのような事は思うてもおりませぬ、休息場所の畳は変えた方が良いのでしょうかと聞くと、そなたの好きなようにされるが良かろう、去年は、
どうであったかのうと言うと部屋を出て行ったのです、

屋敷にもどり又もや吉良は余をたぱかりおった、伊達には料理を事細かく指南したのであろう、それにしても源五衛門よう気がついた、しかし材料は大丈夫なのかと言うので、殿に黙っ、
て手配しております、このご接待が終りましたら腹を切りお詫びいたしますと言うと、何を言うかお前が腹を切る必要などない、よく気がついた褒めてとらすぞと言ったのです、長矩が、
吉良め次は何をするつもりだと言ったのです、

そして次の日源三郎が源信に伊達は畳変えをしたのかと聞くと、警戒厳重で近づく事はできませぬと言うのでまずいな遅くなると間に会わなくなる、しかし今言うても浅野家は取り合わな、
いだろと言うと、舅の役宅に行き孫太夫に伊達が畳変えをやったかわ分かりません、しかし、遅くなると間に会いませんやりましょうと言うと、それは無理で御座る、伊達がやったとわ、
かれば別ですがと言ので、

待つしかないかと言って、源信なんとか潜りこめないかと言うと、やってみますと言ったのです、お蝶が入って来て畳職人の頭をあたりましたところ、日本橋の畳屋の棟梁が昨日から、
帰っていないそうで、旗本屋敷の畳変えで職人をつれて行ったそうですというので、そいつがやっているのだろうと言うと、源信が帰って来て増上寺の別棟から職人が出てきました、
ので聞いたところ、

昨日より別棟の畳100畳を畳変えしたそうで、今しがた終ったそうですと言うので、よし準備しょう、孫太夫殿一刻の猶予もありません、誰かを見に行かせてください、浅野の家中な、
ら見る事が出来るでしょうと言うと、孫太夫が役宅を出て行き、みんながいる場所に行き誰か見に行くように言うと、安兵衛と磯貝が立ちあがり増上寺別棟に向かったのです、夕方、
に戻り、

間違いなく伊達は院使一向の休息所の畳100畳を取り替えたそうに御座るというので、高岡が殿に言うと、みんなの所にやって来て、またしても吉良の奴、これでおしまいじあなあと座、
り込んだのです、孫太夫が殿、畳変えの材料と畳職人20人を待機させています、これからかかれば4時で済むはずです、皆は増上寺に行き畳運びをやってくだされ、庭でやればいいので、
御座るというと、おうと返事をして屋敷を出て行ったのです、

殿が孫太夫よく準備しておいてくれたと言うので、明日が済めば残りは1日に御座います、今日は早くお休みくだされと言うと、みなが頑張っているのにわしが寝ている場合ではないだ、
ろうと言って、この用意周到さはそなたの娘婿村上源三郎の知恵であろう、あの者は柳沢様の高鍋藩改易の陰謀を防いでのだろう、良い武士を婿に持ったなあ、どうだ、これから一献杯、
を傾けたいが呼んではくれぬかと言ったのです、

殿はご存知でしたかと聞くと、参勤交代で江戸に登って公方様に拝謁した時に、老中の土屋様に別室に連れ行かれ、柳沢様の高鍋藩取り潰しの陰謀を聞いたのじあ、土屋様は藩士の村上、
源三郎なるものにていもなくひねられ取り潰しをあきらめたそうじあ、赤穂藩を気をつけなされと言うておられた、柳沢様の専横が御気に召さないので、教えてくれたのだろう、家老よ、
り、そなたの娘が嫁いていると聞いたのだよ、

そなたと安兵衛は源三郎と同門だそうだなと聞くので、ハイ、中々の腕の持ち主で目録持ちにございますと言って、それでは畳変えが終るまで殿の相手をしてもらいましょうと御座所、
を下がり、深川の料理屋に顔を出すと、これは舅殿畳職人は材料を持ち増上寺に向かいました、もう張替えをやっているでしょう、明日の夜明け前には終りますよと言うので、かたじけ、
ないと言って、

浅野の殿様は終るまで寝ないで待つと言われております、婿殿に酒の相手をしてくれまいかと言うておられますので、迎えに来たのじあがと言うので、わかりました同道いたしますが、
羽織、袴は着けませぬがと言うと、構いませんと言うので、料理屋を出て浅野藩の上屋敷に向かったのです、屋敷に着くと孫太夫が奥の御座所に案内したので、村上源三郎に御座いま、
す、

お召しによりお伺いいたしました、尚このようないでたちで申し訳御座いませんと言うと、構わんこちらに来て膳の前に座るが良い、足は崩してもかまわんぞ、わしも崩すとあぐらを、
かいたので、しからばごめんとあぐらをかいたのです、腰元が酌をするので飲み干し、今回は災難で御座りましたなあと言うと、そなたの知恵のお陰でここまでは切り抜けたが、思え、
ば、吉良への進物からこのような事になるとはと言うので、

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