第31話

文字数 2,779文字


源三郎江戸日記31

これはまいったなあと、酒を飲み干すと、私はダメですかと言うので、可愛い女子だが新婚だからなあと言うと、そうなんですか、お貰いになったばかりですか、それでは暫くは熱熱、
ですね、こんど帰られるまで待ちますと指を絡めたのです、さあ飲もうと言うと、女将がクス、クス笑うので、遠山が何がおかしいのだと聞くと、源三郎様には女難の相があります、
よと言うので、

そうかなと言うと、だって、私も、ボタンさんも、ひな菊さんも、一辺で好きになりましたものと言うと、そうか、沢山の女子に惚れられると困るわけだと遠山が言うと、女将もかと、
聞くので、一番好きなのは左衛門様ですと酌をすると、そうか、それは良かったと喜んだのです、時次郎が源三郎様は男からも惚れられるのですよ、主人の七衛門はべた惚れです、
あっしも惚れてやすがと言うので、

ボタンが村上の旦那は両刀づかいですかと聞くと、そうではなく、あっしなんかとも5分の、付き合いをしてくださるだろう、こんなお武家様はいませんよと言うので、ボタンがなる、
程、わたしの旦那にしておくのに丁度いいわと言ったのです、遠山がソロバン一つで人を動かせるという事には驚いたよというので、みんなはソロバンは商人が使うものと思ってい、
るだろう、

ところが学者がもっとも重宝しているんだよ、算術学者は難しい設問を説くには何回も計算しなければならないが、ソロバンを使えば簡単に計算できるんだよ、たとえばあのお月さん、
までの距離をはかる場合は夏のある日の同じ時刻に月をみて月までの線を引くのだ、と紙と筆を取り出して書き、それから182日たった日の同じ時刻に月をみて線を書くとこうなる、

一年は365日だから8月1日に最初見ると、それから182日は2月1日になると言うことはこの星を丁度反対方に行って見たのと同じなのだ、この星の円の周りは7万5千里なのだ、半分は、
の直径は約3分なので2万5千里となる、これを結ぶと三角になる、そこでこの月の真ん中からここに線を引くと、ここからここまでは1万2500里となるここの長さが分かっているので、
この月の角度と同じ線を1間はなれた所のこことここを計り、

次は2間のこことここを計り、その差を調べて、さつきの1万2500里になるまで計れば、この長さがわかるが、紙に書ききれないので、調べるとここの長さの比は等倍する事がわかるの、
で計算で割り出す事が出来る、しかし1万2500里になるまで計算するのは容易ではないが、ソロバンを使えば早くできるのさ、月までの距離を測っても仕方ないが、この方法を使えば山、
の高さを測る事が出来るし、

色んな物に応用できると言うわけだと言うと、みんなが目を丸くしています、女将が藩の学者様なのですかと聞くので、いいや、違うよソロバンがいかに役に立つかを知ってもらう為、
に話したまでだと言う、あのお月様までもは計れるのか、この星の裏側の同じところまでは1万2千500里もあるのかと言うので、江戸まておよそ400里だから行くには何十年かかる、
かなと言うと、

遠山が目からうろこがおちました、これはソロバンを習わなくてはと言うので、ただ習えでは気は進まないが、この話しをするとどうしても習いたくなるだろう、ひな菊の三味線より、
ず~と簡単だよと言うと、ひな菊がすご~い、本当にまっていますよと酌をしたのです、女将にも言い事教えよう、ここに山くじらの肉はあるかと聞くとありますがと言うので切って、
いない塊だがと言うので、

ありますと言うのでここにその塊、まな板、包丁、桶に塩を手のひら二つに砂糖手のひら二つだ、無いなら求めてまいれと一両だすと、こんなにいりませんよと部屋を出て行ったので、
す、何を作るんですかと聞くので、西洋ではハムと言うているそうだと言うと、美味しいのですかとボタンが聞くので、そのまま食べられるので酒の肴には最高だよと言うと、女将と、
女中が運んできたので、

女将にタスキを借りて縛り、まず肉をこの位厚切りに切るのさ、次に桶に塩と砂糖を半分づつ入れてかき混ぜる、この中にこの切ったものをいれるのだ、これで3日置くと中にしみ込、
と言うと、塩辛くなりますよと言うので、そうだ、これは肉が腐らなくするためただよ、3日達たら取り出して、塩と砂糖を洗い流し、鍋にいれてゆっく2時ほど煮詰めて塩抜きをする、
と塩が抜ける、

お湯切りをしてそのままでも、焼いても良いが、そのままのほうが美味いぞ、少し塩が残るので日陰の涼しい所におけば、夏でも日保ちする、右衛門3日後に来て食してみろ、女将名物、
になり、わんさとお客が来るぞと言うと、ありがとう御座います、どんな味か楽しみですと、道具と桶をもって行ったのです、料理も出来るんですね、包丁さばきも大したもんですと、
時次郎が言うので、

武士が包丁を握ってはいけない事はない、賄い方は武士だが包丁で奉公しているわけだ、このように刀だけではなく、包丁、ソロバン、筆でも奉公できるのだ、えらそうに言う奴ほど何、
の役にもたたんのさ、戦になれば一番先に逃げるのだろう、一芸は百芸に通じると言うだろう、町人が剣術を習ってもちょっともおかしくない、町人の子供に習わせれば礼儀が正しくな、
る、ついでに読み書き、ソロバンを教えれば、

生きていくのに役立つ、剣術は戦で戦う為の剣術など教えなくていい、身を守るためだ、心得ずあれば相手もむやみに刀は向けないだろう、その辺に落ちている棒切れでも役に立つさ、
相手が凄腕ならさつさと逃げればよい、謝っても切られるのが落ちだ、少し習えば相手が強いか弱いかすぐにわかるもんだと言うと、時次郎がそうですね浪人さんに頼んで、町人相手、
の剣術と読み書き、ソロバンを教える道場も作ってみます、

女子も入門を許すようにすればよい、女将は昼は暇だろうから、ソロバンの教授方をやってもらえば良い、高鍋藩は領民こぞって読み書き、ソロバンができれば、外に出て大成する人も、
沢山でるだろうと言うと、ボタンがお武家が嫌がりますよと言うので、剣術道場の看板ではなく、読み書き、ソロバン、礼儀作法道場とすればいいではないか、その中で剣術も教えるの、
さと言うと、なる程、

それなら文句も言えませんねと言うので、浪人は食えないので上方や江戸に行きさらに悲惨な目にあうのだよと言うと、幕府が藩を潰してあふれた浪人救済にもなるわけだと遠山が言う、
ので、みんなが高鍋に来たくなり、人が増えると、商いが繁盛して冥加金も増えて、藩財政は豊かになり、一石三丁だなと言うと、藩の為にもなるのか、源三郎おまえは凄い、それが、
わかっている殿も大したもんだと酒を飲み干したのです、

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