第85話

文字数 2,831文字


源三郎江戸日記85

脇坂様はえらい赤穂びいきなんやそうどす、浅野家再興をやかましく幕府に言うておいでやそうで、堂上方も大分赤穂びいきになって公方様に働きかけているそうどすえ、そやさか、
い討ち入りなんか出来やしませんどすやろと言ったのです、そうか、堂上方もなあ、それは大石様の人徳だろうと言うと、みなはん、討ち入りなんかやめはって何処かに仕官なされ、
ばいいのに、

大石様は熊本の細川藩、仙台の伊達藩、加賀の前田藩からもお誘いがあるのだそうどすが、お断りなされたとか、勿体ないどすなと言うので、どうして、そんな事知っているのかと、
聞くと、京都の町では噂で有名どすえ、料理屋の女将が会っているところを見たそうどすと言ったのです、それではごゆっくりと言って部屋を出て行ったのです、大高が上がって来、
たのでその話をすると、

そうか江戸では何も聞こえてこないのでわからんが、各藩とも幕府に遠慮して江戸では誘っていないのだろう、多数の赤穂元藩士が他家に仕官しているのかも知れんな、潔い城明け、
渡しが良い印象を与えているのかも知れん、しかし、我々が討ち入りに成功すると、一転卑怯者呼ばわりされて仕官もパアになる恐れがある、大石様はそれも恐れているんだなと、
和衛門が酒を飲み干したのです、

大高がみんなを脱命させたいのなら、何故窮乏な物にと200両も渡したのだ、そのままにして時を稼げば窮乏のあまり、脱命するのではというと、いや、そうなると益々一花咲かせて、
死にたいと思い、こじきになっても討ち入りに参加しょうとするのが武士だな、だから、すこし裕福にして討ち入るのがばかばかしいと思わせる為だろうと言うので、何と奥深い読、
みなのだと唸ったのです、

しかし大高殿は父上の200石の内わずか30石しか相続を許されなかった、義理も無いと思うのだがなぜ1党に加わられるのだと聞くと、恥ずかしい話で御座るが父は他の家臣の妻女に、
手をつけたので御座る、本来なら切腹で御座るが大石殿が殿に許してくださる、ようにとりなして下されたので御座る、その妻女は離縁となり実家に引き取られたので御座る、

本来なら不義密通で主人に成敗されても仕方ないところだったが、お腹に父上の子供を身ごもっていた為に許されたので御座る、その妻女は男の子を生んだ後自害して果て、大高家、
には男がいなかったので生まれた子を引き取り嫡男としたのです、その後父はお詫びに切腹して果てて、遺言に家禄200石の内100石を離縁された家に渡し、70石を自害した妻女の、
実家に渡して、

私しには30石を相続させて欲しいと書いてあったそうなのです、大石様が骨を折ってくださり、それが許されたのです、母は文句一つ言わず私を育ててくれたのです、そんな訳で、
大石様に義理があるのです、私には妻と10才の男と13才の女子がいます、大石様は家禄の低い私に色々役目をくださり、その役目料が50石ほどあり、家族が暮らせたのですという、
ので、

そうで御座ったか、人には色々あるのですね、家族を守る為にも是非討ち入りは成功させなければなりませんなと言うので、不和殿と同じに御座りますと笑ったのです、失礼ついで、
に尋ねますが、貴殿の本当の母親に他人の妻女と、知りながら手をつけられたのですかと聞くので、実は許婚だったそうですが、上役から申し出があり、断れなかったそうなのです、

それで婚約を解消して嫁に行ったのだそうですが、嫁ぎ先の男は酒乱だったそうで、相当の暴力を受けていたそうなのです、実家の方では大石様に言って離別させてくれるように頼、
んでいたところだったそうです、しかしそれを見かねて父は相談を受けている内にそうなったと言うことですと話したので、それで大石様は父上を助けられた訳かと酒を飲み干し、
いらざる事を聞き申した、

お許しくだされと言うと、不和殿は下僕を切って断絶になったのは本当で御座るかと言うので、本当で御座ると言うと、なぜ切ったので御座るかと聞くと、我が家には先君から拝領、
した小太刀があったので御座るがそれが行方不明となり、調べた処城下の質屋に5両で質入されている事がわかり、請け出して質入したものは誰かと聞いたところ、我が家の下僕で、
安吉だと判明したのです、

家に帰ると安吉はおらず逃げたものと思い、5里はなれた実家に行き家に帰っているか聞いた処かえっていないとの事で、念の為納屋に入りいないか調べていたところいきなりカマで、
切りかかったのでよけて切り倒した処安吉の父親だったのです、慌てて抱き起こしたが事切れており、母屋に戻りなぜ安吉はそんな事したのだと聞くと、妹が女郎屋に売られたので、
取り返しに行ったと言うので、

急ぎ城下の女郎屋に行き行方を探したが妹と一緒に逃げた後で何処に行ったかはわからないとの事だったので御座る、目付けに届けを出して、安吉の妻女には見舞金を渡したので、
御座る、殿は安吉本人ではなくその父親を殺害した事と、簡単に持ち出せる場所においたのも失態だとして、切腹になるところを大石殿がとりなして断絶のみで済んだので御座る、

大石殿が退散する時に50両の路銀を渡してくれたのです、内儀と子供を連れて江戸に出て仕官の口を探していたので御座るが、仕官できずあの事件を知り国元に立ち返り1党に加わ、
り殉死しょうとしたのですが、大石様に断られ江戸に戻ったのです、江戸で殉死に加わらなかった安兵衛を訪ねて一緒に仇を討ちたいというと、大石様は殉死せずに討ち入るつもり、
だと聞かされて、

大石様が江戸に下られるのを待ち、吉田忠座衛門殿に帰参の許しを大石様にとりなししてもらえるように頼み、面会して許して貰ったので御座ると言うと、そうで御座ったか、して、
その安吉と妹はと聞くと、赤穂の実家に戻り田畑を耕しているそうです、藩に出頭したが父親が身代わりに殺害されているのでお咎めなしと言う事になったそうです、良かったで、
御座る、

働き手を失って妻女は、困っていたのでしょうが、安吉と妹が戻り、それがしが渡した20両と、大石殿から見舞金30両を貰い、妹も女郎屋にいかなくて済んだそうで御座ると言った、
のです、今妻女と子供はと聞くと江戸の義姉の屋敷に奉公しています、恩を返すためにも討ち入りしなければならんのですといったのです、大高がおそらく1党に加わる方はそれなり、
の事情があるのでしょうと言うと、

大石様は総て見抜いておられるのやも知れませぬ、多分誰が残るかも総てわかっているのではないですかと言ったのです、大高がしかし不和殿の腕は凄いですな、6人をあっと言う間、
に倒すとはと言うので、刀を抜きお陰で歯はポロポロで御座る江戸に帰ったら研ぎに出さねばと言うと鞘にしまったのです、大石殿が話されていた村上源三郎殿はご存知ですかと大高、
が聞くと、

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