第89話

文字数 2,904文字


源三郎江戸日記89

勿論あり申すがなぜお手前に見せなければならんので御座るかというと、どちらが本物かを知る為に御座る、なんならそれがしが見せようか、さあ、返答はいかにと言うので、仕方御、
座らんお見せしましょうと言うと、立ち上がり奥に置いてあった盆を手に取りまえにおき、封書を渡したのです、垣見が手に取り、しからばごめんと中を取り出して開けると白紙であ、
る、

ヤツパリと思い包みなおし返そうと盆の横に置いた風呂敷の家紋を見ると、丸に違い鷹の羽(浅野鷹の羽)である、そうか大石が江戸に下っていると聞いたが、この男は大石内蔵助か、
わしが江戸に下るのを聞いて、わしの名を使こうているのかと気がつき、目を見ると何かを頼むような目つきである、垣見は一歩下がり、これは恐れ入りました、よんどころない事情、
によりお手前の名を騙りました、

お許しあれと頭を下げたので、いや、いや、色々ご事情もある事なれば、武士は相見たがいに御座る、分かってくださればいいので御座ると言うと、懐から封書を取り出し、これは偽、
の道中手形にござる、今となりましては不要にござれば、いかようにもご処分くだされと言って渡し、つつがない道中をお祈りいたしますると言うと部屋を出て行ったのです、

主人に何処かに寺はないかと聞くと、脇本陣にご逗留くだされと言うので、同じ名前が本陣と脇本陣にあるのはおかしいであろう、寺でよいのじあと言うので、それではわたくしが案内、
いたしますと言うと先頭をあ歩きすこし離れた慈眼寺と言うてらに行き、住職に訳をはなすと、それは難儀な事に御座いますなあ、こちらにと宿坊に案内したので垣見達はわらじを脱い、
だのです、

住職がまずは湯にお入りなされませ、酒、料理は本陣から届けて、くださるそうですと言うので、それぞれに湯に入りあがってくると、膳の用意がしてあり、酒を注ぎ杯を重ねたのです、
衛士の深沢がご用人様はなぜ糾弾されなかったのですかと聞くので、あ奴は大石内蔵助じあ、わしが江戸にくだっていると知って名前を使っているのじあ、これから江戸に下り吉良の首、
を取りに行くのじあろう、

その助太刀なれば名誉ではないかと言うと、そうで御座いましたかと言うので、道中手形は大石にくれてやったわと言うので、しかしそれがないと我々はと言うので、家紋と進物の中身、
をみれば分かるじあろう、宮家に役人が手を出すはずはないわと言うので、しかし日野家の行列が二つとはと言うので、先に行かせ後から付いていき、進物が多いので二つの行列だと言、
う事にすれば良い、

それにこの馳走は本陣に泊まったのと同じではないかと言うので、そうで御座いますなあと皆が言ったのです、本陣の主人が芸者3人を連れてやってきて、ご不便をおかけしまして済、
みませぬ、酒、肴、花代は私持ちで御座います、どうぞこころおきなくお楽しみくださいというと帰ったいったのです、白菊、菊奴、桜に御座いますと頭を下げて、席に着き酌をする、
ので、

垣見が飲み干すと、白菊がこれを垣見様から垣見様にお渡してくれとことづかりましたと渡すので、開けてみるとセンスの裏に墨絵ですずめが枝に止まり花をつついている絵が書いて、
あります、下には花魁が描いてあり、浮太夫と書いてあります、ほう見事な墨絵じあのう、浮太夫かと言うと、さき程のお礼と言うておられましたが、ご兄弟ですかと白菊が聞くの、
で、

まあ兄弟と言うより同志と言ったほうが良いかもなと笑ったのです、深沢がこの宿場でいきなり変名を使ったのには何か訳でもあるんでしょうかと聞くので、ここ尾張藩は親藩だ幕府、
に遠慮して大石に変名を使うように頼んだのだろう、陣屋の主人も承知の上と言う事だろうと言ったのです、わしらも年内は江戸に逗留するので面白いものが見られるやもしれん、この、
センスは日野様に献上しょう、

帰る頃は事は成就しているはずだ、大喜びになるであろうと言ったのです、そのころ大石達もご馳走になっていのです、吉田がうまく行きましたなというと、みなが応援してくれている、
ようなもんじあなあ、無様な格好は見せられんわけじあと酒を飲み干したのです、貝賀と大高がれでは町の様子を探ってきますと本陣を出て外に出て、大高が今日は別々に探ろうと分、
かれて、

それぞれ居酒屋に入り大高はほぼ中央の席に座わると、大男が厠から出て来て、何をするんだそこは俺の席だと言うので、何も置いてないがと言うと、これから頼むんだよ、サンピン、
二本ざしといえど容赦しないぞと言うので、武士に向かってサンピンとは勘弁ならんと刀に手をやって、いけない、こんな処で騒ぎを起こせばまずいと思い、手を話し、わかった、
席は譲ろうと言うと、

いまさら何を言やがると言うので、お前の飲み代はわしが持とうと言うと、そんな事で勘弁できるか表で勝負しろと言うので、それは出来んと言うと、それなら詫び状を書いてもらおう、
かそして俺の飲み代を払えと言うので、カ~と来ましたが、押さえて、懐から紙と筆を出して、詫び状を書いて2分銀と一緒に渡すと、おまえは本当に侍かと言って、受け取ったのです、
大高は店を出て頭の火照りを治す為に宿場を歩くと、

一人の侍が声をかけ大高源吾殿でござるな、よく辛抱された、大事の前の小事で御座ると言うので、お手前はと聞くと、尾張藩剣術指南役、柳生行部に御座る、領内を通行される護衛役、
で御座るよ、一献お付き合いくだされと言って小料理屋に案内したのです、行部は女将に酒と肴を頼み、風聞をお聞きに町にでなされたのかと言うので、そうで御座ると言うと、城下は、
お手前かたの討ち入りの話で持ちきりで御座るよと言うので、

お礼言上の江戸下りなれば討ち入りなどするはずは御座らぬというと、そうで御座ろう、いまさら討ち入っても幕府より厳罰がくだされるだけで、何の得にもなりもうさん、しかし武士、
として吉良は許せぬで御座るがと言うので、それがしもそう思いまするが、なんせ公方様の裁可なればどうする事も出来申さんと酒を飲み干すと、大高殿は俳諧にも通じておられると、
聞き子葉と言う名もお持ちだとか、

一句おきかせくだされと言うと、山をさくちからも折れて松の雪と行きたいところで御座ると言うので、心底はお分かり申す、わたしも江戸にいきますゆえ、江戸で一献飲みたいもの、
でござるなと笑い、剣の極意は切るにあらず刺すに御座るお忘れなきようにと行部が言うと、ご指南かたじけないと杯を重ねたのです、行部がそれがしは松平登之助様の剣の指南も、
やっており申す、

これは前の屋敷の見取り図にござる、松平登之助様が出入りの大工に書き写させたものと聞きますと渡すので、これは本所の吉良屋敷の絵図面で御座るかと聞くと、そうで御座る改築した、
そうで御座るが、そう大幅にには変わっておらんでしょう、進呈いたしますよってこれを見て打ち込む夢でもみてくだされと言うので、一人で打ち込む夢をみます、ありがたく頂戴いたし、
ますと受け取ったのです、

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