第32話

文字数 2,683文字


源三郎江戸日記32

女将が左衛門様感心ばかりしていないで、左衛門様も頑張ってくださいというと、そうだな源三郎に負けてはおられんな、何か勇気が沸いてきたぞと言うとので、女将が頼りにしてい、
すと酌をしたのです、ボタンがそれではもう一指しと言うと、女将が私が三味線を弾きましょうというと、それでは二人でやっこさんをやりますと言うと、女将が三味線を弾き歌い、
だすと、

ボタンとひな菊が踊ったのです、ひな菊の踊りも中々です、踊り終わると女将がおそまつ様でしたというので、なんの、なんの、大したものだと三人が手を叩いたのです、ボタンが、
村上の旦那も一つと言うので、人に見せられる芸ではないが、やるかと言うと、手ぬぐいを貸してくれと言って、女将から受け取り、この竹の箸置きを借りるぞと小刀で半分に切り、

角を丸めて、筆に墨をつけて目の周りと、鼻を黒く塗ったので、お武家様が何をするんですかと女将が驚くので、まあ見ておれと立ち上がり、尻のすそを上げて後ろにはさみ、ボタン、
盆を手にもって、ボタンどじょうすくいだ適当にあわせろというと、先ほどの箸置きを鼻に挟むと、みんなが笑い、ボタンの三味線に合わせてどじようすくいを踊り始めたのです、
その表情がこっけいで、

みんなが腹を抱えて大笑いしたのです、踊りが終り箸置きをはずすと、女将が置けに水を汲んできたので、顔を洗って手ぬぐいで拭くと、これは鼻がいたいのだよと言うと、再び皆、
が大笑いして拍手をしたのです、遠山が目を白黒してわしにはとても出来ないなと言うので、お前はやらんでいいよと言うと、何処でこんな踊りをと聞くので、医術で言う治療法の、
一つだと言うと、

どじょうすくいが治療になるのかと聞くので、江戸は火事の多いところで、深川の茶屋から火が出て燃え広がり、隣の小間物屋に火が移ったのだよ、そこの娘が逃げ遅れてあわやと、
言う時に、大工が水をかぶり火の中に入り娘を助け出したのだ、幸い隣2軒を焼いたところで風向きがかわり川のほうへ吹いたのでそこで火はとまったのだ、助け出された娘は手に、
少しの火傷で助かったのだが、

恐ろしい思いをしたのか声が出なくなり、喋る事が出来なくなったのだ、わしの知っている玄庵と言う医者に連れてこられたのだが、恐ろしい思いが頭から離れないのだろう、何か、
この娘が笑うような事を思い出せば、声が出るようになると言ったのだ、玄庵先生が何かないだろうかと言うので、料理屋で太鼓持ちがやっていた、どじょうすくいを思い出しあれ、
を見せれば、

あるいは笑うかもしれないと言うと、ハハハのハの声さえでれば後は自然に出ると言って、玄庵先生がわしに、やってくれと言うので、わしは出来んよ、太鼓持ちに頼もうというと、
これは医療の一つですぞ、医術を目指すのならやりなさいというので、太鼓持ちに教えてもらう事にして行ったら、すぐに出来るもんではないですよと言うので、お前の芸を真似、
するのは無理だろうが、

手と顔の動かし方だけで良いというと、教えたのでまねてやると、どうも上手くいかんので、鼻に焼き鳥の櫛を切って縦に入れて、目と鼻に墨を塗ると、その太鼓持ちが踊らなくて、
も十分おかしいですよと大笑いするので、教わったように踊ると、転げまわって大笑いしたのだよ、よしこれなら上手くいくぞと思い、玄庵先生のところに行き娘を連れてきてもらも
い、フスマに隠れて支度をして、

芸者に三味線を弾いてもらい、フスマを空けるとビックリした顔をして顔を引きつらせるのでまずいと思ったが、口は笑い顔のハの形をしているので、おかしいのかと気を取り直して、
踊ると、小さな声でハハと声が出たので、さらに続けるとついに、ハハハハハと笑ってうずくまったのだよ、絹と言う娘なんだが、お絹面白かったかと、顔をあげさせると、目と鼻か、
ら水を流し、

みないで恥ずかしいと言ったのだよ、大成功だと言うと、玄庵先生は笑いをこらえていたらしく、そこに転がって笑うのでお絹も一緒に大笑いしたというわけだ、顔を洗い、鼻から櫛、
を取り、これは鼻がいたいわと言うと、又思い出して大笑いしたのだよ、わしは自分の顔は見ていないので、さして面白くないがな、やったのはこれで二回目だと言うと、小間物屋は、
治療代払ったのかと遠山が聞くので、

それが50両だしたのだよ、玄庵先生は大喜びして凄い医術だと言って、私に渡すのでこんどから太鼓持ちに頼んでくれと言って、全額玄庵先生に渡し薬代にしてくれと言うと、これで、
朝鮮人参が沢山買えるので、大勢の人が助かると言ったのだよと話すと、なるほど、これを見て笑わない人等いませんよとボタン言って、こんど太鼓持ちに教えてあげよう、いっぱい、
座敷がかかるわと言うので、

その格好でやるのはボタンを座敷に呼んでくれたときだけと、太鼓持ちに言えばボタンも儲かるよと笑うと、そうですね、ひな菊あしたからは忙しくなるわよと喜んだのです、時次郎、
があっしは芸がなくてすみませんと言うので、教えてやろうと言うと、前をはだけて腹が出るようにしろと言うと、こうですかと言うので、腹にへのへのもへいじと書きマルで無囲み、

顔を手ぬぐいで隠して、腹を動かすと、顔が動くわけだ、これも面白いぞと言うと、ひな菊が三味線を弾き時次郎が動きながら、腹を動かすと皆が大笑いをしたのです、源三郎が上手、
い、上手いというと、益々調子にのり動きまわったのです、踊りおわると、そんなに面白かったですか、あっしは大して面白くありませんがと言うので、やつている本人はそうなんだ、
よと源三郎が言うと、

これをあっしの十八番にしていいですかと言うので、いいぞ、それで客ほいっぱい掴むのでと言うと、何と言う踊りですかと聞くので、その名の通りもへい爺さんの腹踊りと言う訳だ、
と言うと、女将が源三郎様は本当にお武家様ですかと言うので、正真正銘の150石取りの高鍋藩士だよというと、150石取りのお武家様のする事ではないですよ、奥方様が知れば卒等、
なさいますよと言うので、

奥には内緒に決まっているだろう、左衛門わかっているなと言うと、わかっており申すが、思い出すとおかしくてと言うので、お前は危ない我が家には来るなよと言ったのです、そこに、
女中の仲が入って来て、随分盛り上がっているようですが、木下の旦那がなぜ女将は顔をださんのだと機嫌が悪くて、参ってしまいますというので、勘定方の木下藤吉かと聞くと、ええ、
と言うので、

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