第8話

文字数 2,589文字


源三郎江戸日記8

それではわしは玄庵先生の元へと言うと、何か御用でもとお峰が言うので、江戸への帰り道に長崎に寄ろうと思つている、玄庵先生に南蛮の医療に詳しい長崎の医師への紹介状を書いて、
貰ってくると言って寮を出て深川の玄庵の治療所へ向ったのです、尋ねると奥へ弟子が通したので座敷に座り紹介状を頼むと、それなら杉田道庵先生がいいでしょうオランダ、エゲレス、
シナを始めルソン、シアム等の事情にも通じておられると言ったのです、

玄庵が私も行きたいのだが、患者をほうっていくわけにも参らんでのう、お会いになり色々聞いて教えてくだされと紹介状を渡したのです、お国に帰られるのかと聞くので、妻女を国の、
祖父、祖母に引き合わせに行くのですというと、妻女をお貰いになったのかそれはめでたい、それでは道中の薬を差し上げましょうといって、小さな籠に薬をいれて、効能は袋に書いて、
ありますと渡したので、

これはかたじけないと、財布を取り出すと、薬代は結構ですよ、これはお祝いと選別がわりですと言うので、それでは長崎で医術に役立つ物を仕入れてきましょうと言って、玄庵の家を、
出て行きつけの居酒屋にはいると、おみよがいらっしゃい、いつもの奴ねと言って、いわしにお銚子二本と親父に頼んだのです、同心の山田が入ってきて、祝言を終えたばかりの花婿が、
こんなところで酒を飲んでいていいんですかと言うと、

おみよがまあ、源三郎様は奥様をお貰いになったのですか、それでは今日はお祝いにお代は頂ませんと酌をして、ハイ山田様もと湯飲みに酒を注いだのです、改めてと乾杯すると、西国、
行きの目的は大体分かっているよ、実は三蔵は柳沢様の屋敷の外にだせない揉め事を治める手助けをして、金寸を貰っているのだが、小耳に挟んだところによると、黒田佐内と言う家来、
が今朝千葉道場の門弟二人と、

西国に向け出立したらしいのだ、柳沢様の領地は川越のはずだがと三蔵が不思議がっていた、明日はおぬしの藩の殿様がお国に参勤交代で帰られるのだろう、その本陣の逗留先を黒田に、
伝えていた見慣れない侍を屋敷で見たそうで、柳沢様の家来ではないとの事、その男は右耳の下にほくろがあったそうだ、おぬしに伝えてくれと三蔵が言ったので、根岸の寮で伝えよう、
としたが二人きりになれなかったので、

伝えそびれたわけだ、三蔵の手下がおぬしを深川で見かけたというので、ここに寄るのではないかと思って来たんだよと言ったのです、内密の話しだがどうも秋月藩にお家騒動を起こし、
改易に追い込もうとする動きがあるらしいのだ、藩を改易に追い込めば老中の手柄になるだろう、側用人から老中になったお方だ、点数稼ぎをして老中筆頭を狙っているのだろうと言う、
と、

又厄介な御仁に目をつけられたもんだな、飛ぶ鳥も落とすほどの権勢を誇る柳沢だからなあと言うので、自分からは手はださず、野党かあぶれ浪人に行列を襲わせ野党如きにやられると、
はと難癖をつけるつもりだろう、それを防ぐために行列について行くことになったのだと言うと、そうか道中気をつけて行かれよ、何かつかんだら飛脚にて手紙を書こう、三島、浜松、
清洲、京都、大阪の飛脚問屋に顔を出してみてくれと言うので、

かたじけないと返事したのです、それではそろそろ帰ろうと言って、おみよに勘定はと聞くと、今日はいいんですよ、浮気せず奥方様を大事にするんですよと言うので、肝にめいじよう、
と笑って店を出て根岸の寮に帰り、翌日は源三郎は浪人風、お峰は若侍風の姿をして西国に旅たったのです、途中は徒歩と馬を使うことにして、今日の逗留先の戸塚軸に向い戸塚宿で、
源信達に合流して様子を聞くと、

黒田たちは昨日戸塚宿に着きましたが、不審な動きは見受けられないとの事で、源信がここに源三郎様が逗留されている事は源一郎様にはお伝えしてあります、後で顔を出すと言わ、
れましたと言うので、同行の二人は何者だと聞くと、千葉道場の門人で山城と時田と言う浪人者です、かなりの使い手と聞きましたが、黒田の剣の腕はたいした事はないそうですと言、
ったのです、

湯に入り夕餉を食べてゆつくりしていると、源一郎が尋ねてきたので部屋に通すと、おう、お峰殿暫くでござった源三郎をよろしく頼むと言うので、こちらこそ宜しくお願いしますと、
挨拶したのです、道中は何事もなかったがと言うので、おそらく箱根峠あたりが危ないと思います、小田原宿から三島までは殿には籠でなく騎馬隊の中にお入りになり空籠にて箱根を、
超えたほうが安全ですというと、

なるほど、殿も籠の中ばかりでは窮屈だろう、さつそく手配しょうと言うので、供の中に右耳の下にほくろのある家臣はおりませんかと聞くと、右耳の下にほくろがある者と言えば、
山崎馬之助だ、勘定方だがこの者がどうしたのだと聞くので、黒田に行列の逗留先を教えていたそうにございます、おそらく大石一派の、黒田へのつなぎ役と、思われますというと、

大石一派には違いないがと言うので、この者に気づかれないように事は運んでくださいというと、騎馬隊には大石一派は入れていないので大丈夫だ、服装も警護の服装にしてもらう、
ので回りの者しか気づかないだろうと言って、それでは本陣に戻る、何かあれば知らせてくれと帰っていったのです、源信がよくその山崎と言う者が繋ぎ役とわかりましたねと聞、
くので、

町方の目明しが柳沢様の屋敷に出入りしているそうで、そこで見かけたそうだ、みなれない侍なので知らせてくれたのだと言うと、成る程源三郎様は草の者よりも長けた耳袋をお持ち、
ですなと言ったのてす、お蝶が黒田達は下田屋と言う旅籠に逗留しておりますと言うと、源信が私とお蝶もそこに逗留しており、動きがあればお知らせしますというので、おそらく、
小田原あたりで、

浪人達に接触するつもりだろう、これから町に出て居酒屋で町の様子をお峰と探ってこようと言うと、源信が私達も町にでますと言うと、旅籠を出て行ったのです、お峰に行こうと、
言ってつ連れ立って町に繰り出したのです、中々の賑わいをしています、一軒の大きめの居酒屋に入ると、旅人や地元の職人や人足達でにぎわっています、こ上がりにすわり女中に、
何か美味い肴はあるか聞くと、

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