第106話

文字数 2,693文字


源三郎江戸日記106

お峰が旦那様みたいな人を探してあげますよと言うと、お願いします、石高は低くとも宜しいですと言うので、源三郎が高鍋藩で探すとするか、物産方なら国許から大阪、江戸と回る、
機会も多いであろうと言うと、なるべく顔のいい男をお願いしますと言うので、兄の顔くらいではダメかと聞くと、兄上は父上と似ております、源一朗兄様は男前ですというので、
こいつ、

父上にこんど言うてやろうと言うと、構いませぬ、いつも顔はわしに似なくてよかつたなと言うておられますと笑うので、やつぱり、女子は男前が良いのか、お峰はどうなんじあと聞、
くと、当たり前ですと言うので、なぜわしを断らなかったのじあと言うと、親のいいつけには武家の娘は逆らえませぬと言うので、誰か思いを寄せていた者がいたのかと聞くと、ええ、
と言うので、

赤穂の者かと聞くと、目の前にいるでは、ありませぬかと言うので、何わしなのかと聞くと、旦那様もそこそこ男前ですよ、と言うので、そこそこかと笑って、酒を飲み干したのです、
お峰が源蔵様は男前ですね、と酌をするので、そうですか、そんな事言われた事はありませんよ、盗人の頭が男前では配下ににらみは聞きませぬというと、それでは兄上は向いており、
ませぬなあ、

何と言うてもまゆげが下がっておりますゆえとお律が笑ったのです、船は順調に進み大阪に着き荷を積み込み、その日のうちに出航して半日で赤穂沖につき、源蔵と別れ、上陸すると、
船は博多に向け出向したのです、馬を借りて三人は赤穂城下に行き旅籠にわらじをぬき、お峰とお律は城下の見物をするように言って、源三郎は城に向かつたのです、門番に上杉家、
家老村上源三郎に御座る、

脇坂淡路の守様に、お目通りしたいと言うと、知らせに行き、近習頭の山形四郎に御座る、殿の御前に案内いたしますと言うと、御座所に案内したのです、挨拶すると待っておったぞ、
上様より一万石の、加増をして頂いた、これで赤穂の塩田はわしの飛び地となる、赤穂には3万石で、森殿が移封されることにになり、来月この城を引き渡す、事になっておると言って、

浅野の旧家臣共は、多数この地にとどまっている者がいる、総勢50人ていどだ、それぞれ郷士として10石を与える、すでにいる百姓から、土地と塩田を取り上げるわけにはいかんので、
新しく、塩田と新田を開発しなければならぬが、我が脇坂藩には余禄がない、そこで、そこもとの知っておる玄海屋に頼みたい、のじあがと言うので、承知しております、1万両程用意、
出来ますと言うと、

新田は永大2分の年貢として、塩田の冥加金永大2分とするのではどうだと言うので、それで結構です、玄海屋は8分残った中から1分を貰い、後は塩の商いにて利を出します、さすれば、
7分が旧藩士に残り、石高は50石にはなるでしょう、郷士なれば土着できますので、討ち入らなかった者が世間の冷たい風にさらされても、ここにくれば身を寄せ合って生きていけます、
と言うと、

妙策じあ匠の守殿は残念な事じあったが、大石達が無念を晴らしてくれれて喜んでおられるだろう、しかし、赦免はない、遺児は気の毒な事じあのうと言うので、出来る限りり支援は、
いたしますと言うと、そなたも木徳な者じあのう、妻女がいくら今回討ち入った奥田孫太夫の娘とはいいえ、そこまでしなくともと言うので、無理な事はいたしませぬゆえご安心なさ、
れませと言うと、

今般米沢藩の家老になったそうじあが、奇縁じあな、何処も財政は大変じあろうが、何でも言うてくれ、できる事あらば手を貸すぞと言うので、ありがとう御座りますといったのです、
赤穂には見る場所はあまりないが、酒と魚は美味いぞゆつくりと堪能してくれ、わしは、これから龍野に戻らねばならぬ、塩田の事は天野屋が当地に来ているので聞くが良いと言うの、
でお願いするつもりに御座いますと言って御座所を下がり、

その足で天野屋に行き利兵衛に会うと、よく起こしなされたと座敷に案内するので座り、経緯を話すと、脇坂様から聞いております、本来ならば手前がやらなければならない事ですが、
今働いている者どもを放逐するわけにはまいりませぬ、新しい塩田開発には職人をお貸ししましょう、又5000両を供出します、見返りはいりませぬ、旧浅野様の家臣の方々への見舞、
い金としてお受け取りくださりませと言うので、

それはありがたい、一応10石の扶持は頂けるそうで、贅沢は出来ませぬが暮らしは何とかなるでしょう、早く塩田と新田を開発させましょう、新しい塩田は玄海屋が管理する事になり、
ますが、協力して商いを広げてくだされと言うと、赤穂の塩は江戸でも評判です、つくれば作る程なんぼでも売れます、上手くやらせてもらいますと言うので、宜しく頼みますと言、
うと、

承知しました、今日は一席設けましたと言うので、妻と、妹が一緒なればお気つかいなされますなと言うと、聞いております是非ご一緒にお出でくださりませ、席には旧浅野様家臣の、
赤穂でのまとめ役大野黒兵衛様もお呼びして置きますと言うので、承知すると、後で呼びにいかせますと言うので城下をあるいていると、お峰とお律がお帰りなさりませと言うので、
傍の居酒屋に入り、

酒と肴を注文して杯を重ね、脇坂様との話は終った、後はまとめ役の大野黒兵衛殿に話をするだけじあと言ったのです、城下はどうであつたと聞くと、何事もなかったみたいで、賑わ、
っております、瀬戸焼きもよい物がありましたので、買い求めましたとお律が言つたのです、ここは何が名物なんですかと言うので、聞くと、明石タコの酢の物と焼き物ですというの、
で頼むと、

もってきたので見てお峰がまあ可愛い、たこの赤ちゃんと言うと、いいえ、明石のタコは潮の流れの激しい所にすんでいますので、これ以上大きくならないのですよ、身がしまって、
美味しいですと言うので、三人が食べて、こりこりしていこれは美味い酒の肴によくあうなと言つたのです、旅籠に戻り湯に入り一服していると天野屋の番頭が向かえに来て料理屋、
に案内したので、

座敷に入ると大野黒兵衛にござります、討ち入りにも加わらず、面目次第を御座りませぬ、又討ち入りに加わわらなかった者達に一方ならぬお世話を頂きましてありがとう御座ります、
頭を下げるので、まあ、お手を上げてくだされと言って、加わるも忠義加わらないのも忠義に御座る、いずれにしても皆様方はこんご厳しい状況におかれます、幕府も片手落ちを裏で、
認めて、

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