第57話

文字数 2,842文字


源三郎江戸日記57

京都に滞在して2日目になり女将が勅使一向がお戻りになったそうです、江戸での騒ぎで柳沢様が同行されてミカドニお詫びするそうですと言うので、今何処におられるのだと聞くと、
伏見城にはいられたそうですといったのです、京の町屋にはお出ましにはならんのかと聞くと、江戸から登られたお偉い方は、祇園の月山と言う料亭に顔を出されるそうですと言った、
のです、

お詫び方々ご公方様の母堂様の従一位任官の催促に来たのであろう、しかし、関白近衛様は赤穂浅野家とは縁続きじあ、今回の事件でミカドが宣下なさるのを邪魔するな、柳沢様は、
確約を持たずに江戸には帰れないので困るだろうと言うと、又なにをなさるつもりでとお峰が聞くので、その手助けをして恩を着せるのさ、今後何かと役に立つだろうと言うと、

どうなさるおつもりでと聞くので、近衛公に会って大石殿の存念をお聞かせして、その手助けを柳沢様にさせるので、ミカドに宣下を進めて柳沢様に宣下の為の日取りの確約をするよ、
う頼むのさと言うと旦那様にお会いくださるかしらと言うので、お峰は赤穂藩江戸留守居役の娘でわしは婿じあ、大石様の存念をお知らせに来たといえば必ずお会いくださるというと、

大石様に叱られますというので、柳沢様を味方につける為なので文句は言われないよ、又近衛公には絶対に口外せぬように言うので、わしが来た事は他には漏れないよ、まずは柳沢様、
だなと文を書いて月山に持って行かせたのです、わしの名前が書いてあれば必ず迎えにくるよ、下地は出来ているからのうと言うと、天下の策士の出番と言うわけですねとお峰が酌を、
したのです、

お峰も一緒に行き別部屋で待っていてくれ、何かあれば駆けつければ良いというと、ハイ、わかりましたと返事したのです、程なく女将が柳沢様の使いが来ています、お武家様はいっ、
たいどなた様でと聞くので、友達みたいなもんだと言って、下におりていくと、これは村上殿、殿がお待ちかねですと言うので、妻も一緒じあがと言うと、籠は二つ用意してあります、
と言うので、

籠に乗り込み祇園に向かったのです、月山につき座敷に案内されたので部屋に入り座って、お久しい御座いますと言うと、奥方と一緒に京都見物かと聞くので、赤穂に行った帰りに、
御座いますと言うと、なぜ赤穂にと聞くので妻は元赤穂藩江戸留守居役、奥田孫太夫の娘にございます、孫太夫はそれがしの舅というわけです、そうか、それで得心いたした増上寺、
の畳を一晩で変えたのは源三郎の知恵であったかと頷いたのです、

言うておくが今回の赤穂藩改易はわしの指図ではないぞ、匠之守の殿中での刃傷によるものだと言うので、裏で伊達を煽り過剰な饗応をさせ、浅野の饗応の面子を潰させたのは誰で、
ございますか、所詮は柳沢様の指図だと言われますと言うと、源三郎は張本人を知っているのであろうと聞くので、勿論老中稲葉正通様でしょうというと、さすがじあ、しかし何の、
証拠もないがのうと言うので、

今回の即日切腹、改易も稲葉様がその発覚をおそれて公方様を煽り出させたと推察いたします、尚上杉家の正室は紀州徳川様の姫様であり、上杉家の綱紀様は吉良様のお子であります、
公方様が柳沢様に手心を加えるように言われたのでありましょう、それにより喧嘩両成敗ではなく片手落ちの裁きになったと言う事ですねと言うと、そこまで分かっておるのかと言っ、
て、

その筋書きを書いたのは稲葉じあ、わしは上様から突然、匠之守は即日切腹させよ、赤穂藩は改易する、吉良には手心を加えてくれと言われたのじあ、とりつく暇もなかった、稲葉、
めわしの知らぬところで根回ししておったというわけじあよと言うので、しかしその非難は柳沢様に集まり、してやったり、と稲葉様は喜んでいるわけですねと言うと、今頃は他の、
老中と祝杯を挙げておるわと言ったのです、

饗応役総元締めの柳沢様は、ミカドにお詫び方々ご母堂様の従一位任官の確約を取りにおいでになったわけですか、しかし、関白近衛公は浅野匠之守様とは縁続きにて、今回の事を、
怒っておられるので、確約は難しいで御座います、手ぶらで江戸に戻れば他の老中達が大喜びですねと言うと、まったく、お前は人の事だと思って笑いに来たわけではあるまいと言、
うので、

それがしがいい知恵を貸してあげますが、こちらも条件がありますと言うと、条件とはと聞くので、今後赤穂藩元家老のする事の邪魔をしないで頂きたいというと、ほう、大石は、
仇でも討つつもりかと聞くので、それは分かりませぬが手出しは一切無用に願いたいというと、従一位の確約がとれれば老中共の鼻を空かせる悪い取引ではないなと言うので書面、
での確約は不要で御座います、

しからば、これより近衛公に面談し宣下の日を確約するように頼みますと言うと、近衛公と面識があるのかと聞くので、いいえ、御座いませんが、赤穂で大石殿とは面談しており、
ます、その事を伝えれば必ず言う事を聞いてくれますが、今般近衛公の姫様が禁裏にお上がりになります、幕府より化粧量として2万石を贈呈してくだされ、ミカドもお喜びになり、
近衛公も一二もなく柳沢様に確約されますよと言うと、

もとより従一位をくだされれば、2万石はお礼に差し上げるつもりだ、なる程良策じあな、一石三丁と言うわけだ、ところで源三郎の望みはと聞くので、別に御座いませぬ、150石、
で十分に御座いますと言うと、あいかわらず欲のない奴じあ、大石一党には手はださん、他の老中が何かをすれば総て排除してやろう、従一位の件は頼むぞと言ったのです、

しからばごめんと席を立ち月山を出て近衛公の屋敷に向かったのです、用人が驚いた御仁ですなと言うので、お陰で助かった、あ奴のように知恵の回る奴はわが家臣にはおらんから、
のう、これで他の老中の鼻を明かす事ができ、公方様は老中格筆頭にしてくださり、加増してくださるだろう、源三郎様様だなと言うと、しかし徒党を組んでの敵討ちなど見逃して、
いいのですかと聞くと、

稲葉が筋書きを書いたのだ、そうなれば奴の余計な口出しでこうなったとして、罷免されるのは稲葉じあよと笑ったのです、源三郎は近衛家の衛士に大石の使いで参ったと取次ぎを、
頼むと、奥に通されたのです、近衛公が部屋に入り、おう大石の使いか、して大石は篭城して一戦まじえるのかと聞くので、それをやれば縁戚でつながる近衛様もとばっちりを受け、
て、

姫様の禁裏へお上がりにもさわりがあるやも知れません、今回の片手落ちは幕府の裁きです、赤穂藩士が一枚岩となって吉良邸に押し込み首をあげれば、暴徒にあらず敵討ちとなり、
もうす、民衆は喝采するでしょう、ここは一旦城は明け渡し、大学様の跡目相続を願い出ますが、幕府が聞き入れるはずはありませぬ、恐らく領地没収の上浅野本家にお預けになる、
でしょう、

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