第36話

文字数 2,719文字


源三郎江戸日記36

遠山と相談して色々特産を考えてくれと言ったのです、これで山はお前にまかせればいいな、後は魚貝類だな海まで行ってこようと言うと、馬に乗り蚊口浜に向かったのです、程なく、
着いたので馬を下りて、ここは遠浅になっており沖ではイワシ、アジ、カツオ、マグロが沢山いるんだよ、右の方の岩場は黒鯛、サザエ、アワビ、岩のりが取れると言うと、あそこに、
小屋があるわと言うで、

行くといい匂いがしています、海女たちがかまどの上に網をしき、その上、イカ、アジ、サザエ、が乗っていたのです、海女が食べるかねと言って串に刺したイカを渡すので受け取り、
二人で食べると醤油の香りがしてとても美味しいので、やはり取り立ては美味いというと、言葉が違うが何処から来なさったとと聞くので、江戸だと言うと、そらまあ遠いとこだがと、
言ったのです、

どつかで見たこつがあるがと言うので、お前はおまさだろう、ほれ源三郎だよと言うと、あれまあ、村上の若様ではないけ、大きくおなりになりなさいましたなあと言うので、おまさ、
ももういくつになったと聞くと、23になるがね、亭主も子供いるだがと言うので、これは妻のお峰だと言うと、嫁を貰いなさつただか、若衆姿の似合う綺麗な奥方様だがね、今網本を、
呼んでくるだと言って小屋を出て行ったのです、

源三郎様と同じくらいの男が富三郎です、ようお戻りなされたというので、元気そうだな、お前が網本かと聞くと、いや、おとっさんが網本だと言うので、これは妻のお峰だと言うと、
富三郎です源三郎様とは子供の頃よく遊びました、水練の達人ですよと言うので、そうでしたか宜しくお願いしますよと言ったのです、お峰は泳げるのかと聞くと、水練の訓練は受け、
ていますと言うので、

あの甲冑をつけて泳ぐ立ち泳ぎだな、もっと速く泳げるのを教えてやろう、海女の服を借りてあの小屋で着替えて来いというと、ハイと返事して小屋に入ったのです、源三郎は着物、
を脱ぎ、下帯一枚になり待っていると、お峰が海女の格好で出て来たので、それでは海に入る前に、手と足をならすのだと言って動かしたのです、富三郎が奥方様はこんなに色が白、
いのに、

日焼けしますよと言うと、それでも旦那様が良いと言うているのでいいのですよと笑ったのです、海に入ると遠浅なので歩いていき胸の深さになったので、手はこういう風に前から、
横に水をかき、足は縮めて後ろに蹴るのだ、顔は着けて一かきで一回息を吸うと早く泳げる、海は浮きやすいので手と足を動かすだけでも簡単に浮いていられるというと、水練とは、
随分ちがいますねと言うので、

あれは重い甲冑をつけて川を渡るための泳ぎ方だと言って、それでは行こう、つかれたら、手足だけゆつくりうごかして休むんだよと言って泳ぎ始めたのです、富三郎が砂浜から、
船を出してついて来たのです、お峰は水練を受けているだけあって中々上手い泳ぎをしたのです、暫く泳ぎお峰に近づいて、中々上手いではないかと言う、海は初めてですが簡単、
に浮くのですね、

気持ちいいです、でも目が塩で痛くなりますねと言うので上がったらしっかり洗うんだよ、随分陸から離れたなと言うと、半分は遠浅で背の立つ場所ですよと言ったのです、富三郎、
が船乗りますかと言うので、いいや、泳いで戻ろうというと陸まで泳いで戻ったのですが、息があがったのです、ヤツパリ随分泳いでないから息が上がるよと言うと、お峰は平気、
みたいです、

川に比べて大した事なかったですと笑ったのです、富三郎が家で水を浴びてさっぱりして着替えてくださいというので、着物を持ち富三郎の家に行き、湯殿で水あびして着替えた、
のです、富三郎が妹の初ですというので、おう初か随分美しくなったではないかと言うと、源三郎様相変わらず口が上手いのですね、それにしても奥方様が泳ぐなんてと言うので、

富三郎が奥方様は水練が上手なんだよと言うので、お武家の女子は水練をやらされるのですかと聞くと、いや普通はやらないだろうが、わたしは父にやらされたので出来るのです、
よと笑ったのです、スイカが冷えていますどうぞお食べくださいと出したので、それではと二人で食べて、うん甘くて美味いと喜んだのです、父親の富蔵が帰って来て、これは、
若様お戻りなさいませ言って、

奥方様この辺の網本をやっています富蔵ですと言うので、峰じあよしなにと言ったのです、物産会所の事で遠山様のところに行ってまいりました、上方、江戸に出す物を考えてくれ、
との事ですので、干しあわび、イカ干し、カツオの塩辛、岩のり、アジの干物、ですと言うので、トビウオの干物はと聞くと、あれは骨が多いのでと言うので、はらわたを出して蒸、
したらどうだ、

酒の肴になるだろう、カツオ節ではなくマグロ節なんていうのはと言うと、なるほどカツオ節は薩摩が名産ですから、マグロは日保ちしますから生節にすれば良いですね、試して、
みましょうと言ったのです、上方、江戸だと送り賃で元がとれないと思っていましたら、玄海屋さんが上方、江戸よりの古着を買いつけての戻り船にのせるそうでタダ同然の値段、
だと言う事で、

それなら十分商いなるでしょう、上手いところに目をつけなさったですね、これは源三郎様の策だとお伺いしました、相変わらず知恵がまわりますねと言って、海産物の頭取はこの、
富三郎に任せますと言うので、そうか、富三郎頼むぞ、上手くいけば漁師もすこしは暮らしが豊かになるだろうと言うと、皆が公平に儲けを分配するというのは驚きました、そんな、
事が出来るとは夢にも思いませんでしたよと言ったのです、

それに酒だ、この辺は水が良いから酒も美味いのができるだろうと言うと、この辺で作っているのは芋焼酎ですので上方、江戸では好まれませんと言うので、焼酎も濁りを取り、
度数を上げれば臭みは消えるだろう、なんでも濁りは灰をいれればそこに沈殿して水みたいな酒が造れるとの事だ、又度数が高いので医術の消毒薬にも使える、値が合わない、
のなら医術の薬として売れば良い、

江戸は金持ちが多いので多少高くても売れるのではないかと言うと、なる程、作らせて上方、江戸で玄海屋に試してもらいましょう、売れるようなら本格的に作る事とすれば良い、
ですね、源三郎様の知恵袋には沢山入っているみたいですねと言ったのです、奥方様良い旦那さまに嫁がれましたね、部屋住みですが食うのには困りませんよと言うので、そうで、
ね水練も達者ですから漁師にもなれますよと言うと、みんなが違いありませんと笑ったのです、

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