第80話

文字数 2,675文字


源三郎江戸日記80

当時の裁判は現代と違って、同心が被疑者を取り調べ証拠により本人を自白させて、過去の例に当てはめて刑罰を決めて上申して、殆どはこれで決定され、奉行がお白砂で被疑者を調、
べるのはほんの形式にすぎず、傍にいた読み役が自白内容を読み上げ、奉行はそれに間違いないかと尋ねて、被疑者が間違いありませんと答えると、そこに書いてあった刑罰を言い渡、
すと言うものだったのです、

将軍直々の触れの為、前例では捨て子の場合通常は50叩きか寄場送りだったのですが、その上の遠島、犬を保護しなかったものも遠島、殺したものは死罪と言う事にする同心が出て来、
る事になってってしまったのです、さらに高札では最後の項目に以下この触れを守らなかった者は厳罰に処すると書かれたのです、その後生きている者総てに適用されていくことにな、
り天下の悪法になっていったのです、

高札が掲げられたときは町衆も書いてある事は、しごく普通の事なのであまり気にもしなかったのですが、公方様直々のお達しなのでとまどったのです、しかし実際に役人に捕まる者、
が出て来て、遠島、死罪の者が出てくると改めて刑罰の重さに驚き、一転して幕閣の批判が渦巻き、怨嗟の声があがったのです、綱吉は至極良い触書なのになぜそうなるのか理解でき、
なかったのですが、

いまさら取り下げるわけには行かず、意地になりこのまま続けよと老中達に言ったのです、柳沢はだから言わんことではないと思ったのですが、老中格筆頭の柳沢に非難は集中する事、
となり、綱吉がどうしてこうなるのだと言うので、それがしが民の非難は一手に引き受けます、公方様は気になされますなと言ったのです、町奉行を呼び刑罰が厳しすぎるのでは無い、
かと言うと、

何を言われますか、公方様直々の触れと言う事になれば一段上の罰となるのは仕方ない事です、与力、同心どもに刑罰を下げろと言えば、従来と同じとなり公方様の威厳は地に落ちま、
す、さすれば誰も守ろうとせずそれがしは腹を切る事になります、ぞうぞ罷免してくださりませと言うので、わかったと言うしかなかったのです、これはまいったなと思ったのです、

しかしほうっておくと、各大名もこれにならい、これに遵守しないと改易になるかも知れないとして、藩でも同じ触書を出して藩主が幕府に改易の口実を与えないように、取り締ま、
るように言う藩も出て来てしまったのです、高鍋藩も例外ではなく源三郎が政種に呼ばれて御座所に行くと、生類哀れみの令だがどうしたもんかなと聞くので、中身はすこぶる良い、
考えですが、

遠島や死罪などとはとんでもない事です、それは手柄にしょうと一部の同心がやっている事ですというと、しかしわしから手心を加えよとは、言えんだろうと言うので、家老から言、
って貰うしかありません、もし幕府から何か言てきたら、家老が責任を取ることになりますが、それを理由に改易などしませんと言うと、それでは江戸家老に私から国元へと藩士に、

もし犬が人に危害を加えていたら追い払うべし、但し無用に殺してはならない、町方は藩士にはては出せん、幕府から我が藩に何かあれば家老が全責任を持つと言うしかありませぬ、
頼んでみますと言うと、宜しく頼むと言うので、公方様は生きている者を大事にしろと言われただけでしょう、公方様直々のお達しなれば役人度もは過大解釈して手柄を立てようと、
するばか者がいるのですよと言ったのです、

早速御用部屋に行き3人の家老に集まってもらい、話しをすると、そうか殿も困っておられるのだな、わかった家老の連盟で藩士と国元に従来通りの裁きをするように、又藩士には、
もし犬が人に危害を加えていたら追い払うべし、但し無用に殺してはならないと言いふくめようというので、なにとぞお願いいたしますと言うと、心配するなそんな事で遠島や、
死罪等ばかげた話じあと言ったのです、

深川に戻り居酒屋に行きおみよに新之助と三蔵を呼ぶように言うと、暫くして顔を出したので生類哀れみの令の厳罰はどうなってるのだと聞くと、奉行も公方様直々のお達しなので、
一部の同心が厳罰を上申しており、やめよとは言う事は出来んのだ、わしは従来どおりの罰しか与えておらんがと言って、前田家では特に厳しいらしく、吹き矢ですずめを殺した、
藩士が切腹させられ、

それを見ていてとめなかった藩士が遠島になったそうだ、又鍋島家では顔に止まった蚊を叩いて殺した小姓の家が取り潰しになったそうだ、生類が総てのものと言う事になってしま、
ったのだと酒を飲み干したのです、それではそんな事では改易などならんと言う事を大名に分からせるしかないなと言うと、どうやるんだと聞くので水戸の御隠居がこの触れ書きに、
凄く怒っているらしく、

辞めさせる為今江戸に来ておられるとの事なので、あら療治を頼んでみょうと言う、犬の皮を公方様に献上してもらおう、何も犬を殺して剥ぐのではなく、死んだ犬の皮を献上して、
貰うのだ、死んだ犬がいたら教えてくれ、その犬に役に立ってもらおうと言うと、わかった死んだ犬なら中野の保護所にいけばいるので、ねんごろに弔うと言って貰ってこようと、
言うので、

新之助と三蔵をつれていくと、昨日3匹死んだと言うので遺骸を貰い、源三郎の知り合いの寺に行き、皮をはがして遺骸は埋めてねんごろに供養したのです、皮は井戸水で綺麗に洗い、
日光で綺麗に乾かしたのです、新之助がこんな処を見られたら張り付け獄門だなと笑うので、アイヌはこれで服をつくり防寒着にするそうじあと言うと、なる程暖かそうじあなと言、
ので、

さて乾いたので箱にしまおうと、紙に一枚づつ丁寧にくるみ箱に仕舞ったのです、三蔵に柳沢様への文をしたため、水戸のご老公より公方様に犬の皮三枚を献上していただく公方様、
は驚かれるでしょうが、これは犬如きで大名は改易されないと天下に知らしめる為です、ご老公が生類哀れみの令を批判して献上されたと思われるでしょうが、公方様でもそれで、
御隠居様に切腹は申しつけられません、

柳沢様は公方様に行き過ぎた刑罰を諌めるのに都合が良いので、知らん顔なされるように言うてくだされ、この事が噂になれば大名はホットして刑罰を元にもどしますと書き添えて、
御隠居への紹介状を頼んだのです、新之助がご老公はお引き受けくださるだろうかと聞くので、天下の副将軍と言われている方だ、公方様への皮肉としては面白いと喜ばれるよと言、
うと、

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