第52話
文字数 2,899文字
源三郎江戸日記52
匠之守様は間違ごうておりませぬ、伊達様の進物と比べられて分が悪かっただけで御座いますと言うと、大石がおればわしを諌めてくれたであろう、今となっては遅いがと酒を飲み干、
したのです、匠之守の奥方が次は何を画策するであろうかと聞くので、おそらく14日のお召し物と思われます、13日までは羽織、袴、裃で良いのでござりますが、多分大名は烏帽子、
大紋をお召しになると思います、
17年前は羽織、袴、裃でしたが今の将軍様は花鳥風月をこのまれます、直答の儀なればより優雅である烏帽子大紋をお召しになるのではないかと思いますと言うと、そのような指南は、
受けておらぬがと言うので、それがしの勘違いやも知れませぬが、二通り用意なされませ、吉良様は匠之守様だけでなく、伊達様も自分の指南を聞かないのに腹を立てているのですと、
言うと、
そうかも知れん、国主の格式を得る為に必要以上な過剰な饗応をやっているのだろうが、迷惑な事じあ、わかった二通り用意しょう、城中の事なれば用意してなければ間に会わんから、
のうといったのです、家臣の為堪忍しょうとすれば、するだけ腸が焼けるようじあ、まだまだ修行が足りないとみえると言うので、何があっても殿中で刀を抜いてはいけませぬ、扇子、
か拳骨を食らわしてやりなされと言うと、
奥方がそのような事をすれば役目は勤まらぬであろうとと言うので、刀を抜かねば無骨な武士として叱られるかもしれませんが、切腹や改易はされません、これはいよいよ我慢できな、
くなった時の事ですと言うと、匠之守が拳骨がそれはす~とするであろうと大笑いしたのです、殿と奥方が言うと、源三郎は余に我慢せよ、我慢せよというと益々鬱積が溜まると思、
うて言うたまでじあよと言うと、
なる程そうで御座いますな、殿をいじめたら私めが吉良の顔をひっぱいてあげますと言うと、それは頼もしい、その時は頼むぞと笑ったのです、しかしあの過剰な饗応はとても歳若い、
伊達殿が考えつくとは思えぬが、家中に誰ぞいるのであろうかと言うので、考えすぎかも知れませぬが老中が陰で煽っているのかも知れませぬというと、何それは柳沢様なのかと聞く、
ので、
いや柳沢様は高鍋藩取り潰しに失敗しております、今回の勅使、院使の饗応の総責任者なればそれが失敗すれば公方様から叱責されでありましょう、はっきりとわかりませぬが老中、
稲葉様あたりの陰謀かもしれませぬというと、なる程柳沢様への面当てと言うわけじあなあ、しかし、吉良の顔を見ると虫唾がはしるのじあよ酒を飲み干したのです、もうじき夜明、
けですなあ、
そろそろ終る時刻ですがと言うと、高岡源五衛門が入って来て、殿只今200畳の取替えが終りましたというので、そうか、やったかご苦労であった、今から行って皆を慰労するぞ、酒と、
肴は用意してあるかと聞くと、源三郎が深川の料理屋に用意してあります、後はおまかせあれと言うと、それでは行くぞと籠にのり増上寺に向かったのです、増上寺に着き高岡の案内、
で新しくなった大広間を見て、
ようやったと藩士に声をかけて、庭に降りて職人によくやってくれた、これでわしの一分が立つた礼を言うぞ、宴の支度もしてある今日は存分に飲んでくれと言うと、棟梁が殿様直々、
のお言葉ははじめてですと言って、みんなが平伏したのです、源三郎が後片付けは他の物にまかせろ、籠が用意してあるみなで深川まで繰り出すのだと言って籠にのせ、後片付けの者、
にも終ったら深川に来るように言って、
匠之守様に、それでは今日一日健やかにお暮らしなされませと言うと増上寺を出て深川の料理屋に向かったのです、職人が集まり源三郎がご苦労であったというとお勝つを始め大勢の、
芸者が酌をして宴席に入ったのです、源三郎が頭領に100両渡しみんなに配ってくれ、それからこの金は頭領の取り分じあ、後の者にも十分な物を渡すぞと言うと、こんなにいりません、
よと言うので、
何を言うか5万石、藩士家族を含めて1500人を救ったのだ、遠慮するなと言うと、まさに戦でしたなあと言って、それではありがたくと言って受け取ったのです、頭領がしかし源三郎の、
旦那の読みは深いですね、これからも何かあれば声をかけてください、直ぐに駆けつけますと言って、野郎共わかたったかと頭領が言うと、お~と杯を上げたのです、無理をせず寝たい、
ものがあれば、
この場に寝てもいいぞと声をかけると、若狭屋が上手くいきましなと言うので、時間ギリギリでしたと笑うと、酌をするので飲み干し返杯したのです、七衛門が顔を見せたので、おう、
七衛門ご苦労であったと酌をすると、間に会って良かったですねと酒を飲み干したので、今回は散在させたなと言うと、なんの源三郎様からの預かり金で十分間にあいますよと言った、
のです、
お勝つが傍に来て、深川芸者は大喜びですと言うので、沢山慰労してくれと言って、わしは少し寝るぞと言うと横になったのです、若狭屋が羽織をかけて、わしは店にもどると言うと、
部屋を出て行ったのです、目が覚めるとみんなはそこらじゅうに寝ており、それでは根岸に帰るぞ後は宜しくと女将に頼み籠で根岸に戻ったのです、寮に帰るとお峰がお戻りなされ、
ませと言うので、
お峰は寝たのかと聞くと、父上がお戻りになりすぐ寝てしまわれたので、女中に頼み戻って来て休みました、旦那様はと聞くのでわしもよう寝たぞと言うと、湯がわいております、
湯浴みをしてくださりませと言うので湯に入り、さっぱりして部屋に行くと、母上とお律が上手く行ったそうでお疲れ様に御座いました、さあ、朝餉を食べましょうというので、
それでは頂ましょうと箸をつけたのです、
お峰が今日一日何もなければいいのですがと言うので、昼前には総ておわり、明日は京都にお帰りになる、もう大丈夫だろう、お峰もご苦労だったなと言うと、父上がもういいので、
寮に帰り旦那様の世話をするように言うていましたと言うので、そうか、舅殿もホットされたであろうと言うと、母が良い事をなそれましたなあ、父上も喜んでおられるでしょうと、
言うので、
勅使がお帰りになったら父上に報告しに上屋敷に顔を出しますと言うと、そうなされませと言うと、お律が兄上お子が出来たそうですというので、何お峰本当かと聞くと、私では御座、
りません、母上様ですよと言うので、何と母上本当に御座いますかと言うと、私は恥ずかしいですと言うので、何を申されますかそれは目出度い、しかし、父上はすご~いと言うと、
お峰が申し訳御座りませぬというので、
何を言うかお峰にもすぐできるよと言って、今日は頑張るか、父上に負けてはおられないなと言うと、お峰がハイと言うので、お律が男でしょうかと聞くと、まだわかりませんよ、随分、
歳の離れたおの子か姫子ですねと言うので、源三郎が体をいとい元気な子を生んでくだされと言ったのです、朝餉が終りそれでは様子を見てくると深川の若狭屋に顔を出して、母上懐妊、
を言うと、