第16話

文字数 2,669文字


源三郎江戸日記16

草津屋善衛門は通常は草津にはおらず、草津は番頭の時蔵が取り仕切っていたのです、時蔵はことの次第を江戸にいる相模屋善衛門に早馬で知らせたのです、この文をみてなんと8千両、
も盗まれただと、奴の稼ぎ場所は関東、上越だったはずだ草津に目をつけるとはと言って、草津に出たということは、草津屋善衛門と相模屋善衛門が同一人物だと気づいたのかも知れん、

上方の金蔵が危ない急きょ上方にいくぞと番頭に言ったのです、行くまえに柳沢様にお知らせしなければと、籠にのり柳沢出羽の守の上屋敷に向ったのです、丁度出羽の守が城を下が、
ってきたばかりで、さつそく目通りして仔細を話すと、源蔵の奴目意趣返しをしているのだろう、捕らえて磔獄門にしてくれると怒りをあらわにしたのです、盗賊改方を上方に行か、
せようと言うと、

家老を呼び盗賊改め方の頭十文字左近を呼ぶようにいいつけたのです、暫くして十文字左近が現れて、お呼びによりまかりこしましたと挨拶すると、草津の出来事を話し次に狙うの、
は上方の相模屋の金蔵に違いない、そこもとの手の者を探索に出すのだと言うと、ムササビの源蔵はなぜ善衛門の金蔵をと聞くと、それはわからん、それを調べるのがそなたの役目で、
あろう、

世の中では義賊と言われているそうだがと柳沢が言うと、十文字が盗人は盗人でございます、江戸では船手奉行の屋敷より千両、若年寄り太井泉の守様の屋敷より千五百両を盗まれまし、
た、いずれも警戒厳しい大名、旗本屋敷に押入る不届きな奴でございます、江戸の警戒が厳しいとして上方あたりに勤めを変えたのでしようと言うと、てがかりはないのかと柳沢が聞く、
ので、

ムササビの源蔵は元船手組、同心芦田源蔵と思われます、抜荷に加担したとして手配中でございますが、その時の相方井筒屋の者が全員死んでいますので詳しい経緯はわかっていません、
と言うと、ともかくこのまま捨て置けば御政道は地に落ちる、一時も早く召し取り磔獄門にいたせ、余から大阪城代には全面協力するように書状をだしておくと言うと、善衛門が宜しく、
お願いいたしますと言ったのです、

十文字左近が下がると、善衛門が十文字様は堅物と聞きますが、大丈夫でございますかと聞くと、余計な事に首を突っ込めば、役目不行届として罷免するまでだ、井筒屋の件は何の証拠、
もない、幕閣を牛じるには多くの金がかかるのだと言うと、わかっております、大名への貸付も大きくなりおおくの利ざやが出ておりますと言うと、両替商どもが廻船問屋が金貸し等、
するのはいかがなもんかと、

勘定奉行に申し立てしているようだが、両替商とて同じではないかと突っぱねておるというと、しかし殿様があまり大名に賦役をかされますと、貸付金がこげつくと困りますというと、
これは幕府の方針なのでわしと言えど口は出せんのだよ、小大名を改易して幕府直轄地にすればお善衛門は幕府御用達の廻船問屋とし潤うであろう、又幕府の財政も豊かになると言う、
わけじあと言ったのです、

それでは私めも上方に行きますると言うと、屋敷を出て店に戻り支度をして佃沖の千石船に乗り込んだのです、十文字左近は役宅にもどり与力の中田勘助を呼び同心二名を連れて上方、
へ向うのだ、ムササビが上方の相模屋の金蔵を狙うそうだというと、なぜ相模屋の金蔵をと中田が聞くと、ムササビの源蔵ははめられたのかも知れん、それの意趣かえしだろうと言う、
と、

はめたのは相模屋と柳沢様ですかと聞くと、黒幕が柳沢様で、はめたのは相模屋と船手奉行だろう、船手組は若年寄りの差配だ太井泉の守様も柳沢には逆らえないのだよ、我々として、
も同じだというと、して上方ではと聞くと、適当にお茶を濁しておけ、善衛門ごときに借りはない、ゆつくり、上方見物でもしてこい、ムササビから相模屋や船手奉行の不正の証拠で、
も入れば、

柳沢様にお灸をすえる事ができるやも知れんと言うと、しかしそれではお頭の立場がと言うので、もとより承知の上だこのまますておけば、幕府は信頼を失い崩壊しかねない、わしの、
力など大した事ないが、賄賂の政をすこしは戒められるかも知れんと言うと、承知つかまつりました、なるべくムササビが捕まらないようにしましょうというと、これこれわしらは、
盗賊改め方だぞと言ったのです、

中田は役に立たない同心二人を連れて上方へ向ったのです、二人に路銀はタップリ勘定方より出る事になっている、ゆるりと東海道を上るぞと言うと、さようですか、それは楽しみに、
ございますなあと、同心の猿田と戸山が喜んだのです、この二人は剣は弱く凡庸で小者しか捕らえた事はなかったのです、源三郎とお峰は彦根、京都と旅を続け大阪についたのです、

秋月藩の蔵屋敷のある船場から程近い旅籠にわらじを脱いだのです、さすがに天下の台所と言われるだけあって、町は活気がみなぎり船場には大名、商人の蔵が多数建つており大阪湾、
の千石船から掘割を通り多くの荷が運びこまれており、料理屋、お茶、居酒屋、女郎屋が立ち並び大勢の人が行きかっていたのです、旅籠で湯に入り垢を落して上がって来てとりあえ、
ず町にでる事にしたのです、

一件の居酒屋に入り美味しい肴はと聞くと、何でもありますよと言うので、特に美味しいものはと聞くと、ゆでたこのぶつ切りは酒の肴に良く会います、豆腐も絹越しでヒヤヤツコも、
美味しいよと言うので、二つともと頼んで酒で杯をかさねたのです、豆腐も江戸の木綿豆腐とちがって柔らかい豆腐で上に鰹節の削ったのが振りかけてあり、醤油も江戸と比べて、
甘さがあります、

お峰がなんですかこの豆腐はくにやくにやして歯ごたえはありませんね。又醤油も少し薄いですというので、江戸の人には会わないかもしれないが、慣れれば意外と美味いんだよ、
九州の味もこんなもんだよと言うと、そうですか、それでは舌を慣らしておきます、美味そうに食べないと高鍋ではお爺様、お婆様に嫌われますねと言ったので、そんな事は無い、
よと笑ったのです、

押し寿司を頼たのんで、江戸はまき寿司だが大阪は押し寿司なんだよと言うと、すぐに持ってきたのでお峰がこれが押し寿司ですかと口に入れて、中々美味しいですねと言ったので、
す、旅籠では何がでるのかしらと言うので、まあ刺し身類だろう、江戸とあまり変らないよと言うと、それが一番無難と言うわけですね、魚がないのは山の中だけですからと酒を注、
いだのです、

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