第40話

文字数 2,901文字


源三郎江戸日記40

いつもの通り祖父の頂きましょうと言う言葉で夕餉に入り、源一朗がこれがハムかと箸を付けて食べると、中々の食感とあまり塩辛くなく美味しいって、酒の肴によく合うなあと言う。
と、祖母が二時湯が沸騰しないようにじっくり火にかければ塩抜きができ、後はどの位日持ちするかですねと言ったのです、祖父とお峰も食べてなるほどこれは今までに無い食感だ、
美味しい、美味しいと喜んだのです、

夕餉が終り、それでは江戸に早く着くための策をもう一つ考えます、これから高鍋神社に行ってきますと言うと、祖父が神社に何があるのだと聞くので、陰陽師が使う方位磁針と言う、
ものがあるはずです、陰陽師では北は鬼門とされており、京都の北東には延暦寺、江戸の北には上野寛永寺がありその延長線には日光東照宮があります、自分のいる場所から北の方位、
を知る道具です、

これは磁石と言う石に鉄をこすり付けると磁化されて、この鉄片は必ず北と南を向きますので、この性質を利用した道具で、宋の国からわが国にもたらされたのだそうです大きな神社、
には必ずあるそうです、その磁石で畳針を擦り付け何本か作ってきます、畳針はありませんかと聞くと、神社に行く途中に畳屋があります、そこで、分けてもらいなさいと祖母が言う、
ので、

ハイと返事をして屋敷を出たのです、畳屋により畳針5本を分けてもらい、神社に行き宮司に磁石があるか聞くと、ありますと言うので、貸してもらい一本を50回こすり、糸で吊るすと、
間違いなく南北を指します、宮司が陰陽師でもなさるおつもりでと聞くので、いや、単に方角を知る道具を作りたいのだと言うと、それを知って、どうなさるので聞くので、山で道に、
迷った時に便利だろうと言うと、

なる程それは良い方法ですねと笑ったのです、5本作り宮司に礼を言って、屋敷にもどり糸に吊るしてみせて、これがあれば夜に星が見えなくても船を進められるので、休む事なく船、
を走らせる事が出来る、桶に水を入れて、桐の下駄を持ってきて棒を作りそれに畳針を取り付け、棒の長さを桶の直径より少し小さくして浮かべると、簡単に南北を指します、この、
針の尖った部分を磁石で擦ったので、

北と言う事になります、これによると我が屋敷から右の山手のほうが北になりこの直線から直角に線を引いたところが東と言う事ですねと言うと、祖母が間違うなくそこから日が昇り、
ますよと言ったのです、お峰がゆれる船では水がこぼれます、この棒の真ん中に小さな突起棒を取り付け駒の心のようにして、水の量を半分にして、上に海女の使う水眼鏡を貼り付け
れば、

水がこぼれず硝子に心が当たり、多少斜めになっても大丈夫ですというと、手鏡をとりだし枠をはずして、裏側を削ると一枚の硝子になり、それに東西、南北を書き込み、上から被せ、
畳針のとがった部分を北に合わせて、こうすれば、簡単に東西南北がわかりますというので、源三郎がお峰も知恵者だなと言うと、見直しましたと笑ったのです、これをそのまま船に、
のせると、

揺れがひどいと方位が定まらないがと言うと、祖母がそれなら桶の回りに紐をつけて、上から吊るすのです、そうすれば揺れが吸収されあまり動きませんよと言うので、お婆様すご~、
いと言うと、地震の時ものが落ちないように、籠を吊るすのはその為ですと言ったので、祖父がなる程婆さんも、中々の知恵者じあと言うと、貴方も見直しましたかと笑ったのです、
これで万全ですねと言って、

酒を注ぎ杯を重ねたのです、源三郎がこの道具は南蛮船にはかならずあるそうです、宋の国から絹の道と言う道を通って南蛮にもたらせれ、南蛮では船の航海の道具として発達したの、
だそうです、幕府は禁制品にしています、自前で作れば問題ないでしょう、千石船では方角が分かっても外海を乗り切って南蛮までは行けません、行くとすれば2000石以上の船が、
必要ですが、

幕府は千石以上の船を作る事は禁止してています、千石程度では我が国の周辺しか航行できないのです、後は高鍋から日向灘を通り、四国の傍から和歌山に行き、本州を北上して伊勢、
尾張、駿河、伊豆半島、浦賀から江戸湾に入り、北は房総、常陸、仙台、石巻、蝦夷と言う航路が開けます、北回り船は蝦夷、越後、加賀、能登、長州、下関、瀬戸内海、大阪と言う、
航路ですが、

これに比べて早く蝦夷から江戸に物は運べ、早く届く分だけ塩は少なくて済み、蝦夷の海産物は美味しく食べられるようになります、表側の港町もにぎわうでしょうというと、江戸、
がぐ~んと近くなるわけだと源一朗が頷いたので、江戸からお伊勢回りは陸路なので1生に一度いけるかどうかですが、船を使えば、お伊勢まいり、四国88個所めぐりも簡単になりま、
すねと祖母が言うと、

高鍋から四国も近くなるので婆さんや四国霊場めぐりでも最後にしてみるかと言うと、ハイ、行きましょうと喜んだのです、お峰が四国も陸路ではなく船で行けば簡単回れにれますね、
というと、祖父がそれではありがたみが薄れるのではと笑うので、祖母がお大師様も年寄りには手加減してくださりますよと言ったのです、翌日の朝に七衛門が高鍋に到着して、月が、
出いていましたので、

順調な航海でした、大阪まではわずか2日でいけました、帰りは風むきでジグザグに走りましたので3日かかりましたが、都合5日で走破できましたよ、この帆の仕掛けは凄い、古着も、
沢山持ってきました、今陸揚げしていますと言うので、急遽江戸に行く事になった、こんどは瀬戸内海ははしらず、日向灘から土佐に行き北上するぞと言うと、それでは試しに夕方、
出立しましょう、

土佐沖で朝日がみれますよ、ただ、この天気がもちますかねと言うので、そこでもう一工夫したのだと、方位磁針の話しをすると、あの南蛮船につけてあるものですね、それを源三郎、
様がお作りになったのですかと驚いたのです、屋敷に置いてあるので後で船子に取りにこらせてくれ、みんなに夕方までゆっくり休ませてやれ、準備が整ったら船にのるぞと言って、
屋敷にもどったのです、

祖父に船が戻りましたので今日の夕方に出立しますと言うと、そうか、航海の無事をいのる、源之丞、お信、お鶴にもよしなになと言うので、これで高鍋も近くなりますので又帰って、
来ます、健やかにお暮らしください、と言ったのです、船子が来たので荷物を頼んだのです、物産会所に顔を出すと、遠山がおり、少しは物産が集まっている、椎茸、カツオの、塩辛、
星アワビ、岩のりだと言うので、

船に積み込ませ、吉蔵の家に行き庭になっている日向夏みかんをもぎらせ、野菜は土がついていたほうが日持ちすると言うので畑から土のついたままを俵につめ、後薬草も山から取っ、
て来て干してありますと、言うので積み込ませたのです、次に海に行き網元に干してあったアジ、イカ、に試しにマグロ3本をそのまま木のおがくずの中に入れて、江戸に着いたとき、
どうなっているかだなと言って、積みこませたのです、

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