第15話

文字数 2,831文字


源三郎江戸日記15

そうかお前を逃がしたのはお勝つだったのか、多分その事は誰にも漏らしていないのだろう、それで目明しの熊吉はと聞くと、今は船手組の同僚であった下田の岡っ引きをやっていると、
言ったのです、お前が手配されてムササビの源蔵と名乗っている事は、町方同心の山田から聞いている、そんな事情があったのか、柳沢はそれで儲けた金を幕閣にばら撒いて老中になっ、
たのだろう、

権力の亡者にとりつかれているのだなと言ったのです、源蔵がお前が邪魔するならお前と戦うしかない、お前に引導を渡されれば本望だと言うので、草津善衛門を助ける義理はない家人、
を殺さないなら目をつぶろう、全部巻き上げるとそこで働いている物が糧を失うので最低は残しておいてくれと言うと、勿論だと言い手下に酒を持って来いというと、ヘイと言って酒を、
持ってきて、

源蔵が奥方もと酌をするので三人で杯を重ねたのです、源蔵がしかし奥方のお手並みは拝見しました抜く手が見えませんでしたと言うので、源蔵殿の今の話に偽りがあれば次は手加減、
しませんよと言うので、源蔵がいつでもこの首を差し上げます、源三郎とは立ち会いたくありませんよと笑ったのです、それではお手並み拝見と行こうと立ち上がり、女郎屋を出て、
旅籠に戻り、お蝶に源信をよんで来るように頼んだのです、

小頭がこのままほっておいていいんですかと源蔵に聞くと、奴は絶対邪魔はしないよ、奴にかかりあうとろくな目にあわんぞ、絶対に手を出すなと言うと、ハイ承知しました、今夜は、
予定通り押し込みやすかと聞くと、勿論だと源蔵が答えたのです、お峰があの話は本当のようですねと言うので、奴はわなにはめた黒幕の柳沢に挑戦しているのだろう、どんなに義賊、
でも、

盗人は盗人だ考えてみれば可愛そうな奴だねと言うと、源信が戻ってきたので訳を話すと、またしても柳沢様が黒幕ですかと言うので、悪は栄えるという事だと酌をすると、何とか、
叩き潰したいもんですが、相手が大きすぎますというので、お峰が懲らしめる機会は沢山ありますよ、気楽に行きましょうというと、お蝶が源蔵殿今回は一撃を食らわしたではない、
ですか、

たった3万石にしてやられたと悔しがっていますよと酌をしたのです、さて明日は善衛門がどんな顔をするかだなと源三郎が酒を飲み干すと、お峰が源蔵殿と立ち会うとどうなりますか、
ねと言うので、剣の腕は互角だろうが修羅場を踏んでいる分奴の勝ちだな、もつとも鎖り帷子と手首を防御すればわしの勝ちだと言うと、まさに戦ですねとお峰が言ったのです、

それではこれでと源信とお蝶が部屋を出て行ったのです、翌日朝餉を食べていると馬と町方が走り回り騒々しいので、女将に何かあつたのかと聞くと、夜中に草津屋の金蔵が破られ、
8千両が奪われたそうですと言うので、それはすごい金寸だなどうやって運んだのだと言うと、東と西の大門が壊されていたそうで、いずれかに運び去ったのだろうと、代官所が追、
っ手を出したそうです、

どうやって入ったのだと聞くと、裏木戸が開いていたそうですが家人は総ており、身分のは確かで何年も前から奉公している物ばかりだそうです、家人は朝まで誰一人として気づか、
なかったそうで、金蔵らの鍵は壊されていたそうですと言うので、けが人は出なかったのかと聞くと、ええ、誰も怪我はしていないようで、土蔵の中に1万2千両の内4千両は残して、
やる、

全部なくなると家業が成り立たなくなるのでな、又悪どく儲けたら推参する、ムササビの源蔵と書いてあったそうですというので、成る程と言って草津屋はそんなに悪どい商いを、
しているのかと聞くと、それはもう、裏では金貸しと博打場もやっており、借りた金が返せないと女郎屋で働かせているそうです、年季が明けたら返すと言っているのは桔梗屋、
くらいのもんですよと言ったのです、

まあ桔梗屋も初めて半年ですから、約束をまもるかはわからないですがねと言ったのです、朝餉を終わりそれでは出立するかと言って荷物を馬に積んで西の大門まで来ると役人が、
警戒しており通行手形を見せると、すんなり通したのです、町はずれまで来ると地蔵堂から源蔵と小頭が出て来たので、元気でなと声をかけると、そちらさんもと頭を下げたので、
す、

源蔵は見えなくなるまで立ちすくんで見送ったのです、お峰が引き込みもいなくてどうやって入ったんですかねと聞くので、奴が半年前にあそこで女郎屋を始めたのは、一つはあの、
床下から草津屋の土蔵まで穴を掘るためさ、おそらく穴は土蔵の下まで続いているのだろう、回りは鉄格子で床下に侵入できないだろうが地の下から穴を掘れば、後は床板をはずせ、
ば良い、

穴は隣の建屋の床下にも出れるようになっており、これは外から進入したように見せかける為、裏木戸を開けて、鍵を壊したんだろう、大門を壊したのは逃げたと思わせる為だよ、
もうすでに穴は塞いだと思うが、土蔵の床下には目が行かんだろうと言うと、なるほど、いつ気づいたんですかと聞くので、女郎屋で手下の指の爪が黒ずんでいた、あれは土仕事、
をやった指だ、

代わりばんこで穴を掘っていたんだろうと言うと、すごい観察力だとお峰が驚いたのです、源蔵の指には竹刀たこがあったぞ、武士だったということは中々隠せないもんだよと言う、
と、源蔵殿が旦那様を見送った訳が分かるような気がしますというので、どうしてだと思うと聞くと、おそらく今回、柳沢様に一撃を食らわした、旦那様の事を知っているのですよ、

それで源蔵殿は盗人で抵抗するので、旦那様にはこれからも真っ当うな手で立ち向かうように促しに来たのですねと言うので、そんなところだろう、もう一つは善衛門の毒牙にか、
かった女を救う為で、その為に大枚を役人に渡して女郎屋を始めたのだろうと言ったのです、ず~とその気持ちが変わらなければいいですねと言うので、そうだな手下が多くなる、
と言う事を聞かなくなる者も出てくるだろう、

いつまで義賊でいられるかだよと言うと、旦那様は変ってはいけませんよと言うので、怖い女房殿がいる限り大丈夫だろうと笑ったのです、そろそろ昼にするかあの茶店でお茶を、
飲もうと馬をつないで台に座り、お茶と団子を貰い握り飯を食べたのです、もうそろそろ夏になります、高鍋につく頃は本格的な夏だな、日向の海もきれいだぞ、帰ったら海に泳、
ぎに行こうというと、

女子も泳ぐのですかと聞くので、海女は泳いでいるだろう、あの格好をすればいいのさと言うと、そうですね、でも色が黒くなったら旦那様は厭ではと聞くので、そんな事はないよ、
と言うと、それなら泳ぎますと喜んだのです、それでは行こうといっておばあさんに金を払い、馬に乗りゆっくりと京に登っていったのです、琵琶湖のほとりを進み今日は彦根に、
逗留だなと言ったのです、

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