第54話

文字数 2,960文字


源三郎江戸日記54

夜空には大きな月と満点の星が輝き、舅が国元では何も知らずにこの月をみているでしょうと言うので、今後の事で御座るが根岸においでくだされと言うと、いや、小さな家を借りて、
医師の真似事をしますと言うので、そうでした舅殿は骨接ぎも出来るのでしたなと言うと、なんとしても大石様には殿の無念を晴らしていただきますというと、お峰がきっと仇を討、
ってくださりますと言ったのです、

さて冷えてきましたので、船倉にはいりましょうというと、夜も走れるとはこの船は凄いですなと言うので、星が出ていなくても大丈夫なのですよとお峰が言うと、婿殿の知恵は凄い、
と笑うので、七衛門が小腹も好いたでしょうと、握り飯と酒に肴を並べたので、頂きましょうと言って握り飯を食べて、舅に酌をするとゴク、ゴクと飲み干して、今日は目が回りまし、
たと言ったのです、

先ほどは匠之守様の松の廊下の一件は詳しくお話していませんでしたが、幕府に仕官している根来衆がそれを見ていた茶坊主より聞いたところによりますと、と言って話しをすると、
そうでしたか、松の廊下で会ってしまわれたのか、それで暴言をはかれて刃傷に及んだと言う事ですかね、討ち漏らされたのはさぞかし無念であった事でしょう、その旗本も武士の、
情けを知らぬとみえますなと言ったのです、

船は順調に航海を続け3日の昼過ぎに赤穂の沖に着き、イカリを降ろし小船で砂浜に上陸し、馬を借りて赤穂の城下に向かったのです、源三郎達は旅籠にわらじを脱ぎ、舅は大石の家、
行き書状と遺品を差し出して、事の経緯を話すと大石は驚いて何と言うことだ、わしがついて行かなかったばっかりにと唇をかんだのです、まさに片手落ちの裁きじあと言うので、

大学様は蟄居謹慎を申し付けられ、お方様は三好浅野家に引き取られましたというと、改易ならば城受け取りに近隣の大名が来るであろう、そなたはどうするのじあと聞くので、親類、
の家に逗留し、ご家老の指図に従いますというと、今日は当屋敷に逗留しなされ、明日総登城を命じみなに話しをしょう、早飛脚は後10日はかかろう、その船はたつた3日でここまで、
来たのか、

凄いのうと言うので、源三郎のと娘の事を話すと、それでは二人もとう屋敷にと言うので、赤穂藩とは係わりのない者ゆえ、まいらないでしょう、ご家老の指図が決まれば江戸に一旦、
引き上げますというと、それでは村上殿に江戸で殿が世話になったお礼がしたい、呼んで来てはもらえぬか、色々話しを聞きたいがと言うので、それでは連れてまいりますと屋敷を出、
て旅籠に行ったのです、

舅が家老が会いたいというので、承知して後をついて行き大石宅に入り座敷に座り、村上源三郎に御座います、奥田孫太夫殿は舅にございますと挨拶すると、おう、お峰殿久しゅうのう、
と言って、今回は村上殿に一方ならぬ世話になったそうで、御礼申し上げるというので、匠之守様もとんだ災難に会われ申した、かえす、返すも残念に御座いますと言うと、それがしが、
ついて行かなかったのが失態で御座った、

さてどうするか今の所見当もつきませぬ、家臣一同を集めてどうするか決めますると言うので、松の廊下の話しをするとまさに片手落ちの裁きにござる、ご公儀はなぜそのような裁きを、
なされたので御座ろうかと聞くので、確証はありませぬが誰かか公方様を炊き付けたのだと思います、吉良家は上杉家とは縁続きで御座る、その上杉家の正室は紀伊藩主徳川家貞様の娘、
に御座います、

徳川とは縁戚でつながっており、老中がそれを引き合いに出して綱吉公に話し、吉良に手心を加えるように言ったのやも知れませんと言うと、老中はそれで何が得になるので御座るかと、
言うので、幕閣の勢力争いでしょう、幕政を牛耳っている柳沢への面当てだと思います、これで公方様よりも柳沢様への世間の風当たりは強くなり、他の老中はしてやったりと思うの、
ではないですか、

今回の匠之守様の刃傷も、伊達を後ろから親つり饗応を贅沢にさせたのが老中稲葉様です、当然浅野家と伊達家の饗応がつりあいが取れなくなり、匠之守様は鬱積が溜まり吉良憎しと、
なり刃傷に及ばれたのだと思いますと言うと、何んと江戸家老は何をしておったのだと言うと、舅がいまさら言たくありませぬが、進物は伊達家と同じにするように言うたのですが、
進物の数で吉良様が指南をおろそかにするはずが無いと聞き入れないで、

伊達家と大きな差が出来たので御座ると言うと、そうか、わし以外に殿を諌めるものがいなかったのか、わしは何と言うおろかな事をしたのだ、これはついて行かなかったそれがしの、
落ち度にござると唇をかみ締めたのです、何としても幕府に一死報いねばと言うので、舅がそれでは篭城して一戦交えますかと聞くと、叩き潰されて終りじあ、吉良様を悪者に仕立て、
て、屋敷に討ち入り首を上げれば、

喧嘩両成敗をしたとして、民衆が喝采するでしょう、幕府は今後はまっとうな裁きをするしかななるというと、舅がなる程城は素直に明け渡し、赤穂藩士が集団で討ち入れば、暴徒で、
は無く戦として民衆が喝采しますなと言うと、大石がそれには筋道をとおさねばならぬ、大学様をもってのお家再興を願い出るのじあ、絶対に願いは聞きどけないだろう、届ければ、
片手落ちを認める事になる、

幕府も簡単には答えはだせないが、だすしかなくなり、それは拒絶して大学様は家禄没収の上本家あずかりとなるはずだ、そうなれば大儀名文が手にはいる事になる、そこで一挙に出、
ればよい、しかしそれまでにみんなが大望を抱き続けられるかが問題じあがと言って、この内蔵助の存念は決して他に漏らさないでくだされと言うので、しかし、黙っているより吉良、
は悪玉なので討ち入るという事を流した方が、

幕府、吉良、上杉はおびえるので都合が良いと思いますが、幕府も噂だけで取り締まれば、益々民衆が騒ぎますので手は出せませんと言うと、なるほど世間の噂は広がる程良いわけで、
ござるな、それがしだけが隠遁して知らん顔をしていればいいので御座るな、それは面白い、村上殿はほんに策士で御座るなと言うので、大石殿程では御座らぬと笑ったのです、これ、
は何もお出ししないで失礼つかまった、

りく酒肴の用意をと言うと、りくが女中達と膳を運んできて、大石の妻リクに御座います、何もありませんが酒でも飲んで密議を交わしてくだされと言うと、これこれ悪巧みをしている、
のでは無い、殿の通夜をやろうとしているのだと言って杯を上げて、いざ殿合戦に御座いますぞ、見ていてくだされと杯を重ねたのです、大石がお峰大願成就の際は孫太夫を黄泉の国に、
つれてまいらねばならんがと言うので、

お峰は武士の娘に御座りまする、覚悟は出来ておりますと言うと、孫太夫がよう言うた婿殿お峰はよろしく願いますぞと言うので、決して死に急ぎなさるなと言ったのです、およばず、
ながら、直接に手はかせませんが、色々と舅殿の加勢をいたします、さしずめ、江戸に帰ったら、吉良は悪玉、浅野は善玉の筋書きを書き噂を江戸十に流しますと言うと、大石がそれ、
はありがたいと笑ったのです、

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み