第55話

文字数 2,714文字


源三郎江戸日記55

屋敷を出て旅籠に戻り湯に入り、茶づけと酒と肴を頼み、茶漬けをかき込み一服して、しかしとんでもない事になったなと言うと、旦那様があれだけ諌めたのに、なぜ匠之守様は殿中、
で刀を、お抜きになったのですかと言うので、不思議なのは梶川と言う旗本が後ろから抱き抱えたという事だが、松の廊下は白書院に行く為のもので、旗本は高家以外ははいれないは、
ずだが、なぜそこにいたのだ、

わしが堪忍ならない時は、拳骨か扇子で叩きなされと言うたのは覚えておられるはずだ、吉良と一緒にいたのは稲葉殿だったのでは、匠之守様は稲葉に刃を向けたのではないか、稲葉、
が咄嗟的に吉良を匠之守様の前に押し出したので、これを切り裂く事になったのではないかな、匠之守様に暴言を吐いたのは稲葉ではないのか、色々の仕掛けがことごとくかわされた、
ので、

最後の手段に出たのかも知れん、それを見越して梶川に見晴らしていたのだろう、老中の伝言役なら松の廊下に入る事ができる、稲葉正通が黒幕ではないかと教えていたのが仇になっ、
たのかも知れないなあと言い、匠之守様の遺言を紐解くと知らせる暇もなく切腹することになった無念じあと言う事になるが、切腹は覚悟の上のはず、まして吉良が死んだかどうか、
は知らないはずだ、

完全に生きている事を匠之守様にしらせた者がいるとしたら、大目付けだがそんな事を教えるばがない、とすれば、無念じあと言うは、稲葉の悪巧みも調べないで即切腹の沙汰を受け、
たのが無念じあと言う事になる、悪巧みが発覚しないように、早急に沙汰を出させたのは稲葉が公方様を炊き付けたのではないか、内蔵助、稲葉に一死むくいてくれと言う意味なのか、
も知れん、

それを読み取ったので幕府に一死報いると大石殿は言ったのだろう、中々鋭い人だなと言うと、大石様がそんな人だとは誰も思っていないでしょう、気づいたのは旦那様だけかも知れ、
ません、何と言うても昼行灯と言われているのですからと言うので、昼行灯ではなく千里眼ではないかと酒を飲み干し、さて凡人が大石殿についていけるかだなと言うと、旦那様を巻、
きこんで済みませぬというので、

舅殿にはなるべく大願成就しないで長く生きて欲しいのだがと、お峰を抱き寄せて唇を重ねて燃えあがったのです、翌日は総登城の触れが出て、藩士が登城すると大石が殿が松の廊下、
で吉良様に刃傷に及び、その日のうちに切腹され、赤穂藩は改易となったと言うと、吉良様はお亡くなりになったのですかと聞くので、ギスは二ヶ所いずれも浅手で討ち損じられたと、
言う事だと言うと、

大広間は城をまくらに幕府と一戦まじえようという者、すなおに開場すべきだと言う者、吉良を討ち取るべきだと言う者と意見は入り乱れ、騒然な雰囲気になてしまったのです、大石、
はそれ以降ただ黙っているだけでした、夕方になり次席家老が意見は出尽くしましたご家老の考えをお聞かせくだされと言うと、全員城にて腹を切り、片手落ちの裁きに意を唱えよう、
と思っている、

賛同される方は署名されたし、された方は明日白装束で登城なされ、署名なされず退席されても不服は言うてはならんと言ったのです、署名した者は残り、しなかったものは退席した、
のです、孫太夫も賛同しかねると退席したのです、旅籠に舅が来て怒っているのでどうされたのだと聞くと、ご家老は敵討ちはせずに幕府に抗議する為にあす全員切腹すると言い出さ、
れた、

わしは賛同しかねる、江戸に戻り仲間を集めて吉良を討つと言ったので、大石殿も中々手のこんだ事をなさるというと、どう言う事でござるかと言うので、本当にやる気のある者だけ、
残すようにふるいにかけられる所存ですよと言うと、それでは明日はと言うので、切腹などするものですかと言うと、まいたな署名せずに城を出て来てしまったと言うので、それで、
いいのです、

ひとまず江戸に帰りましょう、後で署名すればいいのですと言うと、なるほど大石様の計略であったかと苦笑いしたのです、それでは大石殿へ挨拶して江戸へ戻りましょうと言って、
大石の屋敷へ行くと座敷に通されたので、明日は殉死されるそうですね、そこで死んだ者だけで事を起こそうと言う事ですかと言うと、一度死んだ者は二度と死にませんと言うので、
舅殿あそこの連判状に署名なされませと言うと、

いいので御座るかご家老と舅が言うと、構わぬ署名するが良い、敵を騙すなら味方からと言うからなと笑ったのです、舅が署名するとそうそうに江戸に立ち返り、江戸組が暴発しな、
いように頼むぞと大石が言うと、舅が承知いたしましたと言うので、それでは江戸でお会いします、それまでに仕掛けは流流にしておきますと言うと、それはかたじけない、吉良は、
悪玉、浅野は善玉で御座るなと言ったのです、

船に戻り七衛門に大阪に寄ってもいいぞと言うと、ハイ、大阪の様子をみて江戸に戻りましょうとイカリを上げて帆を張り、大阪に向かったのです、朝方に大阪に着き船場の玄海屋、
に入ったのです、あれから6日しかたっていないのでまだ松の廊下の事件は大阪には届いていなかったのです、お峰が父上もすつかり大石様に騙されましたなと言うと、ての込んだ、
芝居とは知らなかった、

大石様も人が悪いと言うので、ほんに策士で御座いますなあと源三郎が言うと、本当に切腹などしないだろうなと言うので、絶対にしませんよ、あんな所で切腹しても何の意味もあ、
りませんと言って、外にでましょうと町に出て居酒屋に入ったのです、杯を重ねて、問題は江戸組ですね、安兵衛いか血の気の多いものばかりです、高岡源五右衛門殿は特に匠之守、
様お傍近く使えていましたから、

今日にでも吉良の首を上げたいのでござる、しかし、ダダ吉良の首を上げるだけでは私闘に御座います、公儀に一矢報いるには旧浅野の家中が整然と吉良亭に討ち入り、首をあげて、
こそ民衆に喝采をうけるので御座る、江戸組の暴発をおさえるのが舅殿の役目にござるというと、わしとて直ぐにでも吉良の首をあげたいのでござる、江戸詰めの藩士を抑えるのは、
至難の業でござると酒を飲み干したのです、

舅がまだ大阪には変事は届いておらぬだろう、それがしは浅野藩大阪蔵屋敷に顔を出して話しをしてきますと言って店を出て行ったのです、お峰が実際に大石様のもとに参加される、
方は何人おられるのでしょうと言うので、230人中60人位だろうと言うと4割と言う事ですかというので、これが戦国の世なら一人もいないよ、国がつぶれて義理立てするものはおる、
まい、

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