第49話

文字数 2,915文字


源三郎江戸日記49

新之助が勅使下向となれば、我々も厳戒態勢となる、筆頭与力の菅井様に聞いて下向の人数、宿泊先、実際に堂上に上がられる人数、主な朝廷の方々の身分等を、調べてみようと言った、
のです、翌日はお峰をともない舅の奥田孫太夫の役宅に向かったのです、孫太夫が玄関まで向かえに出たので、無事に江戸に戻ったことを伝えると、ようお戻りなされたと言って奥座敷、
に案内したので座ったのです、

高鍋のお土産を渡すと、女中に酒の用意をさせて、さつそくお土産をいただこうと言ったのです、帰国途中の出来事を話すと、そうで御座ったか、柳沢様も何と言う事をなされるのかと、
驚き、わが藩もいつ陥れられるかもしれぬ、気をつけねばと言ったのです、舅がお峰どうであってかと聞くと、お爺様、お婆様にとても良くしていただきました、高鍋はとても良い所、
ですと言うと、

それは良かったのう、本祝言をあげてくださるそうだ、又婿殿は150石にお取立てになったとの事、おめでとうござる、お峰自慢の婿殿じあなあ、後は早く子供を作ることじあと言ったの、
です、膳が運ばれて来たので舅と杯を重ねたのです、ところで来年の勅使接待役にお決まりになったそうですが、大変にござりますなあと言うと、殿は17年前に経験しておられるが、小さ、
い頃の事言え、

差配は総て江戸家老であった堀部弥平殿が仕切られたのですが、今は婿の安兵衛殿に家督は譲られているのでみんな始めてと同じで御座ると言うので、浅野様はいつ江戸に戻られるのです、
かと聞くと、もう国元は出立されたそうで15日も立てば江戸につかれますと言うので、大石様はと聞くと同行してはおられませぬと言うので、なぜで御座いますかと聞くと、前に経験して、
いるので大事無い、

江戸には二人の家老がいるので任せれば良い、大石に国元の事は頼むぞととおうせになったそうで、大石様も了承なされたとの事ですと言うので、懸念することを話すと、殿は賂がいたっ、
てお嫌いで御座る、申し上げても伊達は伊達、浅野は浅野じあとおとり上げにはならぬでしょうと言うので、しかし、現実にそうなると浅野様は鬱積がたまり、夜も練れなくなります、

まいりましたなと言うと、何か良い知恵はござらぬかと聞くので、まずは17年前の式次第を調べる事です、少しは変わっていると思いますが、大幅には変わってはいないはずです、何か、
残っておりませぬかと聞くと、それでは文書方に聞いてきましょうすこしお待ちくだされと、役宅を出て行ったのです、お峰が殿には内緒で伊達家と同じ進物を渡したらどうですかと言、
うので、

浅野家の家臣はそんな事する者はいないだろう、いるとすれば安兵衛くらいだが、堀部家がいくら元家老職の家柄だとしても婿であり浅野家に仕えて7年しか達てはおらん、他の藩士は耳、
など貸さんだろう、又舅殿が進言なされても家老達が留守居役が口ばしを入れる事ではないと賛同はしないだろうと言って、ともかく伊達家の動きを探らねばならん、源信と呼ぶと源信と、
お蝶が現れたので、

伊達家の吉良様、幕閣への進物の中身、又伊達殿が特に親しくしている老中を調べてくれ、金寸が必要だろうと懐から25両包みを取り出して渡し足りなければ、遠慮なく言ってくれと言う、
と承知と言って消えたのです、舅がありましたと言って渡すので見ると、3月12日から3日間の式事が細かく当時の事が書いてあります、費用は760両となっており今では1500両くらいにな、
るな、

休息所の場所は増上寺大広間用意したものは、玄関の屏風、掛軸、昼食となっており、伊達家と比較されそうな部分を書き写したのです、吉良様の指南の内容を聞かなければわからない、
ですねと言って、事前に色々用意しておくしかありませんと言うと、婿殿にまで心配いただいて申し訳ないと言うので、ともかく3日間が無事に過ぎればいいわけですと言ったのです、

秋は足早に過ぎて行き元禄13年が終り、源三郎は根岸で正月を迎えていたのです、源信とお蝶も傍に控えており、いよいよ来月は勅使が下向される二人には色々と働いてもらわねばならん、
宜しく頼むぞと言うと、源信が勅使接待の件は伊達様に老中稲葉様が最高な接待をするように言われたそうですが、もし黒幕が稲葉様だとしたらなぜで御座いますかと聞くので、稲葉様は、
親類筋の刃傷事件で、

長らく幕閣から締めだされ、老中に復帰されたばかりじあ、手柄が欲しいのであろう、それに柳沢様を側用人上がりが幕閣を牛耳っていると心よく思っていないとの事だ、しかしこのよう、
な手口では公方様はお怒りなるのではと言うので、裏での糸引きじあ表面には出ないのだから処罰のしようがない、今回の勅使接待の総責任者は柳沢様でもあるのだ、問題が起これば公方、
様は柳沢様を叱責なさるだろうと言うと、

なるほど柳沢様の顔を潰す目的と言うわけですかと頷くので、その為に浅野、吉良に使えている大勢の者が糧を失い、路頭に迷う事になる、困ったものじあなあと酒を飲み干したのです、
今回は我が藩の事ではないので、陰謀を潰すのは難しい、舅殿の力ではいかんともしがたいだろう、事が起こった時にそれが対処できるようにしておくしかないと言うと、どのような、
準備ですかと聞くので、

まずは休息所の屏風と掛け塾だが、これは伊達の用意したものと同等品にはすぐ変えられるだろう、次に畳だがこれは200畳もあるので、事前に用意しても間に合うかは難しいが、職人、
20人を集め一人で10畳畳代えさせれば4時くらいで変えられるだろう、材料は玄海屋の蔵に用意しておき、職人は12日に待機させよう、一人5両として100両あれば喜んで待機するはずだ、
伊達が畳代えをするなら、

13日にはわかるはずだ、それからやれば良い、次は料理だが伊達の賄い方を探ればわかるだろう、吟味は11日のはずだ、材料を12日に用意させるようにすれば間に合う、必要なくなれば、
深川一帯の者にふるまえばよい、これは一人分1両として200両もあれば出来る、後は14日の将軍答礼の儀式だが、これは勅使を迎えて案内する役目だ、問題は服装だが羽織、袴、裃と、
烏帽子大紋の二通り用意すれば良い、

最後に勅使のお迎えだが玄関の下で向かえればよい、伊達が上で迎えても大差はない、もし、吉良様との軋轢が最高潮に達した時には最後の日の指南は無視するかも知れん、その時、
廊下で吉良様に出会わなければ良いがと言うと、そこまで段取りすれば浅野様もよもや問題は起こさないでしょうと言うので、稲葉様の親類である正休様は老中堀田様を城中で刺殺し、
改易となり、

正通様も老中を罷免され越後へ国変えになった経緯がある、幕府内部の権力争いはいつの時代でもあるのじあよと言ったのです、源三郎は傍にいた玄海屋七衛門に用意をするように言う、
と、万事抜かりなくやっておきますと言ったのです、お峰が赤穂藩の為に申し訳ありませぬというので、舅殿を浪人にする訳にはいかんだろう、気にしなくても良いと笑ったのです、

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