第3話 水文学

文字数 823文字

「ここ数年天災が増えたけど、今年の雪で参ったのは水が止まったことだね」
 天災少年、メシヤ。

「電気・ガス・水道、どれが止まったら一番困るかって話によくなるけど、水が止まったらアウトよね」
 スマホが使えないと死ぬと冗談交じりに言ったりするが、無ければ無いで案外快適だ。ライフラインが止まることを思えば。

「ポータブル電源である程度電力は補えるが、水だけはな」
 ミニソーラーパネルも付ければ、キャンプ生活にも心強い。

「日本は水資源が豊富なのに変な話だネ」
 名前にサバクが入っているエリからすれば、日本の水事情は目を見張るばかりだ。

「日本人は当たり前に思っていますが、上下水道がここまで完備されている国は世界でも稀なんです」
 我が国の水はカルキ臭いと文句を付ける程度ですんでいるが、多くの国では水道水をそのまま飲めない。

「ミネラルウォーターを売り出した時は、上の世代の人達驚いたみたいだよ」
 オアシス族なる言葉も生まれた。

「夏から台風シーズンは大雨だし、困ったモノね」
 マリア心と秋の空。

「そこでメシヤの臥龍剣だヨ!」
 第Ⅳ座から読み始めた読者の方は御存じないと思うが、メシヤ少年は火を操る鳳雛剣と水を意のままにする臥龍剣を、ベルトホルダーに常備している。

「うん、大洪水の時は吸い取れるからね。問題は飲み水かな」
 いつもの考える仕草をするメシヤ。

「キャンプなんかで川の水を飲もうとする人間もいるが、見た目と違ってけっこう汚れてるんだ」
 濾過して煮沸すればまだ安心だが・・・

「イエスさまの言うとおりですわ。浄水器を使わないと」
 ペットボトルや小石・布など身近なモノを使って、ある程度は濾過出来る。

「携帯浄水器もあるよね。災害時に有効なんじゃないかな」
 流れ流れていつか同じ水と巡り逢う。

「ウルトラフィルターの携帯用が欲しいネ!」
 エリがなぜかペンライトを右手に掲げた。


 ああ、僕らだっていつの日か
 ああ、雲になる雲になる
 雲になれば雨になり
 雨は流れ海となる
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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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