第82話 Dodgeの為替?

文字数 968文字

「日経平均はうなぎ登りだが」
 ようやく涼しくなってきたが、ウィンナーコーヒーのアイスがまだまだ美味い。

「好景気にはほど遠いな」
 中経よく読む。

「ここまで円安に振れては、そうなるでしょうね」
 ここのは搾りたてだから、缶のトマトジュースとは違うぜ。

「総理は首根っこでも掴まれてるのかねえ」
 やりたい政策をやれないのが、日本の悪しき伝統になっている。

「円安すぎても円高すぎてもいけませんが、納まりの良いラインがあるはずです」
 円安至上主義が吹聴されている。これはなかなか崩せないぜ。

「為替相場政策をすりゃいくらでも円高にもってけるんだがな」
 利子率や預金準備率等、間接的に統制すれば為替の需給は調節可能だ。

「経済学と物理学はまったく異なりますからね。豊かにしたいターゲットをどこに置くかで、経済学者たちの理論がバラバラになるのは当然です。
 割り出された数字自体は嘘をつかないが、収集法を誤魔化したりデータを改竄したりするのが当たり前になっちまった。

「ですので、数字を鵜呑みにせず、ちゃんと自身でそろばんをはじくことが肝心ですね」
 ニカルはよく手を動かす。とかくそろばん的演算能力が馬鹿にされがちだが、騙されるのはまさにそうしたアナログ的手法を馬鹿にする人種だ。

「モーニングセットもついに値上げだしな」
 いままで何十年もこの価格で提供してくれたことを思うと、きょうの一杯が格別に思える。

「ええ、まったく」
 トマトジュースに小倉トーストは合わないだろうから、きょうはハムチーズ載せか。

「さっ、そろそろ行きましょう」
 ニカルは、俺が渡しておいた回数券を使用した。一人でもよく来るらしい。

 支払いに関して、助手はチャージ式のプリペイドしか使わない。kanon_OSを組むくらいだから、電子マネーのなんたるかを心得ている。

「390円だな」
 俺は断然現金派だ。

「神籬さんって、余計な買い物しないですよね。お金も事前に要る額だけ用意してきています」
 デジタル機器もそうだが、あまり持ち歩くと足がつくからな。

「千円札はよく持ち歩いてるぜ。あゆみちゃん、ヒーローレッドを」
 1000-(390+500)=110円。

「ここってレジに煙草を置いてるんですね」
 それが気に入ってるんだよ。

「準さん、まいどありがとうございます!」
 釣りの110円を、招き猫に投入した。





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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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