第64話 それにつけても俺たちゃなんなの

文字数 1,392文字

「女子ワールドカップが始まったわね」
 昨年行われた男子サッカーの躍進は、めざましかった。

「それでワタシたちで試合をやるってこト?」
 エリはカールを口いっぱい頬張っている。

「今回はサイドストーリーですので、本筋を無視してキャラが入り乱れるそうですわ」
 レマは司令塔が相応しい。

「22人か。それぐらいなら揃うかも」
 男女混合戦である。


《メンバー表》

【日本代表】

11 LW メシヤ
10 CF ミドル
9  RW マリア
8  OH レマ
7  LH エリ
6  RH ニカル
5  DH ヒロシ
4  CB 白馬
3  LB ススム
2  RB キョン子
1  GK イエス


【世界選抜】

11 LW コーラー
10 CF バルマン
9  RW ダニエル
8  OH レオン
7  LH ウィル
6  RH グリムリーパー
5  DH オブライエン
4  CB オネーギン
3  LB ボクラン
2  RB ニーマイヤー
1  GK ロックフォーゲル



「メシヤ、裁紅谷は日本代表でいいのか?」
「うん。お父さんが日本人なんだしOKだよ」

「オブライエン博士と一緒に戦えるなんて光栄です!」
 ウィルにとって、ジェニーはスーパースターだ。
「わたし、サッカーなんてやったことないんだけど、招集されちゃって」
 身体能力やいかほどに。

「とっとと始めようじゃないの」
 動きやすいように、マリアの髪は盛り盛りの散らしポニーテールであった。肩はまくり上げ、日向君スタイルだ。

「やりにくくてかなわんな」
 白馬は面が割れないように変装している。

 ホイッスルが胸にひびいた。
 ピンチがなんどおそっても、チャンスが守ってくれる。
 ゴールを決める日まで。

「どけどけ~!」
 小兵のミドルが、中央突破をはかった。

「行かせないわよ!」
 ウィルが立ちはだかる。

 スピードを落とさぬまま、ミドルが突っ込んでくる。あまりにも無謀だ。

「ボールは?」
 ミドルの足下からボールが消えた。

「ヒールリフト!」
 減速せずにやってのけるとは大したものだ。

「あいつやるわね」
 マリアが讃えている。

 ミドルが右足を振りかぶる。
「まさか!」
「あんな遠くから?」

「ミドルシュートだ!」
 動きを読んでいたオネーギンが立ちはだかる。
躊躇という漢字は辞書なく書ける。顔面ブロックも、鼻血程度で済んだ。
僕のボールはどっちだ?

 ボールが右サイドに転々とした。
「なに、あの酔っ払い」
 神籬であった。

「この勝負、ウイスキー1本分の価値があるぜ!」
 マッカランを放り投げると、神籬がセンタリングを上げた。

「メシヤ!」
「おう!」
 ファンタジスタ・メシヤが、ボールに向かって飛び上がる。

「来い!」
 ボウスハイトは動じない。

 マリアはメシヤが見えていないのか、同じように飛び上がった。

「ちょっと高いか?」
 イエスは自陣後方からでも、ハッキリと見える。

「ちょっと、邪魔すんじゃ無いわよ!」
「マリアこそ!」
 マリアは右足で、メシヤは左足で、一糸乱れず、バク宙蹴りをぶちかました。

(取れる!)
 ボールは不規則に分裂したが、ボウスハイトは全ボールコースを遮断するように、真正面に立ちふさがった。
 しかし、まったくかすることすら出来ず、金色のボールがゴールネットを突き破った。

《なに~! ロックフォーゲルくん、取れな~い!》

「先輩、ボクたち全然出番無かったですね。て、アレ?」
 ヒロシはふるえている。

「控えめに言って、最高かよ!」




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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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