第135話 お口にチャック

文字数 634文字

「湿度が高くなって来たわね」
 肌寒い季節が終わりを告げてから、数日も経っていない。

「除湿剤を置くといいよ」
 除湿機を買うほどでも無い。

「気をつけないとお菓子が湿気っちゃうんだよネ~」
 エリは日本のスナック菓子が大好物だ。

「チップスターも美味しいですわ」
 ちなみに、カップスターのほうが一年早くデビューしている。

「チップスターは蓋が付いてるが、だんだん取りづらくなるんだよな」
 箱を切る人もいるが、タケノコ式に伸縮できないものだろうか。

「僕は目玉クリップで留めるかなあ?」
 確実な方法である。

「たださ。どういう意図か分かんないけど、ジッパー付きのスナック菓子ってあるじゃない? でもメジャーなよく食べるものには見当たらないのよね」
 確かに、切って開けるだけの仕様である。

「それ思っタ! なんでやらないんだろウ?」
 エリは食べきるので必要ないと思うが。

「乾燥剤の入ったものも少数ですわ」
 あられやせんべいではよく見る。ジャガイモと言えばアーカンソーよりアイダホだ。

「ほんと湿気って嫌よね。洗濯も乾燥機じゃなくてちゃんと天日干ししたいわ」
 隠れがちな足の裏に太陽光を浴びせるのは、人体機能学的に有効だ。暖炉で身体を温める健康効果について、もっと研究が深められても良いだろう。

「ま、ポテチが湿気ったら言ってよ。炒り直すから」
 メシヤが(しな)びたポテトチップスを拡げ、得物のフライパンを煽った。

「美味しイ~! 最初からこうすれば良かったネ!」
 エリが残さず食べ終え、感想を漏らした。







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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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