第8話 雲蒸竜変

文字数 823文字

「開幕戦こそ逆転勝ちだったけど、そのあとが続かないわね」
 待ちに待った球春がやって来た。

「侍ジャパンをも圧倒した打線だったのにな」
 単純な公式なら、世界一の日本代表よりも中日が強いことになる。

「絶好調だった田中幹也選手の離脱が痛いですわ」
 一時期、オープン戦で首位打者の位置に付けていた。

「あとは石川昴弥選手の復帰が待ち遠しいね」
 恐竜打線が遠い夜空にこだまする。

「あの大声援を聞いてたラ、ワタシもドームに行きたくなったヨ!」
 鳴り物や声を出しての応援が解禁された。

「WBCの興奮冷めやらぬ中だったけど、リーグ制覇もおいそれとはいかないなあ」
 前回のセリーグ優勝から一回り、12年も遠のいている。

「よく大谷のようなビッグプレイヤーがいないと揶揄されるが、層は厚いんだよな。データで見てもこれで最下位ってのが不思議なくらい珍妙な数字が出て来たりする」
 昨年優勝のヤクルトに、中日は勝ち越している。

「ホームスタジアムで本塁打が少なくなってしまうのは、寂しいですわ」
 投手王国の理由にもなっているが、ファンが見たいのは痛快な勝利である。

「天候の良い時期はナゴヤ球場にするとかしないとね」
 それか、前から言われているホームランテラスの設置である。

「髙橋宏斗投手みたいなスターも出て来てるし、楽しみはいっぱいあるわ。あたしね、ちょっと彼は自己中なのかと思ってたけど、目標は中日ドラゴンズ日本一って言っててすっかりファンになったわ」
 意地っ張りと負けん気と心強さと。

「大野雄大投手の明るさとチーム愛も惹かれるなあ。昔はダルビッシュさんに暗いチームと思われてたぐらいだし」
 メシヤのドラゴンズ愛もずっと変わらない。

「大谷選手を超えるビッグプレイヤーなら二刀流はもちろんのこト、両打ちにスイッチピッチャーを目指すことかナ?」
 エイプリルフールのネタになっていたが、漫画のような出来事と形容されたWBCを目の当たりにしたばかりである。あり得ないことではないだろう。
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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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