第95話 ブラックアウト

文字数 930文字

「ミドルは電子機器が使えないから不便よね」
 機械音痴という意味では無く、磁気体質なのでメカを壊してしまうためである。

「雲水のじっちゃんにもらった戦士のリングがあるから、不要さ」
 なんなら、スマホなど無くても不自由しない。

「スマホ病のおそろしさがいまいち伝わってないよなあ」
 ススムは問題なく使えるが・・・。

「ヒッショーは通信アプリが無くても待ち合わせできるもんね」
 野性的猿の勘がある。

「わたしたちの活動的には、持たない方がいいのよね。追跡されちゃうから」
 そんなこんなで、スマホとは違うベクトルで進化したモバイルを、破軍の戦士たちは携帯している。これはウィルの発明だ。

「自由なようで、監視されてるんだよな、現代人は」
 スマホの原理を知ればそらおそろしくなるはずだが、いまさら持たないという選択肢を取れなくなっている。

 体内にチップを埋めるのは、大昔から陰謀論と言われた最たるものである。臆面もなく隠す素振りすら無くなってきているのは、相当焦っている証拠である。

(きた)る大戦のための綿密な布石だったってわけね」
 日本のガラケー発展が阻止されたのも、このためである。

「頭の中だけは神聖不可侵な領域だってのに、そこにまで割り込んできようとしやがるからな」
 ブレインウォッシュは、卑劣な謀略をもって人類に襲い掛かる。

「常識が通じやしない。ってか、これが常識なんだってのを盾にして、暴論で叩きつぶしてくるんだよ」
 安心材料があるとすれば、これは有史以来いくども繰り返されてきた攻防だということである。助かる道は、古典にすべて書かれている。

「俺は行動を読まれてニヤニヤされるなんて、まっぴらゴメンだぜ」
 ミドルはたまに、いっちゃってる顔をする。

「お前はいいよな。その磁気体質でレーダーも無効化するし」
 砲丸投げをして、玉ごと飛んでいったこともある。

「それよ!」
 ウィルが閃いた。

「何か名案でも?」
 片眼をつぶり、芝居がかったポーズの供米田(くまいでん)

「日本人のためにも、iPhoneとAndroidに代わるこのモバイルを広めないと。ブラックアウト機能も付けてね」
 更新やダウンロードのたびにフリーズする機器とは、おさらばだ。

「やる気だな、ウィル」

「GAFAMがなんぼのもんじゃい!」





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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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