第28話 罪と罰

文字数 629文字

「先輩、ちょっといいっすか?」
 なんか怪しい動きをしてるな、こいつは。
 背後に回るな背後に。

「えいっ!」
 キョン子のやつが急に俺のシャツをめくりあげた。

「逆セクハラだな、これは」
 なんのつもりなんだ。

「ああ、良かった。先輩たまにモノホンの目をすることがあるから、渡世の人じゃないかと思ってたんですよ」
 彫リモンくらいいまや珍しくも無いが、俺はやらない主義なんだ。

「お前、俺をどういう目で見てたんだよ」
 キョン子は任侠衆の生写真を持っていたりする。

 有名人がファッション感覚で入れてたりするから真似する若者も多いが、一回入れたら変えられなくなってしまうのは、ファッション的にどうなんだろうな。いくらでも変えられる服や髪型とは違うしな。

「いえね、先輩のオヤジさんがかなりブイブイ言わしてたお方だって聞いてたので、念のための確認っす」
 お前、他で絶対やるなよ。

「オヤジも悪逆非道の限りを尽くしたが、もう逝っちまったからな」
 いまごろ地獄の鬼達と正拳突きをしてるかも知れない。

「ボク、余計なことを言いましたね」
 珍しくしおらしい。

「んなもん気にすんなよ。寿命だったのさ」
 お決まりのしばらく帰って来れないって台詞も、お勤めだったんだろうな。

「たしか被告人が死亡した場合は、公訴棄却になるんでしたね」
 小難しい話をしだしたが、確かにその通りだ。根拠は刑事訴訟法第339条だな。

「死んだくらいじゃ償えないがな」
 転生先を閻魔様に教えてもらおう。

「死んだらみな仏様ですよ」



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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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