第74話 インドラの光

文字数 738文字

「世界で一番熱い夏なのは、間違いないわね」
 トキメキは止めなくて良いが、もうこのギラギラは止めて欲しい。

「山火事が世界中で起きている。この暑さも無関係ではないだろうな」
 建設業にとって、熱中症は大敵だ。

(不可解ではある・・・)

「メシヤ、どうしたノ?」
 エリがすぐメシヤの様子を窺う。

「どう考えても火事が多すぎるんだよね」
 眉頭が寄るのは、あまりメシヤが見せない表情だ。

(メシヤさまの悪い癖ですわ・・・)

「あんたさ、そんなの考えたってしょうがないじゃない! 暑いものは暑い、あたしたちに出来ることは、どうやったら少しでも涼を取れるかってことぐらいよ」
 危なっかしいのはじゃじゃ馬のマリアではなく、何を起こすか分からないメシヤのほうであった。

「メシヤはニッコリ微笑んで危険の中に飛び込んでいくからネ」
 スーパー戦隊シリーズでエリが一番お気に入りなのは、バイオマンである。

「だってさ、一回や二回ならともかく、畜舎があんなに立て続けに燃えるってどう考えても変じゃない? 教会や神社、世界遺産も燃えたことがあるよね?」
 普段は温厚だが、神域や芸術を破壊する輩はどんな理由があろうとも許しておけないメシヤであった。

「自然災害ではないとでも言うのか?」
 メシヤの両目から火がほとばしっている。

「ア、ナボコフ!」
 メシヤの異変はすぐ察知するレオン。

「メシヤくん、どうか冷静に。あなたらしくありませんよ」
 混乱期には、悪が連鎖する。火事場泥棒は封じなければならない。

「僕はいたって普通だよ。ただ、何でこんなことが起こってるのか全然掴めなくて」
 言葉とは裏腹に、怒りが消し切れていないメシヤ。


(放火は重罪ですわ。メシヤさまは知る由も無いですが、あなたの破軍の光が、悪を灰死(かいし)に追いやることでしょう)




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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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