第117話 歳暮マリア
文字数 636文字
元気少女は、腹が減る。
「確かにな。俺も忘年会に駆り出されるんだが、景気のいいことだ」
小説ですら未成年が酒を飲むシーンは憚れるようになった。
「今年一年、ご苦労様でございました」
お疲れ様でしたを言霊的に嫌うレマ。
「みんなじゃんじゃん食べてよ」
本人は嫌がったのだが、この集まりはメシヤ会と呼ばれている。
「虚礼廃止って言葉が好きじゃ無いわ」
やめるのは虚礼であって、礼は続けてしかるべきだ。
「めんどくさがりがここまで来ると病気だな」
普段お世話になっている相手にまごころを示す好機である。
「ゆすりたかりみたいな相手はいますが、本当に贈りたい相手への好意まで踏みにじられている気がしますわ」
不届きな相手には贈らなければいいだけだが、会社の方針として虚礼廃止としてしまうのはいかがなものか。
「どんどん産業が萎縮しちゃうヨ!」
デパートは大打撃である。
「誰が言い出したのか気になるところではある」
忘年会も廃止、年賀状も廃止、出社も廃止、学校も廃止となんでもやめだすと、人間をやめたくなってくる。
「あたしは年末に贈り物をすることにしてるのよ」
マリアはかなりバイトで稼いでいる。
「はい、みんなの分」
気前が良い。
「うわっ、特産松阪牛だ!」
メシヤでもめったに手に入れることが出来ない。
「マリア、いいのか?」
そう言いつつも、食う気満々のイエス。
「マリアさま、悪いですわ」
唇に光るものが見える。
「マリアが聖母様に見えて来たヨ!」