第117話 歳暮マリア

文字数 636文字

「寒いのは嫌だけド、この時期はご馳走が続くネ!」
 元気少女は、腹が減る。

「確かにな。俺も忘年会に駆り出されるんだが、景気のいいことだ」
 小説ですら未成年が酒を飲むシーンは憚れるようになった。

「今年一年、ご苦労様でございました」
 お疲れ様でしたを言霊的に嫌うレマ。

「みんなじゃんじゃん食べてよ」
 本人は嫌がったのだが、この集まりはメシヤ会と呼ばれている。

「虚礼廃止って言葉が好きじゃ無いわ」
 やめるのは虚礼であって、礼は続けてしかるべきだ。

「めんどくさがりがここまで来ると病気だな」
 普段お世話になっている相手にまごころを示す好機である。

「ゆすりたかりみたいな相手はいますが、本当に贈りたい相手への好意まで踏みにじられている気がしますわ」
 不届きな相手には贈らなければいいだけだが、会社の方針として虚礼廃止としてしまうのはいかがなものか。

「どんどん産業が萎縮しちゃうヨ!」
 デパートは大打撃である。

「誰が言い出したのか気になるところではある」
 忘年会も廃止、年賀状も廃止、出社も廃止、学校も廃止となんでもやめだすと、人間をやめたくなってくる。

「あたしは年末に贈り物をすることにしてるのよ」
 マリアはかなりバイトで稼いでいる。

「はい、みんなの分」
 気前が良い。

「うわっ、特産松阪牛だ!」
 メシヤでもめったに手に入れることが出来ない。

「マリア、いいのか?」
 そう言いつつも、食う気満々のイエス。

「マリアさま、悪いですわ」
 唇に光るものが見える。

「マリアが聖母様に見えて来たヨ!」




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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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