第2話 そこから始まる神秘は追跡不能さ

文字数 856文字

「盗難が増えてるんだって」
 物騒なことに、強盗事件も起きている。

「犯人が捕まったケースもあるが、裏で糸を引いてる奴が絶対にいるはずだ」
 十九川家は、警察関係者とも繋がりがある。

「盗まれたモノを転売する目的なんだろうね。許しがたいよ」
 裁紅谷姉妹に頼めば一発で解決する案件だが、メシヤは直感的に遠慮した。

「製造番号を控えておくのが重要ね」
 モデル番号だけでは当然駄目だ。

「それでとっ捕まった例もあるからな」
 十九川家宅の厳重な警備体勢には、泥棒も裸足で逃げ出すだろう。

「たまに空想するんだけど、ありとあらゆるものにシリアルナンバーが付いていたら、どうなるんだろうね?」
 またメシヤの病気が始まった。

「あらゆるモノっテ、たとえば同じタイトルの本にも一冊一冊識別させるってこト?」
 受け入れるエリも大概である。

「それならまだ分かりますが、メシヤさまはもっと細かいところまで考えていそうですわ」
 メシヤの護衛が裁紅谷姉妹の主任務である。

「そう。たとえばTシャツ一枚とか消しゴム一個とかそんなレベルはもちろんのこと、ボルト一個や床板一枚、キーボードのキーに至るまでね」
 メシヤは触れなかったが、原料を構成する量子レベルにまで、神様ならナンバーを振っていると考えている。天網恢々疎にして漏らさずと言うが、罰のタイミングは死後に訪れることもある。

「でもあんた、総背番号制は大反対だったじゃない」
 マリアはどうしてもツッコミ役になる。

「あれは権力者が人間をコントロールするためだからだよ。あんな息苦しい世界はゴメンだね」
 俺を番号で呼ぶな!

「話を元に戻すが、盗み対策として商品にシリアルナンバーを振っておくのは良策だな。貴金属もそれで足が付く。どうせ転売する輩だしな」
 個人レベルでシリアルナンバーを事細かに把握しておくのは大変だが、せめて購入店に問い合わせて、番号が分かるようにすると良いだろう。

「保証書持っとくのがベストだけど、レシートなんかも気軽に捨てちゃ駄目ね」
 年度ごとの家計簿にホッチキスで留めておけば、わりと楽だ。
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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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