第136話 トリップメーター
文字数 1,032文字
メシヤがワーゲンバスを運転し、いつものメンバーで帰路に就いている。
「団子の味があんなにあるト、迷っちゃうネ」
迷ったものは欲しいものなので、すべて買うエリ。
「もう少し滞在していたかったのですが、明日も早いですから」
デジタル時計は、15時14分を刻んでいた。
「これに乗るようになってから、相当走ったな」
オドメーターは151515km、トリップメーターは1515kmを示していた。
デジタル時計が15分に入れ替わる。
15秒ほど経過したところで、
ワーゲンバスは、霧に包まれた。
「うわっ、雷雲?」
そんな生易しいものでは無かった。
「てカ、浮いてル!」
空間の捻れを、躰で感じる。
「ドラえもんのタイムマシンに乗ってる時の、アレに似ていますわ!」
トリップメーターの偶然の一致で、時間をトリップしたようである。
「これってメシヤだけがなるんじゃなかったの!?」
世にありとあらゆる数字が存在するが、別領域の数字が奇妙な一致を見せると、摩訶不思議現象が勃発する。
「どこに飛ばされるんだろうな」
イエスは冷静である。
↑→↓←↑→↓←↑→↓←
「・・・みんな無事?」
振動が収まり、気付くと、広大な地平に放り出されていた。
「どこかしら?」
空にオーロラが広がっている。
《ハロー、日本のみなさん。今日が何の日か知っていますか? オールドミリオンの暦で言うとね、西暦151515年の、15月15日なんですよ》
ラジオから、上機嫌な声が届く。
ニューミリオンでは、一年が15の月に改暦された。地球と月の公転周期がゆっくりになり、ひと月が101日、一年が1515日に変わったためである。
計算がややこしくなりそうだが、オールドミリオンの一年とニューミリオンの一年は、地球が太陽の周りを一周したという点で、同じと考えて差し支えない。
「15万年ゴ!?」
ハチャメチャが押し寄せてきた。
「なんとか帰る方法を見つけないと」
さすがのレマもうろたえる。泣いてる場合では無い。
「異時間転送なんてジャンルが増えそうだね」
何を暢気なことを。
「もう少しラジオを聴いてみようぜ」
電波はこの上なくクリアである。
《年の瀬になると、オールドミリオンの話題になりますね。かつてプロミネンス禍という大混乱に陥り、艱難辛苦を迎えた21世紀は、歴史の教科書でトップに扱われます。わたしたちはその激動の時代を平定した人物が、我が国からあらわれたことを、永劫語り続けます。その名は、藤原の・・・》