第92話 ガテンの血が騒ぐ

文字数 646文字

「マリアさまはラテン系ですね」
 ユダヤ人は本来セム系である。

「ガテン系じゃないかナ?」
 若マリアさまは腕まくり。

「稼ぎたいなら港区より現場よね」
 この身軽さは、何度も危険から救ってくれることだろう。

「ウチはいつでも来てもらっていいんだぜ」
 建設業界の人手不足は深刻だ。

「手に職を付けるとかつぶしが利くとか小言のように思えるけど、年を取ってからボディーブローのように効いてくるんだよね」
 若い内にしか出来ないことで、人生設計を立ててはいけない。

「おとぎ話や童話は、けっこう辛辣なこと言っていますわ」
 苦労するか遊んでしまうか、アリギリスの別れ道だ。

「高い失業率と人手不足が同時に起きるのが謎だネ」
 この世の大多数の仕事は、TVやネットで紹介されない仕事である。生活のための仕事をしているからといって、キラキラした世界と一生無縁なわけではない。

「マリアのバイトってあんまりよく知らないんだけど」
 偏見はよくないが、マリアは大和撫子なところがある。

「さっきから話してるそのガテン系よ」
 腕相撲をしたら瞬殺されそうな膂力(りょりょく)のマリアである。

「やっぱりそうカ! トレーラーに乗ってるマリアを見掛けたヨ」
 デコデコの燃える赤であった。

 これはSF作品ではなかったのだろうか。一体彼女はどこに向かっているのであろう。
志能備(しのび)の里流の花嫁修業ですわ)

「室内でじっとしてる仕事って耐えられなくってさ。なんか気が滅入っちゃう」
 行動量と血流量は、大いに関係がある。

「悩んでても働いてる内に忘れ去るってこと、あるよね」





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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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