第92話 ガテンの血が騒ぐ
文字数 646文字
ユダヤ人は本来セム系である。
「ガテン系じゃないかナ?」
若マリアさまは腕まくり。
「稼ぎたいなら港区より現場よね」
この身軽さは、何度も危険から救ってくれることだろう。
「ウチはいつでも来てもらっていいんだぜ」
建設業界の人手不足は深刻だ。
「手に職を付けるとかつぶしが利くとか小言のように思えるけど、年を取ってからボディーブローのように効いてくるんだよね」
若い内にしか出来ないことで、人生設計を立ててはいけない。
「おとぎ話や童話は、けっこう辛辣なこと言っていますわ」
苦労するか遊んでしまうか、アリギリスの別れ道だ。
「高い失業率と人手不足が同時に起きるのが謎だネ」
この世の大多数の仕事は、TVやネットで紹介されない仕事である。生活のための仕事をしているからといって、キラキラした世界と一生無縁なわけではない。
「マリアのバイトってあんまりよく知らないんだけど」
偏見はよくないが、マリアは大和撫子なところがある。
「さっきから話してるそのガテン系よ」
腕相撲をしたら瞬殺されそうな
「やっぱりそうカ! トレーラーに乗ってるマリアを見掛けたヨ」
デコデコの燃える赤であった。
これはSF作品ではなかったのだろうか。一体彼女はどこに向かっているのであろう。
(
「室内でじっとしてる仕事って耐えられなくってさ。なんか気が滅入っちゃう」
行動量と血流量は、大いに関係がある。
「悩んでても働いてる内に忘れ去るってこと、あるよね」