第108話 神出鬼没

文字数 753文字

「噂をするとその相手が現れてビックリすることがあるわね」
 噂を信じちゃいけないが、噂をすれば影が差す。

「いい噂なら驚かなくても」
 マリアはメシヤのことを言っているのだが、鈍いというかなんというか。

「誰かが自分のことを悪く言っているなんてのを気にしすぎると、病気になるぜ」
 どんな優れた人物であっても、悪口のターゲットになりうる。悪口を言い出した人物がいなくなると、その人物にも矛先が向かう。自分だけが悪く言われているということは、決してない。

「部屋の中から笑い声が聞こえていて、入るとぴたっと止むことがありますわ」
 それは悪漢がレマに怯えていたのだろう。

「そういうのが気になる人ハ、自ら輪に入っていくことだヨ」
 面と向かって悪く言うのは、さすがに躊躇われる。

「1・2回、言葉の事故があったくらいで避けるのもなんだし、勘違いだったってこともあるしさ」
 ハッキリ喋ることと言葉の選択の重要さが、メシヤは身に沁みている。

 言葉が現象を引き寄せるとは巷間よく言われることだが、見聞きして気になった事柄にすぐさま遭遇したり、たまたま思い出した人物を直後TVで見掛けたりすることはわりかし起こる。スマホが声を拾っているという都市伝説は抜きにしても、それ以上の引力が言葉にはある。

「神出鬼没と言えばさ、オブライエン博士って大西洋のど真ん中で暮らしてるんでしょ? その割にはしょっちゅう日本に来るわよね」
 研究に没頭したいため、大西洋に浮かぶ孤島・ガリゼンダの塔に缶詰になっている。

(言ってもいいものかしら・・・)

「オブライエン博士のことだから、どこでもドアをすでに発明してるんじゃないかな」
 空間と空間を繋げることも関門だが、プライバシーの保護が大きな障壁になる。

「部屋の扉にもっとピンク色が使われても良さそうだけどネ」





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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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