第156話 蜻蛉長者(だんぶりちょうじゃ)
文字数 486文字
マリアは9月生まれである。
「妖しい季節だよね」
何回でも言いたくなる。
「トンボが沢山!」
エリのさした指に、トンボが留まった。とんぼ返りは朝飯前だ。
「トンボは言い伝えが多いんだよな」
東洋と西洋で、どうやら価値観が正反対のようである。
「幸運の前兆とも言いますね」
今年はとくに大量発生している。
「御先祖さんなんじゃないかな?」
盆の頃に見られるようになるため、そうした説がある。
「古生代からいるらしいわね」
三億年以上も前である。
(御先祖様すぎるネ・・・)
「イエスさまはトンボ鉛筆推しでしたね」
「ああ。シャーペンも使うが、書き心地が良くてな」
文房具と昆虫は相性が良い。
「酋長を探さないと」
その頃は、ノートが図鑑であった。
「あッ、トンボが一斉に移動したヨ!」
「ついていってみよう!」
「あっちに行ったと思うけど」
付き合うマリアも大概である。
「消えたな」
イエスも慣れっこだ。
「メシヤさま、どうかされましたか?」
固まっている。
「竹藪から一億円が!」
国の