第156話 蜻蛉長者(だんぶりちょうじゃ)

文字数 486文字

「暑いとはいえ、秋の気配を感じるわ」
 マリアは9月生まれである。

「妖しい季節だよね」
 何回でも言いたくなる。

「トンボが沢山!」
 エリのさした指に、トンボが留まった。とんぼ返りは朝飯前だ。

「トンボは言い伝えが多いんだよな」
 東洋と西洋で、どうやら価値観が正反対のようである。

「幸運の前兆とも言いますね」
 今年はとくに大量発生している。

「御先祖さんなんじゃないかな?」
 盆の頃に見られるようになるため、そうした説がある。

「古生代からいるらしいわね」
 三億年以上も前である。

(御先祖様すぎるネ・・・)

「イエスさまはトンボ鉛筆推しでしたね」
「ああ。シャーペンも使うが、書き心地が良くてな」
 文房具と昆虫は相性が良い。

「酋長を探さないと」
 その頃は、ノートが図鑑であった。

「あッ、トンボが一斉に移動したヨ!」
「ついていってみよう!」

「あっちに行ったと思うけど」
 付き合うマリアも大概である。

「消えたな」
 イエスも慣れっこだ。

「メシヤさま、どうかされましたか?」
 固まっている。

「竹藪から一億円が!」



 国の(かたち)を廻らし望んで
 蜻蛉(あきつ)臀呫(となめ)の如くにあるかな

 秋津洲(あきづしま)は日本国の美称である。  





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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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