第71話 カズをもって貴しとなす

文字数 729文字

「やってくれましたね」
 ユアナンバーカードにまつわる数々のお粗末報道に、助手は氷の微笑だ。

「ギャグマンガでも思いつかないレベルだな」
 と、まともな人間なら思うはずだ。

「何事にもいえますが、簡便な運営は、難解なステップを経て初めて達成されるのです」 
 ニカルの数覚についてこれるのは、オブライエンとメシヤくらいじゃないのか。

「お前の怒りももっともだがな」
 責任の所在があいまいなまま時が過ぎ去っている。

「神籬さんも何か御存じのようですね」
 俺もお茶を濁すしかないな。

「今回の情報漏洩に関して、誰も責任を問われないかのような怪文が出回っていますが、ユアナンバー法の第48条から始まる第9章(罰則)がまったく取り上げられていません」
 学級委員長みたいなやつだな。

「ああ、かなり重い罰則だな。残念なことに、国民の安寧と平和よりも自分の小遣いを増やしたい程度の動機で、手を汚す輩もいる」
 いまに始まったことではないがな。

「国民のプライバシーを金で売った罪は、地獄の底より深いですよ」
 ニカル、大いにイカル。こいつが大臣になったほうが、いいかもしれない。

「国が、というよりも、こうしたところを狙ってくる金亡業者がいるんだよ」
「この程度のシステム構築と保守で、ここまで予算がかかること自体に疑問を感じないのなら、嘘ですよ」

「まあな。おかしな決まりが性急に出来ることはあるが、悪徳業者も罪深いな」
 人体に悪影響だと謳ったり、人命尊重のためとプラカードを掲げれば、反論するやつが悪者に仕立て上げられる。

「働き方改革もですね。その心意気や良しと思えても、推し進めれば進めるほど国民は貧しくなっています」
 このルールを守ることで、国民の安全と生存を保持するというものでなければな。




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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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