第71話 カズをもって貴しとなす
文字数 729文字
ユアナンバーカードにまつわる数々のお粗末報道に、助手は氷の微笑だ。
「ギャグマンガでも思いつかないレベルだな」
と、まともな人間なら思うはずだ。
「何事にもいえますが、簡便な運営は、難解なステップを経て初めて達成されるのです」
ニカルの数覚についてこれるのは、オブライエンとメシヤくらいじゃないのか。
「お前の怒りももっともだがな」
責任の所在があいまいなまま時が過ぎ去っている。
「神籬さんも何か御存じのようですね」
俺もお茶を濁すしかないな。
「今回の情報漏洩に関して、誰も責任を問われないかのような怪文が出回っていますが、ユアナンバー法の第48条から始まる第9章(罰則)がまったく取り上げられていません」
学級委員長みたいなやつだな。
「ああ、かなり重い罰則だな。残念なことに、国民の安寧と平和よりも自分の小遣いを増やしたい程度の動機で、手を汚す輩もいる」
いまに始まったことではないがな。
「国民のプライバシーを金で売った罪は、地獄の底より深いですよ」
ニカル、大いにイカル。こいつが大臣になったほうが、いいかもしれない。
「国が、というよりも、こうしたところを狙ってくる金亡業者がいるんだよ」
「この程度のシステム構築と保守で、ここまで予算がかかること自体に疑問を感じないのなら、嘘ですよ」
「まあな。おかしな決まりが性急に出来ることはあるが、悪徳業者も罪深いな」
人体に悪影響だと謳ったり、人命尊重のためとプラカードを掲げれば、反論するやつが悪者に仕立て上げられる。
「働き方改革もですね。その心意気や良しと思えても、推し進めれば進めるほど国民は貧しくなっています」
このルールを守ることで、国民の安全と生存を保持するというものでなければな。