第78話 自作に乞う御期待!
文字数 838文字
奇妙な筐体である。
「うん。店頭で売ってるのは欲しいのがないからね。自作したんだよ」
自作PCは、思ったよりも難しくはない。ただ、面倒ではあるのだが。
「メーカーのを買ってもすぐ動きが悪くなって、数年で丸ごと買い換えの目に遭うからな」
イエスの会社もPCの台数が多いので、この辺りは気を遣う。
「言っては悪いですが、騙し討ちなところがありますわ」
動作の悪くなったパーツだけ載せ替えれば、自作パソコンは一生使える。
「でもサ。メシヤのそのPCケース、パーツ屋さんでも見ないような代物だネ」
お目が高い。
「そうなんだよ。PCケースもただの四角とかが嫌でさ。手工野さんにオーダーで作ってもらったんだ」
科納ニカルのお得意様でもある。
「レトロな感じがいいわね。昔の紅白のファミコンみたい」
ゲームで遊ぶことをファミコンすると言ったものだが、この呼び方の方がしっくりくるメシヤであった。
「スマホ世代のPC離れが叫ばれているが、就職してから色々と問題が発生しそうだ」
クリックするだけで成り立つ仕事もあるにはあるだろうが、その人は何かが出来る・何かを作る能力があると言えるだろうか。
「使い方が分かるけど、作り方が分からないんじゃ、やれる仕事も限られると思うんだよね」
AIに置き換わって無くなる仕事が時折話題になるが、その人にしか出来ないという技術を持っていないと、真っ先に淘汰される。
「これさ、お城みたいなPCケースも出来るわけ?」
組み立てにハンダも不要だ。
「もちろん。技術的には可能だよ」
若者がPCを欲しがらないのは、魅力的なハードが無いことも原因だ。
「こういうところから始めテ、自作OSもやっていこうってなるんだろうネ」
その通りである。
「テック業界の悪い慣習を改めないとね。使わざるを得ない状態にさせて、延々と買い換えさせてる。それも短期間で。あまり褒められたことじゃないかな」
ジョブズが生きていたら、少しは状況も違ったかも知れない。