第61話 苛税猛暑
文字数 993文字
夏を制する者だけが、恋を制する。
「もう覚悟を決めちゃったほうがいいね」
真昼に活動したくなくなるが、夜型の体質を変えたいところだ。
「缶ジュースが100円の自動販売機が、まだかろうじて存在しますわ」
暑さに耐えかねて、水分補給するレマ。
「ワタシはHI-Cオレンジがいいかナ」
エリにジュースを買ってあげる。
「消費税が導入される前は、みんな100円だったんだ。中途半端な小銭を持つのが面倒だな」
経済の商取引に端数が無くなった場合と、そうでない現況とを比較して、経済効果・経済損失について真面目に追跡調査をした研究があったとしたら、意外な結果がはじき出されることだろう。
「あたしたちは直接影響ないけど、増税増税よね」
間接税を払っているのだから、マリアにも発言権がある。
「憲法84条で、あらたに課税をするときは法律で定めなきゃいけないことになってるけど、守られてるとは言えない感じだね」
いまはまだ、鷹山総理が就任していないブリンダーの木での出来事である。
「租税法律主義の原則から逸脱していますわ。課税権は主権者である国民のもので、その代表機関の議会が国民の代わりに行使するに過ぎません。内閣が恣意的に課税してよい根拠など、どこにもありませんわ」
こんな重税を課された令和に生きる我々は、税党世代だ。
「法的安定性と予測可能性は、どこへやらだな」
イエスはインボイス制を腹立たしく思っている。これがまかり通る根拠条文は、なんなのだろうか。
「政府は憲法89条から91条までも、よく分かってないんじゃないかって思える時があるよ」
条文は、はっきりストレートに書かれている。対してお役所言葉は、ひとつひとつの単語が分かっても、それらが組み合わさると、いったいなにを言いたくて、なにを促しているのかが、さっぱり分からなくなる。
「収入支出の決算もさ、会計検査院が検査して報告ってなってるわよね。あれ見ると結構しっかりしてるわよ」
マリアは数字の羅列を見るのが好きである。
「消費税がどれだけ集まってどのように使われてるのカ、そのあたりを明細とともに一番知りたいネ」
金額の塊だけポンと提示されていても、それが適正であるかどうかは判別が付かない。財政自在王物騒。
「ふ~、効くなあ!」
よく冷えたキリンレモンが染み渡る。夏のキリンビバレッジ。首が回らないということは、無いだろう。